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第31回(一社)静岡県建設業協会賞 受賞作品講評

第31回(一社)静岡県建設業協会賞に寄せて

●第31回(一社)静岡県建設業協会賞に寄せて

静岡県交通基盤部長 野知 泰裕

一般社団法人静岡県建設業協会及び会員の皆様におかれましては、建設業の発展と本県の社会資本整備に多大な貢献をいただきますとともに、日ごろから公共事業の円滑な執行に格別の御理解と御協力をいただき、厚く御礼申し上げます。

今回の受賞された工事は、いずれも現場条件や周辺環境等を的確に判断し、創意工夫や新技術の活用により課題を克服しているすぐれた工事と感じました。工事の担当者をはじめ、関係の皆様の御尽力に敬意を表するとともに、今後とも他の模範となりますよう、より一層の御活躍をお祈りいたします。

交通基盤部では、静岡県社会資本整備重点計画(H25~H29)に基づいて、多様な連携・協働による事業の推進、社会資本ストックの有効活用、コスト縮減と品質の両面の確保を重視した取組など様々な措置を講じて、限られた予算の中で最大限の効果が得られるよう、重点的かつ効果的・効率的に社会資本整備を推進してまいります。

また、平成27年4月16日に策定・公表された国土強靭化地域計画では、南海トラフ巨大地震等の大規模災害から県民の生命・財産を守ることを最重点目標に位置付け、静岡モデルや森の防潮堤による津波対策など、地域の事情に応じたハード・ソフト一体となった災害に強い基盤づくりを推進してまいります。

一方、公共事業の担い手である建設産業では、若年入職者の減少、技能労働者の高齢化の進展等による担い手不足が懸念されております。そのため、建設産業の持続的な発展や新たな担い手確保を目指して、公共事業に従事する技術者等の確保に向けた技術力の向上・継承等に様々な角度から取り組んでまいります。

県といたしましても、県民にとって必要な整備を効率的かつ戦略的に進めていくためにも、今後も建設業の皆様と連携しながら、公共事業の円滑な執行に向けて取り組んでまいりたいと考えておりますので、引き続き、御支援、御協力をお願いいたします。

結びに、貴協会のますますの発展と会員の皆様の御繁栄、御活躍をお祈り申し上げます。

●第31回 土木部門委員長講評

土木部門審査委員長  村松  篤
審査委員会(土木部門)
国土交通省中部地方整備局静岡国道事務所 所長森川 博邦
国土交通省中部地方整備局静岡河川事務所 所長水谷 直樹
一般社団法人日本建設機械施工協会施工技術総合
研究所 所長
見波  潔
一般社団法人静岡県施工管理技士会 会長山田 壽久
一般社団法人静岡県建設業協会 協議員白石静比古
静岡県交通基盤部 理事村松  篤

静岡県建設業協会賞は、協会会員の技術力向上の基盤を築き、意識の高揚を図るとともに、自己研さんの場として昭和59年に創設され、これまでに442件の応募がありました。

今回も22件の応募があり、現場担当者の安全対策や近隣住民との調整に重点を置きながら、厳しい条件下で質の高い工事を完成せたものが多く見られました。

地区協会から選出された1次審査員の審査結果を踏まえ、現場担当者からのヒアリングや審査委員による厳正な審査の結果、最優秀賞1点、優秀賞2点、優良賞3点と特別賞1点の7件を選考しました。土木技術者の品質確保への努力や適切な工法選択、地域住民との調整など、応募された技術者の技術力はもちろん、関係した皆様の努力に対して、改めて敬意を表します。

引き続き、土木技術の向上のため、皆様方の益々のご活躍を期待しております。

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最優秀賞
平成24年度(繰越明許)都市防災総合推進事業津波避難タワー設置工事(C工区)

最優秀賞:(株)橋本組施工の「平成24年度(繰越明許)都市防災総合推進事業津波避難タワー設置工事(C工区)」は、構造物の性格上、工期遅延が許されない中で、今後の維持管理を極力なくすよう完成品の長寿命化に意識をおいた取組を行ったり、近隣住民との十分なコミュニケーションを図り住民の不安を取り除くなど、地域密着型の現場運営が行われた。

優秀賞

優秀賞:平井工業(株)施工の「平成25年度安倍川下川原低水護岸工事」は、河口から近距離での護岸工事のため大量の湧水が予想される中で、施工実績の少ないコンクリートブロック「さちゅら」の試験施工やコルゲートパイプを縦に埋設するなどの釜場の工夫を行うとともに、自然環境への負荷の軽減に努めるなど、様々なことに配慮した現場運営が行われた。

平成23年度狩野川平町樋管改築工事 平成23年度狩野川平町樋管改築工事

優秀賞:静和工業(株)施工の「平成25年度1号寺尾地区道路整備工事」は、国道1号を跨ぐため、多くの制約がある中で、仮設メッシュシートの設置、型枠の隙間へのコーキング等により安全確保に配慮した現場管理を行った。また、橋梁の長寿命化という観点から設計照査を徹底的に行うとともに、多様な工種を関係機関と綿密な調整や様々な工夫をしながら工期内に完成させた。

平成25年度1号寺尾地区道路整備工事 平成25年度1号寺尾地区道路整備工事
優良賞

優良賞:(株)石井組施工の「平成25年度富士山千束第5砂防堰堤本体工事」は、県内で一番大きな透過型砂防堰堤であるため、事前調査し、土石流発生の危険性予測や工事中止基準の設定等を行った。また、残存型枠の転倒防止対策等により作業の安全性を確保しつつ、コンクリート養生の工夫によりひび割れ発生を防止して堤冠コンクリートを打設し、景観にも優れた堰堤を無災害で完成させた。

平成25年度富士山千束第5砂防堰堤本体工事 平成25年度富士山千束第5砂防堰堤本体工事

優良賞:木内建設(株)施工の「平成24年度東静岡第27号東静岡南北幹線車道舗装工事」は、急勾配の厳しい条件下での鋼床版橋面舗装工事において課題を的確に捉え、現場と同条件で再現して試験施工を重ね、最適な転圧方法等、作業標準を確立させ高品質の工事を完成させた。

平成24年度東静岡第27号東静岡南北幹線車道舗装工事 平成24年度東静岡第27号東静岡南北幹線車道舗装工事

優良賞:須山建設(株)施工の「平成24年度佐久間道路浦川地区道路建設工事」は、急傾斜地で難易度の高い現場であるため、現場に則したロッククライミングマシンによる工法に変更し、安全確保を図りながら無事故で完成させた。

平成24年度佐久間道路浦川地区道路建設工事 平成24年度佐久間道路浦川地区道路建設工事
特別賞

特別賞:(株)中村組施工の「平成24年度佐久間道路川合2号橋下部工事」は、住家が近接し、かつ、狭隘な作業現場において騒音、振動対策をきめ細かく行うとともに、地元住民とのコミュニケーションを積極的に行うなど良好な関係を築きながら無事故で完成させた。

平成24年度佐久間道路川合2号橋下部工事 平成24年度佐久間道路川合2号橋下部工事

●第31回 (一社)静岡県建設業協会賞(建築部門)講評

建築部部門審査委員長  立道 幸男
審査委員会委員
国土交通省中部地方整備局静岡営繕事務所 所長神原 治之
静岡県くらし・環境部建築住宅局    局長諏訪 久男
(一社)静岡県建設業協会        理事河津 市元
(一社)静岡県建設業協会        協議員渡邉 雄二
(一社)静岡県建設業協会        協議員豊田 和壽
(一社)静岡県建築士事務所協会    相談役立道 幸男

第31回(一社)静岡県建設業協会賞(建築部門)の応募は12件あり、一次審査は一次審査委員が応募書類を基に実施、本審査は第1次審査結果を考慮の上、応募書類を基に意見交換を行い現地審査対象作品を7件選出、現地審査を2日間に渡って実施しました。

最終審査は各委員が討議の結果、最優秀賞1点、優秀賞2点、優良賞3点、特別賞1点を選定しました。

なお、今回は特別賞として浜松城天守門整備工事が歴史的建造物の復元という廃城時の姿に戻す為の特殊工事という事から、審査員の一致した意見により選定しました。

審査に当っては発注機関や規模等にとらわれないで、主催者の審査基準と採点方法により各審査委員が評価するよう努めました。また現地審査に併せ会員企業向けに見学会を実施し若手技術者が参加して研修の場となり、有益であると感じました。

いずれも企業努力と現場担当者の熱意と意気込みを感じる作品でした。今後は保守管理に努め、地域に根差す施設として親しまれる事を願う次第です。

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最優秀賞
浜松信用金庫きらりタウン支店新築工事

最優秀賞:木内建設(株)施工の「浜松信用金庫きらりタウン支店新築工事」は、新興住宅地の中心に建つ銀行の支店で、屋根が曲面の斬新的なデザインの建物であるが周辺環境と合わせて見ても然程違和感は感じられず、むしろ人目を引き話題性と優しさを感じる建物である。

外観が曲線で描かれた難易度の高い建物である為、施工計画や品質管理に苦慮された様子が覗え、施工精度を上げるために3次元CADによる原寸を起こして型枠、鉄筋、鉄骨の製作に対する工夫、浜松を彷彿させるモチーフを取り入れたデザイン優先の設計意図を良く理解して施工に対応している、屋根とコンクリート躯体の収まりも良く、施工者泣かせの建築物を出来映えや見映えも良く完成させた事等高く評価された。

また、地元産木材を使用したり、周辺が住宅地のため近隣とのかかわりや作業環境造りに努め、車両や通行人の安全の確保等近隣対策や地域貢献も認められた。

浜松信用金庫きらりタウン支店新築工事
優秀賞

優秀賞:渡辺建設(株)施工の「医療社団法人康生会(仮称)みくりや園新築工事」は、寒冷地のため冬は氷点下、夏は涼しく富士山が一望できる平坦で閑静な住宅地に建つ老人施設である。

医療社団法人康生会(仮称)みくりや園新築工事

稀に見る大雪(0.8~1.5m)という不測の事態に見舞われ、全社一丸となって除雪作業を行い本体工事に影響のない作業環境づくり、職人不足の中作業効率を上げるための努力と工夫、設備機器や内外装の使用材料に関する変更の提案が適切に成され、発注者、設計者、施工業者のコミュニケーションを取って、安全な施工、近隣対策、人手不足の対応ができ工期内に完成させた事等が評価された。

また、施工状況も良く各所の収まりにも配慮が覗え、施設全体の出来映えや見映えも良く、周辺環境にも考慮した建物として完成している。

優秀賞:大河原建設(株)施工の「みどり認定こども園新築工事」は、郊外に建つ認定こども園である。

みどり認定こども園新築工事

特殊構造と曲面を採用した難易度の高い建物であるため、事前に構造設計者と施工者が研修会を開催して理解を求め、お互いに綿密な施工計画を共有した中で工夫と品質管理に努め、会社、現場担当者、協力業者が一体となって設計意図に対応、全体の出来映えや見映えも良く、特にブリッジやキャノピーの施工管理・品質管理は苦労したと思われる。キャノピーに至っては芸術的であり型枠施工の技術の高さが覗える事等が評価された。

また、前面道路が狭いため交通条件があまり良くないことから、地元警察と綿密な打ち合わせを行い、近隣住民の通行や作業に影響ないよう安全管理と近隣対策に努め、作業環境造りの工夫が覗えた。

優良賞

優良賞:山本建設(株)施工の「静岡不動産三島ビル建設工事」は、中心市街地の角地に建つ銀行支店を含む事務所等の複合テナントビルである。

静岡不動産三島ビル建設工事

幹線道路の角地であり、交通量や通行人も多く狭小敷地という立地条件の中で、通行人や近隣居住者の安全の確保を第一に考え、地域の子供達のコミュニケーションに配慮、仮囲いや建物内部の壁に書き込みを依頼したり、高校生のインターンシップ、現場見学等、建設現場のイメージアップを計り、近隣とのかかわりを大事にして地域貢献を計る等仮設計画や施工計画が充分に成され、作業環境の優先に苦慮された様子が覗える。

作業ヤードが充分確保できない中での施工計画,工程管理に苦労したと思われ、鉄骨工事の騒音対策、飛散防止、内外装材の想定納入や夜間の荷揚げ作業等、難易な条件をクリアし見映え良く完成している。

優良賞:臼幸産業(株)施工の「特別養護老人ホーム(富岳ダイヤモンドライフすその富岳エメラルドパレス)新築工事」は、富士山の麓で比較的環境の良い敷地に建つ老人施設である。

特別養護老人ホーム(富岳ダイヤモンドライフすその富岳エメラルドパレス)新築工事

大規模施設(延床約8,000㎡)を9ケ月で完成させた工程管理と施工計画は立派であり敬意を表したい。寒冷地であり積雪や岩盤掘削の悪条件を乗り越え作業を工区分けし、協力業者との事前打ち合わせを密に適切な変更の提案等様々な施工上の工夫を凝らし、職人不足の対応と品質管理や安全管理を含め完成させた事等は、会社並びに現場担当者、協力業者の一貫した施工体制の高さを裏付けるものである。

また、高校生のインターンシップに協力したりと、近隣対策・災害防止・安全対策を日々心掛けた様子が覗えた。

優良賞:鈴与建設(株)施工の「草薙総合運動場室内練習場建築工事・建築その2工事」は、草薙総合運動場内に新設された屋内運動場である。

草薙総合運動場室内練習場建築工事・建築その2工事

総合運動場内であることから場内の他の施設利用者への配慮や近隣とのかかわり、作業環境造りに工夫がみられた。

高さ12mタテヨコ50mのRC造の柱壁を中間スラブなしで打ち放しという高度な技術を要求され、最小誤差で立ち上げた技術力、セパの割り付けやコンクリートの表面も良好に仕上がり、品質管理や施工精度の高さが覗える。立体トラス組・膜屋根についても特殊工法を理解し工区分けする等創意工夫、ジャッキダウンまでの工程管理や安全の確保に努め、合理的且つ効率化を計り見映え良く完成している。

特別賞

特別賞:中村建設(株)施工の「平成24年度社会資本整備総合交付金事業浜松城天守門整備工事」は、浜松城の天守門という歴史的建造物の復元工事であり、現存する石垣の保護を優先して施工計画を立て、歴史学者の指導や古文書等の資料収集を基に建築基準法に準じた構造計画と品質管理の工夫を凝らして廃城時の姿に戻す努力と苦労に敬意を表したい。

平成24年度社会資本整備総合交付金事業浜松城天守門整備工事

また、材料の選定や伝統職人の手配に苦慮され、市民の見学会や一般来訪者に対する安全管理、浜松城とその天守門を知らせる行為、特に高校生による木材の鉋掛けは将来の建築界を担う若者には良い経験であり、業界に取ってもプラスとなり地域貢献が成されている。

歴史学関係者や建築業界は勿論、多くの市民の注目を集めた歴史的建造物の復元工事であることから審査委員全員が推挙して特別賞とした。