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一昨年9月、沼津港に東海地震津波対策事業として9年の歳月を要して整備した大型航路水門が完成した。水門の愛称は「びゅうお」。展望回廊を配した大型展望水門で、当初の予想を大きく上回る来場者を記録。今後も周辺地域の活性化を担う中核施設として大きな期待が寄せられている。 「びゅうお」を中心とした港湾整備計画、地域活性化対策について、沼津港振興対策室の鳥居室長に話を聞いた。 |
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沼津港は、静岡県が管理する地方港湾です。沼津港は昭和8年に掘割りにして内港部分を建設、その後昭和40年代に今の外港が形成されました。そのため、港としては珍しく内港と外港が分かれた港です。開港70年余りの歴史を持ち、県内に12ある地方港湾の一つです。 内港は漁港区として、魚の水揚げなどで知名度があり、外港は金属類などの物流分野を主な使用目的としています。かつては、港の繁栄は物流機能に頼っているような部分がありましたが、これからは観光・レクリエーションなどの分野で振興を図っていかなくてはと考えています。 沼津港は、平成12年5月の旧運輸省時代に特定地域振興重要港湾に選定されました。この選定には全国で500以上の港がエントリーしましたが、その中で選定があったのは14港で、沼津港はその1つに選ばれています。指定を受けた14港はそれぞれ振興分野を定めており、防災機能や産業振興など様々なセクションがありますが、沼津港は観光振興を主たる振興分野に指定しています。それを受け、13年度に管理者である県では「沼津港港湾振興ビジョン」を策定しました。官民で手を組み、再整備・地域振興を図っていこうというものです。基盤整備は静岡県が主導で実施し、ソフト面や施設については地元で整備を行う方針で、現在も進めています。このような経緯から、昭和50年代にはほぼ休止港湾だった沼津港の振興計画がスタートしています。 現在の沼津港の水揚げの主なものはサバ・アジ・イワシ・カツオ・マグロで、全体の96%を占めています。年間の水揚げ量は3万4000トンで、陸送品を含めると6万1000トンの取扱量となります。特にアジの干物は有名で、サバ節とともに全国の生産量の約40%を占めています。このような地域特産品も観光・地域振興に大きな武器になると考えています。 昨年の12月には、第1弾として立体駐車場が完成しています。これは民間主体で整備を進めました。また、一昨年は予想される東海地震への津波対策として建設された大型水門「びゅうお」も完成しました。「びゅうお」は、振興ビジョンが策定された6年も前から建設計画があり、計画の一部を変更し、観光振興の一環として展望回廊などを配置し建設した経緯があり、防災と観光の両方の機能を備えた施設です。名前の由来は「view」+「魚(うお)」で「びゅうお」です。水門部分は、震度6弱以上・5・8mの津波を想定して造られており、その震度の地震を感知すると水門が自動落下します。扉の材質は耐久性に優れたクラッド鋼板で、鉄をステンレスでサンドした特殊なものを使用しています。 来場者数はオープン以来約1年間で約14万人、現在までに約17万人です。これは予想を大きく上回る数字です。現在、ソーラーや風力発電でLEDなどの歩道照明を行っています。今後は、夜間営業やライトアップも計画しており、さらなる来場者の増加を期待しています。 びゅうおを中心とした港周辺地域の振興計画に対する整備は、まずは基盤整備が先という考えで、狩野川護岸やびゅうおの両サイドの津波対策の胸壁整備などを行っています。また、来年度以降には水産複合施設・マーケットモールや旅客ターミナルなど様々な整備の推進、長期的には緑地帯・遊歩道の整備も行い、観光施設への動線をつくり出す方針です。このように基盤整備が進みつつある中、各観光施設の整備計画も着々と進んでいます。 現在の第一市場の北側半分を地産地消を目的としたマーケットモールにしようというものです。市民が台所の具材を安く求められるような施設であるとともに、観光に訪れた人達も楽しめる施設として考えています。魚市場は今後、遮蔽して温度管理のできる施設で「食の安心・安全を図る」という施策があります。そのような、安全対策と観光振興を合わせた施設として、市場のセリを公開できるようにするほか、アジの開き講座など様々なレクリエーションを行うことも出来る施設を整備する予定です。 以前から山梨や長野、群馬など関東方面の人達から「市場・セリ」を見たいという要望は多くありました。現在もアジの開き方教室などをボランティアで催している人達もいて、様々なイベント・教室が開催することが可能で、元気な市場のセリなども見られる開放的な施設に整備する計画です。 また、現在は1号棟という名称で建設した立体駐車場ですが、観光施設としての駐車場であるために曜日によって利用度に差があり、土曜、日曜などの休日には900台以上もの車が利用される日もあります。この駐車場によって、周辺の慢性的な渋滞が緩和されています。今後は将来のことも考え、マーケットモールの進捗状況や混雑具合により2号棟を慎重に検討していく方針です。動線計画では、マーケットモールや水産複合施設の中を通りびゅうおへ行き、びゅうおの北側で降りると美しい松のグリーンシャワーが広がっていくという計画です。 昨今、公共事業に対する考え方や支援制度も大きく様変わりしているために流動的ではありますが、ハードもソフトも含めた完成目標は、平成25年頃としています。それぞれ独自性を出して自治体自身が体力をつける中で、行政展開を行っていくべきだと考えています。 ビジョンを策定した当初は、ワークショップなどもたびたび開催していました。今後も必要に応じて地元住民の意見を取り入れていく方針です。また、沼津市では市長を会長として「沼津港振興ビジョン推進委員会」を設置しています。メンバーは沼津商工会議所などにも参加していただいています。その下部組織として幹事会を組織し、様々な事業展開に対応できるよう観光協会や水産関係者、県の関係者などから意見や提案も伺えるようにしています。 沼津市では、沼津ICやJR東海、沼津港などを5エントランスとして位置づけ、多くのひと・ものの輸送の中心地になるべく様々な施策を進めています。沼津港は、今後も県東部の物流の拠点、西伊豆への観光交通拠点として、また防災拠点として港湾機能の充実を図るとともに、魚市場周辺の沼津独自の特性を生かした商業・飲食などのサービス機能の充実を図り、内外から多くの人々が集うにぎわい拠点を形成するとともに、伊豆への玄関口・東海地方への通過点ではなく、沼津全体を産業・観光中心地とした総合的な開発を行っていきたいと考えています。
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