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静岡県建設業協会 生子会長に聞く
公共事業費の削減策が推し進められる一方で、発注機関ではCALS/ECの実現に向けて、電子入札や電子納品の取り組みが着々と進行しています。建設業は未来永劫にわたり、継承されていく重要な基幹産業であることに変わりはありませんが、建設業界はかつて経験したことのない大変革期に直面しています。そこで、今回の「特別企画」では、県建設業協会活動の現状と取り組み、これからの方向などを、中長期的な観点も視野に入れて、生子隆則会長に広報部会の木内藤男委員長が聞きました。
生子会長
生子会長


木内 協会会員企業を見ましても新規採用者が減少している半面、退職者は非常に増加しています。こうした状況にどのような対策が考えられますか。
生子 建設業が基幹産業として、若者や女性に夢を託せる産業として発展していくには、優秀な人材を確保・育成していくことが、ますます重要な課題になっていることは言うまでもありません。まず、建設産業のイメージアップの促進が重要です。そのために、建設業に携わる技術者・技能者の役割と使命の大切さを、学校との連携を深めて小・中・高校生、保護者の方に真の理解を求めるPR活動を積極的に展開していきます。 
 人材の確保・育成と定着については、本協会の事業活動の一環として親子現場見学会や実業高校生サマースクール、高校生現場実習などを実施しており、今後も継続していきます。実業高校生サマースクールは、本協会初の試みとして富士宮の富士教育訓練センターで7月末に行い、20人の生徒が参加しました。一方、少子高齢化の時代を迎え、技能者の人材確保については、極めて困難な状況にあります。将来、優れた技能者が希望を持って働いていくためには、現場の良好な作業環境と、安定した労働賃金の確保が重要です。


木内委員長
木内委員長
木内 工事量の極端な減少によって、様々な面で影響が出ています。当協会でも退会する会員が増えるなど影響が出ていますが…。
生子 近年の過去10年間を統計データで見ても、県内建設産業全体の建設投資額は、平成3年度当時と比べ13年度時点で30%も減少しました。一方で業者数は3年度以降も徐々に増え続け、12年度には約1万7000社となりました。年間建設投資額を1社当たりに置き換えますと、3年度に約1.8億円であったものが13年度には1.2億円を切るような状況です。当然ながら利益率の減少も著しく、年間で1000社を超える企業倒産が発生する事態になっています。こうした状況から、技術と実績のない企業との受注競争が激化の一途をたどり、このままでは品質の低下によって建設産業の信頼の失墜が懸念されます。
木内 いま言われた厳しい経済環境の中で、協会はどのような取り組みを考えているのでしょうか。
生子 国や県が打ち出している受注競争激化による低価格受注対策の施策推進について、各地区協会とともに取り組みが遅れている一部の市町村発注当局に理解を求めていくことが急務と考えます。さらに地域住民の方々に対しても、専門工事業者の経営の逼迫から、第一線で働く技能者が将来的に不足していくことや、自然災害の復旧作業には地元の建設業者が大いに貢献していることなど、建設業の窮状と大切さを積極的にPRしていく必要がありますね。加えて、各地域において住民・行政・地区協会が一緒になって協働事業を実施することも大切でしょう。



木内 協会会員のスキルアップも重要ですね。
生子 現状に合わせた経営者や技術者の勉強会ができるように心掛けています。勉強会といっても「経営体質の改善」「技術力の向上」「安全の確保」「コストダウンによる体質強化」「品質の向上と確保」など、いろいろとあります。そうした中で例えば、電子入札や電子納品の移行に向けたIT対応、リフォーム・リサイクル・耐震性住宅・水利用などを視野に入れた環境対応の勉強には積極的に取り組んでいかなければなりません。 
 さらに、土壌地下汚染対策や都市景観整備事業への参画を考えた場合、建設分野で培ってきた技術やノウハウを生かして、異業種での事業展開を研究していくことも重要なことです。もちろん、企業合併・企業連携、中小企業向けのPFI事業の展開など、中長期的に検討を重ねなければならない課題もあります。いずれにしても、ホームページなどを最大限に活用して、会員に対して新しい情報を迅速に伝えるようにしていきます。



木内 また、行政に対する窓口として、会員は協会に期待を寄せていると思うのですが…。
生子 特に一部の市町村発注当局に対し理解を求めていくことは先ほども触れましたが、受注者を代表して入札制度等の改善に向けた提言をしていくことは、協会の重要な役目です。例を挙げると、入札・契約の適正化推進を図るためには、市町村によっては取り組みの遅れが目立つ「指名理由」「契約変更理由」などの公表を早く実施してほしいと考えています。また、施工体制確保の徹底化を図っていくには、体制が不十分な一部の市町村の場合、「監督・検査・技術力評価」部門を外部へ委託することと、技術検査機関の体制整備が必要ではないでしょうか。
 一方、技術力による競争の推進が求められています。これには、工事実績や成績を重視した技術力審査の強化は言うまでもありませんし、これも市町村で普及が遅れているCORINSの利用促進、不良不適格業者の排除など、協会として改善を要望しなければならないことがたくさんあります。
 また、公共投資が減少している中で、将来に向けて中長期的な公共投資計画の明確化と公表を求めることも重要なことです。なぜなら、建設産業の健全な発展と、技術と経営に優れた企業後継者の育成、技術者・技能者の確保の観点に立てば、計画的な公共投資計画の展望は、将来を見据える上での羅針盤でもあるからです。
 これからも積極的に協会活動を展開していきますので、一層の協力をお願いします。

平成15年度会員調査集計表

1. 社員の15年度新規学卒採用状況
    職種 採用人数
中卒 技能 5社 6人
技術
事務
5社 6人
高卒 技能 16社 21人
技術 23社 29人
事務
39社 50人
専門学校
短大卒
技能
技術 12社 14人
事務
12社 14人
大卒 技能 2社 2人
技術 27社 41人
事務 3社 4人
36社 51人
技能 24社 30人
技術 65社 87人
事務 3社 4人
男合計 92社 121人
中卒 技能
技術
事務
高卒 技能
技術 1社 1人
事務 13社 15人
14社 16人
専門学校
短大卒
技能
技術 2社 2人
事務 5社 6人
7社 8人
大卒 技能
技術
事務 3社 3人
3社 3人
技能
技術 3社 3人
事務 21社 24人
女合計 24社 27人
男女総計 技能 24社 30人
技術 67社 90人
事務 24社 28人
116社 148人
1社当たり 1.5人
該当なし 565社

2. 社員の14年度の退職状況
  職種 退職人員
定年退職 自己都合
技能 72社 106人 136人 251人
技術 47社 66人 214人 432人
事務 20社 29人 57人 85人
男合計 139社 201人 407人 768人
男退職合計 969人
技能 5社 6人 12人 13人
技術 1社 1人 19人 19人
事務 18社 29人 91人 126人
女合計 24社 36人 122人 158人
女退職合計 194人
男女合計 163社 237人 529人 926人
男女退職合計 1,163人
1社当たり 2.9人
該当なし 264社

3. 15年3月末日の総職員数
総職員数 661社 14,586人
1社当たり 22人
回答社数 661社

※協会会員アンケート調査から
静岡県建設投資と業者数の推移
出所: (1) 平成13年度までの投資については国土交通省「建設総合統計年度報:建設投資(出来高)」
(2) 平成14、15年度の公共投資については日本銀行静岡支店「15年度の県内公共事業関連予算について
(平成15年4月8日)」データを使用して予測
(3) 平成14、15年度の民間投資については(財)建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し
(2003年1月)」データを使用して予測
出所: (4) 平成13年度までの業者数については国土交通省総合政策局建設業課「建設業者数」期中平均
(5) 平成14、15年度の業者数の予測については平成13年度の減少率▲1.9%を継続するとして予測
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