INDEX >> 時評
時評  
富士山を世界遺産に 
 私の家の窓からは、真正面に富士山が見えます。四季折々で表情が変わる富
士山を朝一番に眺められるのは最高の贅沢です。毎日当たり前のように見てい
る富士山ですが、他県から来る人や外国からの旅行者にとってはまさに憧れの
存在。新幹線で富士川を通過する時その姿が見えると歓声を上げるほどです。
 これだけ美しく、日本のシンボル的存在である富士山ですが、残念ながら未
だ世界遺産への登録は実現していません。
女性の五輪
 日本では1992年にユネスコ条約を批准、これ以降世界遺産への登録が相次
ぎ、翌93年の「法隆寺地域の仏教建造物」「姫路城」「白神山地」「屋久島」
を皮切りに今年7月に登録された「知床」まで13件にのぼります。
 「富士山を世界遺産に…」の運動は、日本が条約に批准した92年からありま
した。自然保護団体などが署名運動を展開、94年には全国から集まった約240
万人余の署名を添えての請願が国会で採択されたのですが、政府はユネスコに
推薦することを見送りました。登山客によるゴミの散乱やトイレ問題、さらに
人為的な自然破壊による環境問題の悪化がその理由でした。
 しかし幸いそれをきっかけに、富士山の自然環境の保全、保護への意識が加
速。地元自治体や各種団体の努力でボランティアによる富士山一斉清掃が促
進、懸案だった登山者のトイレ問題もバイオ式トイレの整備が進んできていま
す。
 こうした環境改善の流れに、世界遺産の選考基準に新たに「文化的景観」が
加わったことが追い風になり、登録を目指す運動が再度盛り上がりをみせてい
ます。
 今年4月に中曽根康弘元首相を会長に静岡・山梨の両県知事らが発起人とな
り、「富士山を世界遺産にする国民会議」が設立され、7月には東京でシンポ
ジュームが開かれました。国民会議では5年後の登録を目標に、関係機関への
働きかけや、古代から神の山として信仰の対象となり、数多くの文学や芸術作
品に描かれてきた富士山の文化的価値の研究、登録後の保護管理体制への提言
活動をしていくそうです。
 我々も砂防工事の取り組みを通し、富士山の環境保全に関わっています。ま
た、登録後さらに増えるであろう登山客や観光客を迎えるために世界遺産にふ
さわしい都市整備も今後課題となるでしょう。建設業に関る者として微力なが
らも富士山環境保全や景観づくりに尽力できたら……。初秋の空にそびえる富
士山を眺めながらそんなことを考えています。
▲TOP

←前へ戻る | INDEX | 次へ進む→