「観光や防災を含めて道路や港湾など、伊豆の未来展望について、平成28年4月に静岡県文化・観光部伊豆観光局長に就任した望月宏明氏に話を伺った。
(聞き手:佐野茂樹 静岡県建設業協会 総務・広報委員長)

局長 4月に就任してから、思ったことですが、各観光地域に行くと、居住圏と観光圏を区分して、観光業者が見せたいものだけ、来訪者に提供している状況が多く見受けられます。
 伊豆には、あまり知られていない、いい所や誇れる物がまだまだたくさんあると思う。できれば、地元の方々が誇れるもの、大切にしている物やお祭りなどを一緒になって、磨き、盛り上げて、住まう人の誇りにしてほしいし、それを来訪者にも見たり、体験していただくことにより、来訪者も共感し、感動や憧れになればと考えています。地域の人たちが違和感なく参加できる行事、そんなことを広げていくことができればと考えています。
 伊豆では一泊2日の滞在がターゲットになっていますが、私はもっと泊まっていただきたい。一日目は東伊豆、二日目は西伊豆の夕日を見るのもいいが、もうちょっと伊豆半島に滞在していただくことができればいいなと思っています。良いものを見るだけでなく、体験とか歴史に特化したいろんな切り口を作り、ルートを作って回れるようなものにできないか、そこに滞在が入っていけるようにできないかというのが一つの大きなテーマとなります。 地方港湾に寄港するクルーズ船などに観光客が集まるように。

望月宏明 静岡県文化・観光部伊豆観光局長
▲望月宏明 静岡県文化・観光部伊豆観光局長

委員 昔から伊豆はひとつと言われていますが、私どもは十年来伊豆はひとつひとつだと言ってきている。修善寺があり、熱海、長岡、下田がありバラバラなんですね。ひとつにまとまらないので活性化につながらない。

局長 私もこの3カ月でそのことは感じてきています。ただ、川端康成の「伊豆序説」で出てくる文で、「伊豆は詩の国であると、世の人はいう。伊豆は日本歴史の縮図であると、或る歴史家はいう。伊豆は南国の模型であると、そこで私は付け加えていう。伊豆の海山のあらゆる風景の画廊であるとまたいうことも出来る。伊豆半島全体が大きな公園である。一つの大きい遊歩場である。つまり、伊豆は半島のいたるところに自然の恵みがあり、美しさの変化がある(一部抜粋)」というものがあります。

 これが原点で、美しい伊豆創造センターでは、グラウンドデザインになっているベースが、美しい伊豆なんです。美しいって何かというと「詩の国」であり、「日本の縮図」、「南国の模型」、「大きな公園」なんですね。こういうのが全部味わえるのが伊豆なんです。知事も推奨していますが。これらを具現化、実現化していきたいと思っています。

 そこで防災の話ですが、防波堤の高さだとか、観光面でマイナスとなる話もありますが。

局長室に掲げてある伊豆の
▲局長室に掲げてある伊豆の"原点" 川端康成「伊豆序説」より

委員 南海トラフや神奈川からの地震に対しても津波高は心配ですね。また、土砂災害もあります。伊豆の土地は脆弱です。そこに観光道路が防災道路となれば違いますね。

局長 おっしゃる通りですね。渋滞すると分かっていれば出掛けないですからね。伊豆縦貫道が出来た後に肋骨となる道路が出来れば回遊できる観光客が出てくるはずです。滞在型の観光客にとっては肋骨道路はなくてはならないものでしょう。

委員 鉄道も下田で止まり、修善寺で止まる。この間が繋がることができないか。沼津、三島、熱海から伊豆を一周することができれば、温泉巡りもできます。

局長 私もそう思いますが、実はハイウエイバスが新宿から修善寺まで来ています。それがもうちょっと南に伸ばせないか。

委員 修善寺から下田までの道路事情が悪すぎですね。だからバス会社も敬遠するんでしょう。

局長 どうやったら車で回遊できるのかが大きなテーマです。市町の方と話をさせていただく中で、単にトイレを補助金で作るのではなくて、景観整備性で広域的に計画を立てていくようにした方がいいのではないかと思います。道路整備などは皆さんと協力し合いながら進めた方がいいと思います。

望月局長をインタビューする佐野委員長(左)
▲望月局長をインタビューする佐野委員長(左)

委員 国は、下田まで縦貫道を早く通す最重点としていますが、それでは遅いと思います。

局長 肋骨道路は縦貫道と同時進行で進めていけるくらいの計画でなければいけないと思います。南伊豆や西伊豆は車しか頼るものがありませんから。

委員 伊豆全体の人口が少ないのも問題です。静岡などの政令都市に負けてしまう。単品、単発の要望ではだめだから、広域でハード要望をしないと負けてしまう。道路整備や港湾整備もすべて競争です。

局長 伊豆は7市8町ですが、面積的には浜松市と同じくらいです。伊豆半島をひとつの行政区とみなせばいろんなことができる。伊豆半島全体で考えていく。伊豆でずっと住み続けられるような体制づくり、それは観光だと思いますが、観光に連携した製造業の発展など、子どもや孫や住んでいけるまちづくりが必要だと思います。
 6月24日からはホテル旅館若手経営者とランチミーティングをしています。また、観光業だけでなく、他業種の方々とも話ができればと考えています。皆さんと会う中で一つでも連携して新しいことができればと思います。

望月局長をインタビューする佐野委員長(左)

委員 伊豆には34漁港あります。これらの漁港が海産物を連携し合うことができれば素晴らしい事だと思います。

局長 海から見た富士山とか、各漁港が連携して何かできないか、それができれば広がっていくはずです。国道223号はまさに非日常の体験になります。食材についても伊豆はいろんなものがあります。わさびにしてもしいたけ、みかん、いっぱいあります。日本のものはほとんどあります。

委員 たとえ人が増えていってもなぜ潤っていかないのか。国立公園など制約があってできないこともたくさんあるのでは。

局長 伊豆ではやはり観光が大事なんですね。ただ人が通り過ぎていくだけでは地域は潤っていかない。生産性や所得などが地域づくりに繋がってくることになる。その当たりを含めて皆さんと話をしていけたらと考えています。
 伊豆縦貫道が出来てくると物流の話が出てくるはずです。工業団地が出来るのであれば、雇用が生まれる。持続可能で儲け続けられる産業づくりができればいいんですが。

委員 伊豆には絶対的な温泉がたくさんあります。これが産業づくりに繋がれば。

局長 伊豆版温泉効能番付ができれば面白いでしょう。そういうのを表に出していければ世間の認知もさらに深まるのではないか。

委員 伊豆担当副知事もいらっしゃるので、今後に期待したい。

局長 皆さんと会うために、伊豆を回らないと、現場を見ないと、書類だけみていても分からないことが多いですから。長い目で見てもらっていただければと思います。

▲TOP