「ピアノの詩人ショパンが浜松にいます!アクトシティ『ショパンの丘』」

「別れの曲」というピアノ曲を知っていますか。聞けば誰でも「ああ、あの曲」と分かるはずです。作曲したのは、ピアノの詩人ショパン。そのショパン像が日本にあるのです。いま、浜松といえば…、全国CMに出演して新垣結衣ちゃんと踊って調子に乗っている「出世大名家康くん」。いえいえ、音楽の街、浜松ならではのシンボル、ショパン像です。浜松駅東側のアクトシティに立っているのです。「ショパンの丘」に、ぜひ立ち寄ってみてください。

ショパン像 メーン写真
▲ショパン像 メーン写真
▲アクトの森への径
▲ショパンの丘への幾何学的な階段に一瞬驚く

浜松駅に降り立ち、頭をめぐらすと、東側にハーモニカを立てたような高い建物が目に付きます。これがアクトタワー(オークラアクトシティホテル浜松。地上45階・高さ約185メートル)。

アクトシティを遠望する
▲アクトシティを遠望する

アクトタワーを中心にした建物を「アクトシティ浜松」といいます。  建物の屋上部分は、緑が覆う庭園=「アクトの森」となっています。朝6時から午後7時まで公開されているのです。

「アクト(ACT)」というのは、Aはアート(芸術文化)、アコード(調和)、Cはコミュニケーション・コミュニティ(交流)、コンベンション、Tはテクノロジー(産業技術)、トータル・マネージメント(一体的管理)といった頭文字を表わしています。

アクトシティは、発展する浜松のシンボルとして、総事業費約1600億円を掛けて平成3年8月に着工し、同6年10月に完成しました。来年で20周年を迎えようとしています。

アクトシティは、駅ビルとつながっていますので、駅から「ショパンの丘」へ行ってみましょう。

アクトシティの最西端、建物の茶色い外壁に沿って、ゆるやかな坂道があります。

この坂道を上ると、連続する階段をスパッと切るように、階段の中にゆるやかな坂道が作られている幾何学的な広い階段が現れます。

階段、アート作品
▲階段、アート作品

その途中途中にはアート作品が配置してあります。階段を上りきったところが、今回の目的の「ショパンの丘」。丘の中央にどんとあるのがショパン像です。

ショパン像
▲ショパン像

ショパン像は、浜松市とポーランドのワルシャワ市との音楽文化友好交流協定締結(1990年) を記念して、1994年にワルシャワ市から贈られたものです。

ワルシャワ市のベルヴェデレ宮殿隣のワジェンキ公園にあるショパン像を複製したもので、大きさは元の像の3分の2ということです。

それでもなかなか大きいと感じます。像の高さ4メートル(別に台座が1.57メートル)、重量は4.86トンもあるそうです。

ワルシャワ市の像も実は復元されたもの。一番初めの像は、ヴァツワフ・シマノフスキという人が制作しました。が、その像は1940年にドイツ軍によって、ポーランドの愛国心のシンボルとして徹底的に破壊されました。

現在の像は、1994年にポーランドのクラコフ芸術大学のマリアン・コニエチニイ教授によって作成されたものだということです。

▲ショパン像は意外に大きい
▲アクトタワーを背景に立つショパン像

さて、ショパンは何をしているのでしょうか。

「マゾフシェ地方の木『しだれ柳』の下に座って、激しい風に髪も服も吹きさらされている」(『ショパン わが心のポーランド』ひのまどか著、リプリオ出版)

「柳の木の下に座ったショパンが故郷マゾフシェ(ワルシャワや故郷ジェラゾヴァ・ヴォラを含む地方)の自然の音を聞いている様子」 (ヨーロッパ芸術街道 作曲家ゆかりの地)

大きな手のように見えたのは柳の木だったのですね。しかし、なぜ、左を向いているのでしょう。目は開けています。右手は何をしているのでしょう。掌を風上に広げて、風を感じているのでしょうか。風よ吹くな、止まってくれと願って突き出しているのでしょうか。微妙に曲げた指は、ピアノを叩いているのでしょうか。

いろいろなことを考えてしまいます。

この一つの像には、ふるさとに戻れず、フランスで客死したショパンの短く激しい生涯だけでなく、ポーランドという国の悲惨な歴史も刻み込まれているのです。なかなか重いものがあります。

浜松市に最もふさわしいスポットの一つが、この「ショパンの丘」といえるでしょう。

ついでに他のスポットも紹介しておきましょう。「ショパンの丘」に続くのが、半円形のステージがある「音楽広場」(朝はラジオ体操が行われている)、この隣が「いこいの広場」、橋を渡ると柱がぐるっと囲むスペースで、ここからアクトタワーを見上げると迫力満点。

アクトタワーの南側の細道をたどると、右手に鉄道を見下ろせる。いまちょうど新幹線が到着したところ。さらに先を進むと「光と緑にあふれた屋外ステージ」である「太陽の広場」。

ショパン像
▲ショパンの丘を過ぎると音楽広場。芝生の緑が気持ちがいい。屋上とは思われない

「アクトの森」のパンフレットによると、往復すると1745.38メートルで、約21分かかり、総カロリー消費量は102.4キロカロリーになるそうです(数値は目安)。

梅雨の間の気持ちのいい晴れの一日の昼。どれだけ人が憩っているかと思えば、「ショパンの丘」をベビーカーを引いて上る夫婦が1組、逆に下がってくるゴミ収集作業員、「音楽広場」のベンチで休む男性。わずかにこれだけ。

人があまり来ないというのがうれしい。にぎわいもいいが、閑静を好む人にとっては絶好の場所です。できれば、このようなところで紹介したくないとあらためて思いながら紹介をしてしまいました。

そうそう「アクトの森」につながっている「浜松市楽器博物館」も紹介したかったのですが、それはまた次の機会といたしましょう。

▲アクトシティにつながっている浜松市楽器博物館には3300もの世界の楽器がある
▲これが楽器だって?
(バリ島のジュゴッグという竹を用いた楽器)
▲さすが楽器の街のアートです