INDEX >> ズームアップインタビュー
ズームアップインタビュー
大井川に清流の復活を!
「大井川の清流を守る研究協議会」会長の河野敏郎川根町長に聞く。
聞き手/原 廣太郎 県建設業協会広報部会委員 (株)原小組代表取締役・島田協会
 上流から下流までの地域が一体となって大井川に水を取り戻そうという活動の推進母体となっている「大井川の清流を守る研究協議会」。今回は、同研究協議会の会長を務める河野敏郎川根町長に、インタビューしました。
 この活動の原点は、どんなことから
河野 もう15年ほど前になります。町内会の役員をしていたころだったんですが、大井川の河原砂漠に水を取り戻そうという気運が高まり、「それでは、みんなで団結してやろうか」ということになりました。ともかく30年もの間、一滴の水もなかったものですから、何とか水を取り戻したいと、各方面に働きかけた結果、川根3町で勝ちとったのが毎秒5t、冬場で3tの水だったんです。
 その後、活動は研究協議会という組織に発展していきましたね。
河野 縁があって町長になり、私自身も「水ほど大切なものはない」という考えから、4年ほど前の県町村会の時に、大井川の河口から源流までを見直す会をつくったらどうだろうかと提案したんです。「そういうことなら榛原郡8町でやろう」ということで、「大井川の清流を守る研究協議会」が立ち上がりました。行政と町議会の双方が同じ考えに立って、予算を出し合って、大井川の見直しをはじめて3年くらいになります。
河野敏郎 川根町長
「河川法」を動かした手紙
 河野町長が「水ほど大切なものはない」という認識を一層深めたきっかけは?
河野 それは何といっても、当時、建設省(現国土交通省)で河川局長をしておられた尾田栄章さんとの出会いですね。尾田さんは「川メール」で川に関する情報交換を積極的にやっていたものですから、私自身が川で遊んだ子どものころのことや、大井川の今の状況などを手紙に書いたんです。30ページぐらいになってしまったこともあって、読んでもらえるのかどうか心細かったんですが、1カ月くらい経ってから「読みました」という返事をもらいました。それも「これほど真剣に川のことを考えていることに感銘した」という内容でして、それが縁で今でも交流してもらっています。
 ちょうど、当時の建設省が河川法の見直しを行っていたこともあって、私の手紙も重視していただいて、河川の環境保全を考えるときに、これからは地域住民の意見を聞きながら保全対策を進めていく必要がある、という内容に河川法が改正されたのです。
 尾田さんは、川根町にも何回か見えていますね。
河野 すでに国土交通省を退任されているのですが、あの手紙が縁で、川根町に何回も足を運んでもらっていましすし、実際に大井川の現状を見てもらっています。尾田さんも、大井川ほど徹底的に水を使っている川はない、昔は国策として水の利用が推進されたが、一滴残らず電力発電に使うというのは時代の遺産であって、これからは水を川に戻さなければいけないという共通の認識のもとに、研究協議会の相談役として、いろいろとアドバイスを受けています。
源流の清水見て欲しい
 さきほど、15年ほど前に5t(冬場は3t)の水を取り戻したという話をしましたが、大井川の源流部にあたる二軒小屋では、きれいな水が毎秒5tという単位で山梨県の早川町側へ導水されており、1年のうち約200日間は、一滴も大井川には流れない状況です。この源流部は、平成17年に水利権更新を迎えるため、それまでに水を取り戻すための著名運動など、やるべき活動に全力をあげたいと思っています。
 源流部にも尾田さんは行かれたようですが、どのような感想を話されていましたか?
河野 尾田さんは、大きな目標を定めて、自然に流れる方向に水を戻してほしいと主張すべきだ、それには、地域の住民がみんなで声をあげて訴えていかなければならない、と言っておられました。
 日弁連でも視察されたとか?
河野 昨年夏でしたが、日弁連からも8人の方が視察されました。その中の水部会の委員によると、日本の川で一番堆積土砂の多いのが大井川、一番水を利用しているのが大井川ということで調査にきた、と説明されました。視察団は、「やはり、もう少し水を自由にして川に戻してやるべきだ」という結論を出し、今後、取り戻すための支援をするというコメントをもらっています。
 ダムの影響が具体的に出ているのは?
河野 例えば、塩郷ダムより上流では堆積土砂が著しく、河床が上がって、それによる災害が発生しています。塩郷ダムから下流部では反対に、およそ5mも河床が下がってしまい、護岸は宙に浮いている状態です。源流部の二軒小屋に行ってみればすばらしい水にめぐりあえるのに、大井川に流れている水はドロドロで汚く、魚も棲めません。
インタビューする原委員(左)
住民一丸の運動必要
 今後の展望はいかがですか。
河野 大井川沿線地区は電源開発による恩恵を受けてきましたし、電力会社に勤務している人もいますが、水を川に呼び戻すことは地域住民の悲願です。それがこれから、8町の合併の動きによっては榛原郡がズタズタになり、活動に影響が出るかもしれません。しかし、下流部と上流部の住民が一体となって運動を展開していかなければ、水を取り戻すことは困難になります。次世代に誇りを持って引き継がれる大井川にするために、1人でも多くに皆さんに大井川の現状を知ってもらい、河川の環境を変えていきたいと考えています。
▲TOP

←前へ戻る | INDEX | 次へ進む→