「十津川は、直子とタクシーを降り、道標に従って、急な石段を降りて行った。稲妻形に下って行く石段である。(中略)/何段も降りて行くと、やっと滝の音が聞こえてきた。/ほっとした感じで、滝を見上げた。流れ落ちるあたりが、釜の底を思わせるので、釜滝というのだろう。」
トラベルミステリー・西村京太郎氏の『伊豆・河津七滝に消えた女』(カッパノベルス)の一節です。
テレビでもよく登場する、あの十津川警部も夫婦で河津七滝に訪れていました。奥さんの直子さんは、ここでフィルム3本分の写真を撮影したようです。
十津川警部夫婦は、修善寺側から訪れましたが、今回は河津側からご案内をします。 国道414号のループ橋を下ってすぐの河津七滝入口を入っていくと、町営の無料駐車場があります。そこに車を停めて遊歩道を散策しましょう。時間はゆっくりあるいて1時間くらいです。直子さんのように写真をたくさんお撮りになったら、もう少し時間が必要ですね。 滝だけではなく、新緑もよし、万緑もよし、紅葉もよし。冬には木の実、草の実も楽しめる、そんな自然豊かな河津七滝です。
あらためてご紹介をしますが、河津七滝は「かわづななだる」と読みます。「だる」「たる」というのは古い言葉だそうです。万葉集の「石走る 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも」の「垂水(たるみ)」の「たる」と同じですね。七つの滝は、いずれも「だる」と読みます。また、河津地方では、ヤマタノオロチのような七つの頭を持った大蛇を退治する際に酒樽を使い、その樽が川に引っかかって滝になったから「たる」と呼ぶようになったというお話が伝わっているそうです。(『静岡県自然観察ガイドブック14 河津七滝』より)
さあ、前口上はこれくらいにして出発しましょう。
遊歩道入口の茶屋の前を左に下っていくと、二つの川が一つの川の流れになるところに「出合滝」があります。
(1)出合滝(deaidaru)
(2)かに滝(kanidaru)
(3)初景滝(shokeidaru)
ここには「踊子と私」のブロンズ像があり、観光客のみなさんが記念写真を撮っています。
ここまでは舗装されていて、道幅もあり歩きやすくなっています。
(4)へび滝(hebidaru)
「初景滝~釜滝」は一昨年の台風の落石などにより、通行止めになっていましたが復旧工事により今年の4月2日に通行できるようになりました。
この橋は、ジオサイトの中で景観にも配慮した、県内で初めてのつり橋です。
(5)えび滝(ebidaru)
(6)釜滝(kamadaru)
(7)大滝(oodaru)
現在は河津七滝の一つで最大の高さを誇る大滝は、遊歩道が閉鎖されていて残念ですが見学できませんでした。(高さ30m 幅7m)
七つの滝の姿はそれぞれ独特で、自然の妙に驚かされるばかりです。これらの滝がどのようにできたかというと、『静岡県自然観察ガイドブック14河津七滝』によれば、「2万2,000年前に登り尾南火山が噴火し、流れ出た玄武岩溶岩が河津川をせき止めたために、現在のような多くの滝を出現させ」た、ということです。
滝と自然の木々に囲まれたマイナスイオンたっぷりの、心を癒される遊歩道を1時間もあればつり橋も渡りながら回ってこられますので、ぜひ伊豆へお越しの際は一度訪ねてみてはいかがでしょうか。