事業概要
◇事業名称
  掛川駅前東街区第一種市街地再開発事業
◇施行者
  掛川駅前東街区市街地再開発組合
◇所在地
  掛川市駅前、紺屋町、肴町の一部
◇区域面積
  約0.9ha
◇事業施行期間
  平成25年8月 ~ 平成29年3月
◇総事業費
  約35億円

   掛川市の中心市街地は、新幹線も停車する市の玄関口であるとともに、掛川城にも近く、歴史と伝統に支えられて発展してきた。しかし、近年、社会・経済状況、ライフスタイルの変化により、昔ながらの商店街だけでなく、より多くの人を集めることができる、新たな都市機能を有する施設の必要性が出てきた。
 歴史と伝統、都市機能が集約した魅力ある中心市街地として生まれ変わるべく、平成11年に「中心市街地活性化基本計画」を策定し、再開発を進めてきた。
 掛川駅前東街区第一種市街地再開発事業は、同市の中心市街地活性化の核となる事業として計画された。しかし、経済・社会情勢の変化により着工までに15年余りを要し、昨年12月に建築工事に着手した。
 この再開発に当初からかかわる「掛川駅前東街区市街地再開発組合」の仁科雅夫理事長に、事業への思いや施設完成後の活性化などについて聞いた。
(インタビューは原廣太郎委員長、佐野茂樹副委員長、西島正浩委員)


委員平成14年に準備組合が設立されましたが、再開発を計画した経緯をお聞きします。

仁科雅夫氏
▲仁科雅夫氏

平成10年にまちづくり三法という活性化を支援する法律ができ、それに呼応して再開発事業を立ち上げようということで、市で中心市街地活性化計画を作りました。その計画の一環として、掛川駅前東街区第一種市街地再開発事業として、約1ヘクタールの敷地の中で計画されました。それに伴い、最初は商工会議所に市の計画に対して、意見を聞かせてほしいと、11年度、12年度2カ年で概要についてヒアリングがあり、会議所から回答し、市の中心市街地活性化の計画が固まりました。それに基づいて、当時はTMO(タウンマネジメントオーガナイゼーション)構想の指定を商工会議所が受け、中心市街地の再開発以外のことも含めて事業を進めることになりました。しかし、商工会議所も通常の業務があり、建設関係の投資などができないということで、13年度に第3セクターとしてかけがわ街づくり株式会社を設立し、TMOもかけがわ街づくり株式会社へ移りました。そして、実際の活性化計画などをかけがわ街づくり株式会社で手掛けるようになりました。これがスタートです。中心市街地活性化計画は駅の北側からお城を含めた国道1号線までの約50haが活性化区域として指定されていました。区域を3つに分け、北側3分の1は、掛川城の天守閣を復元し、それに合わせて歴史文化ゾーンということで、周辺の歴史文化財の梃入れをして北側の核となる計画でした。南側は大型店舗が撤退したため、空地になっていましたので、そこに街の玄関口としての施設を作らなければならないとして、再開発で東街区に施設を作ることになりました。中心市街地の真ん中を通る旧東海道は、もともと掛川の一番の中心の商店街でしたが、商業の郊外化により、小売的には梃入れしなければならないとして、新しいお店を作っていこうと計画しました。2核1モールとして、南北の2つの核で街の中心を活性化しようとしました。それが、中心市街地の活性化計画でした。しかし、途中で、国のほうが制度疲労を起こし、16年に事業のスタートができなかったため、仕切り直しをしました。結局、国、市の財政難で、市のお金を使わないように、民間の身の丈にあった再開発にしなければならないことになり、案の練り直しをしました。その後、新しい都市計画の変更もあり、昨年やっと県や市の認可が下り、事業をスタートすることができました。準備組合が本組合になったのが、平成25年9月です。それから、第1年度が地権者の権利変換計画と施工者の実施設計の事業でしたが、それがずれ込み、平成26年度の秋に権利変換計画の認可を受けました。
 そのため、実際の建築工事は、12月からになりました。単独の企業がやる事業ではないので、大勢の合意が必要な事業は時間がかかります。時間がかかる間に国の制度が変わったりしたので遅れてしまいました。

委員新たな施設はどのような施設になるのでしょうか。


高齢化した地域の人達が買い物にいくスーパーが無くなってしまった。そのため、どうしても町中に買い物に行く施設を作らなければなりませんでした。今度の計画でも食品売り場を作る計画をしています。全体の計画の中で、敷地の中に3つの建物ができるようになっています。一棟は北棟で12階建です。1階は店舗で2階から12階まで77戸のマンションができます。西南の角に、食品売り場がある店舗棟ができます。平屋で屋上が駐車場になっています。もう一棟は立体駐車場ができます。店舗棟屋上の駐車場と併せて236台の駐車ができます。今年の「かけがわ大祭り」に合わせて10月にはオープンしたいと思っています。北棟はもう1年かかりまして、来年の秋の開業を計画しています。

委員計画から竣工まで時間がかかりますが、店舗の引っ越しなどもしなければなりませんね。


北棟1階で店舗を持つ商店は現在、仮店舗で営業しています。仮店舗での営業は、売り上げが減少していますが、完成後の新店舗での営業を目指して、頑張っています。

委員店舗棟ですが、何店舗ほど入る予定でしょうか。


店舗棟は、従来の商店街の商業者が入るのではなく、全く新しい施設です。現在、掛川駅の構内に「これっしか処」という地元の産品を販売するお店がありますが、その拡大版のような食品館を想定しています。内容は鮮魚、肉、野菜の生鮮三品と食堂、喫茶、地元特産品、日用品などで地産地消、互産互消を考えています。北棟1階の商店は権利変換で在来地権者の店舗が出店します。


委員施設の間に広場がありますが、どのように活用していくのでしょうか。


広場を挟んで店舗棟と北棟がありますが、いろいろ市の協力も頂いて街のイベントと連携するなどして有効活用する計画をしています。常時イベント広場として集客に繋げたいと思います。又エコパスタジアムが2019年開催のラグビーワールドカップの会場に選ばれたこともあり、屋台でも出して大いに盛り上げたいと思っています。

委員店舗棟や駐車場の運営はどちらが行うのでしょうか。


全体の事業計画では、北棟のマンションは、株式会社マリモというデベロッパーが販売をして、ほぼ売れてしまいました。駐車場はかけがわ街づくり株式会社で取得し運営します。かけがわ街づくり株式会社は周辺の駐車場も多く運営しているので、連動していきます。店舗棟は、地権者が中心になって設立した「弥栄(いやさか)かけがわ株式会社」が店舗を取得して内装までやって運営する形になります。これがなかなか大変です。
 しかし、それぞれの資金繰りがつきましたので、事業完成後はスムーズに組合は解散できる見通しです。

委員建物の雰囲気はどのようなものでしょうか。


マンションは掛川城や城下町風街並みに合わせた白と黒を基調とした色彩とし、店舗の内装は木の文化を感じる雰囲気にしたいと考えています。

委員1号線までが中心市街地というお話がありましたが、今後のそこまでの新たな開発の計画などはあるのでしょうか。


第2期の中心市街地活性化計画が平成27年度からスタートします。そこでは範囲を少し広げていろいろな事業を行っていくことになると思います。これから民間で計画が出てくると思いますが、かけがわ街づくり株式会社でもミニ再開発のようなものもまとめて、やりたいと思います。地権者が土地を離れていたりするので、時間はかかりますが、継続した努力が必要だと思います。

委員再開発事業の完成が楽しみですね。


当初より事業規模は小さくなり、店舗棟は平屋の建物ですので、集積を高くするという本来の再開発の趣旨からは変わっていますが、とにかく、この立地を活かして、一歩を踏み出していかなければなりません。多分に周辺の投資意欲も出てきているようなので、火付け役にはなるのではないでしょうか。

委員ぜひ、成功させて周辺の街づくりの参考になるような成功例にして頂きたいですね。


どの地域の再開発も当初の計画通りに進まないことが多いですね。あまり背伸びしないで身の丈にあった再開発を進めていきたいと思います。皆で集まって郊外店と競争して勝とうというのは無理なので、この地域の人が便利になることが第一だと思います。交通立地などを活かして、この地域が便利になるように進めていきたいと思います。

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