昭和21年に開店したスタンドバー御薗に端を発し、現在浜松市の中心市街地で飲食店4店舗(総本家みその、料理酒房御蔵、割烹みその千とせ店、中華そばみやひろ)を運営するみそのグループ。食を通じて市街地の活性化に取り組み、いまやその代表的な存在であるといえるのが御園井克旨社長だ。
 「やらまいか」精神の街、浜松市にも人口減少や景気減退の影響は散見される。そんななかで半世紀を超えて店舗を運営し続ける同グループ代表として、街の来し方行く末をどのように捉えているのか。御園井社長に街の現況と展望について聞いた。
(インタビューは原廣太郎広報委員長、佐野茂樹広報副委員長、山口広報委員)

委員御園井社長は浜松の中心市街地に飲食店4店舗を構え、飲食業を通じて街の活性化に取り組んでおられますが、現況についてどのような印象をお持ちですか?

店を構えている浜松市の街中のことしか私にはわからないのですが、私は現状を楽観的に捉えていますよ。ただこれは条件付きの話で、私どもが客単価5000円以上の飲食業を営んでいる、その条件からすると、あと10年ほどの顧客ニーズは見込むことができそうだ、と判断しているということです。
 人口減少社会にあって、2018年には国内18歳人口が減少に転じるといわれ、後継者問題や従業員確保の困難さはまったく他人事ではありません。加えて5人採用しても1年経つと1人しか残っていないという、これは飲食業界の厳しさのせいか、本人たちの資質のせいかというところもありますが、人の確保という面での苦労は年を追うごとに厳しいものになってきています。
 物販業態の方々にとっては、街中に出店することはとても難しい状況にあると感じています。インターネット通販の成長で、どこに住んでいてもどんなものでも手に入る。街中に足を運んでモノを選ぶという、来店の動機を見出しにくくなっていますから。
 飲食業の店舗を運営する身として私はお客さま方に、仲間とともに食事やお酒を楽しみ、よい時間を過ごして嫌なことを忘れ、ストレス発散をして、気持ちよく眠っていただきたい。人を元気にすること、それが飲食業の意義だと考えています。

委員なにか活性化の支障となる問題はございますか。


浜松は工業の街です。それゆえに、発想の根本に「工程の無駄をなくし、できるだけコストを下げる」といった、製造業的な姿勢があるように感じられます。
 なぜそこに言及するかというと、市街地活性化、つまり街中に人を呼ぶための観光的発想とは、空間や体験を買うことであり、無駄をなくす発想の真逆にあるものだからです。これから人口が減り、高齢化が進む社会であれば、無駄が発生するのは当然のこととして受け入れる姿勢が求められると思いますね。
 それと、コンパクトシティー化が進行して街中に介護施設や高齢者向け施設が増え、例えば自動車を運転できないお年寄りがタクシーで郊外の店に買い物に行く、という事例が見受けられるようになりました。私はこれを「都市型生活限界集落」化だと感じたのですが、高齢人口増加にともなう問題は今後増えていくのかもしれませんね。

委員現在の街おこし策として、プレミアム商品券の活用が進んでいますね。浜松でも「出世大名家康くんプレミアム付商品券」の利用がはじまっていますが、効果や影響をどう見ておられますか。

地元浜松の業者にとっては追い風である訳ですから精一杯生かすべきチャンスであることに変わりはありません。我々も「街中プレミアム企画」として、参加店舗で商品券を利用していただくと、抽選で豪華景品が当たるキャンペーンを実施しています。中心市街地の商店が一丸となってチャンスを生かそうとしているところですね。

委員浜松地域から何か"ブランド力"を発信するとすれば、どのようなことが思い当たりますか。


食の環境としてはかなり恵まれていますよ。海の幸、山の幸、なんでもある。素材そのものが美味しいので、食文化としての創意工夫は少ないですかね。例えば京料理は、港から遠く素材の新鮮さでは劣るがゆえに、細工や工夫を凝らした料理に仕立てる必要がある訳です。
 浜松には食材の宝庫たる浜名湖があります。浜名湖の環境をきれいに保つことは、浜松の食のブランド価値を高めることにつながるのかもしれません。

委員中心市街地をより多くの方に利用していただくための、施設の整備状況についてはいかがでしょう。

すぐにこれとは思い浮かびませんが、強いて言うならば、子育てが終わったくらいからの世代にも優しい、公園やトイレ、ひと休みできるベンチなどが充実していれば、街のやさしさを感じることができる。そんな気がしますね。

委員最後に今後の展望についてお伺いします。


はじめに申しましたように今後10年程度については楽観している部分がございますので、私は現在65歳ですが、70歳までには1つ1つの店舗を分社化してそれぞれの社長を任せられるよう、若い人を育てたい。これを目指して日々切磋琢磨して欲しいですね。自分の引退についてはまだまったく決めていないのです。
 街の将来については、人口減少時代にあっても商店主や地主たちが力を合わせれば、面白いこと、パワーのあることができるはずだと考えています。協力し合って活性化のビジョンを実現していきたいですね。
 「商い」で大切なのはいつも「人」です。人に感謝し、人を大事にすることを忘れずにいたいと思います。

委員インタビューを通じて御園井社長の中心市街地活性化にかける思いを実感することができました。本日はありがとうございました。

ズームアップインタビュー後記
久しぶりに出会った"親方"

 7月号の取材で浜松市の日本料理みそのグループ代表取締役御園井 克旨(みそのい かつよし)氏とお会いし、氏のお人柄と、仕事への情熱に触れることができました。
 現代にも通じる職人魂、カンボジアまで跳んで行ってしまう情熱、……建設業界では珍しくなりつつある現状です、今我々は、若手の育成、技術の伝承に苦慮しています。ゆとり世代育成して、培ってきた技術を如何に伝えるか、ある意味で重大な岐路に立たされています。
 親方自ら市内の学校を回って若手を陥入し、寮に住まわせて一から指導する、一人前になったら城を分け与える。当たり前のことが建設業会では通じなくなってきてしまいました。難しい工法や、高度な技術、危険な作業等は確かな技量の職人の手によって成されていたことを忘れかけていました、親方にお会いし我に返った思いで、早速時間を割いて種々に技術の習得時間を設けて取り掛かりました。

H・H

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