株式会社杉浦組 代表取締役 杉浦政紀社長
モデルは左からマリリン・モンロー、火野正平、吉永小百合 |
今にも動き出しそうなほど生き生きとした表情。思わず見入ってしまう眼の力。風を感じさせるような動きのある髪の毛。これがひと筆ずつ、鉛筆で描いた絵だと聞いて驚かされました。「写真を超える絵を描きたい」と趣味の鉛筆画を楽しんでいる、杉浦組の杉浦政紀社長を紹介します。
自宅アトリエにて |
意外にも鉛筆画を始めたのは最近とのこと。「5年前のある寒い日。外に出るのが嫌で、手元にあった小さなスケッチブックと鉛筆で似顔絵を描いて過ごそう、と思ったことがきっかけでした。誰でも知っている顔を描いてみようと、マリリン・モンローを描いてみましたらこれが面白い。描きたい顔が次々に出てきて、初めの頃は週に2枚ペース、5年で200枚ほどを描きました」。
杏をモデルにした鉛筆画の描き進め方 |
「完全に自己流」という描き方がとても興味深いところ。「これだという写真を見つけると、パソコンで12×12マスの罫線を写真に載せます。これで座標を捉えて、輪郭をおさえ、黒い部分に筆を入れていきます」。設計事務所で図面を作成した経験を持つ杉浦氏ならではの精緻な作業です。使用するのは製図用の0.3mmシャープペンの2Bと鉛筆の4H~8B、紙は一番目の細かいBBケント紙、大きさは13.5cm×17.5cm。筆を立て、薄く薄く塗り重ねるように描き進めます。1日に1時間ほど集中して描き、1枚に最長19時間かけたことがあるそうです。「自分のペースで期限を決めずに描くことと、お酒を飲んだら描かないということ、男女交互に描くことは決めているんです」。
鉛筆画を見せながら取材に応じる杉浦氏(右) |
奥様に「あまり費用のかからない趣味を見つけたね(笑)」と喜ばれたそうですが、鉛筆画は描く楽しみに止まらず、コミュニケーションの広がりにもつながっているようです。「誰でも知っている顔なのでお見せしながら話が広がりますし、気に入っていただければ絵の写真カードをプレゼントもしています。ブログやフェイスブックで同じ趣味の方と知り合い、作品を生で見たくなって遠方の個展を訪れることもあります。自分でも個展を開きたいと考えていますが、やるならしっかりと時間をとれるタイミングで、と思っているところです」。
個展の開催も視野に描き続ける |
最初は「10年で1000枚」と枚数を目標に描き続けていたそうですが、いまは「もっと写真に近づけたい、さらに写真を超えたい、という気持ちが強くなってきました。光やにおい、眼力など、形を超えたものを絵に乗せて表現できれば嬉しいですね」と、鉛筆画の楽しさを表現してくれました。
最後に教えてくださったのは、鉛筆画に必要な3つの力。「観察力と、集中力と、忍耐力。これさえあれば、どなたでも鉛筆画を楽しめると思います」。