国土交通省が推し進めるi―Construction(アイコンストラクション)の一つであるUAV(無人航空機)技能者教育を実施し、ICT土工への対応を進める富士教育訓練センターの菅井文明専務理事に今後の展開や、同センターが構想するICT土工への対応についてお話を伺いました。
(聞き手は佐野茂樹総務・広報委員会委員長、三尾祐一副委員長)
▲インタビューする佐野委員長と三尾副委員長 |
■UAV技能者の訓練育成ニーズが加速
国土交通省ではICT土工など、情報通信技術(ICT)の全面的な活用施策を建設現場に導入することで、建設生産システム全体の生産性向上を図るi―Constructionを推進しており、2016年度中に直轄工事で一般土木A、Bランクの業者が受注する予定価格3億円以上の工事はすべて、ICT施工を標準化する。
UAV技能者訓練育成の趣旨を教えてください
ICTの本格的な取り組みは当センターの中心テーマです。社会インフラの老朽化対策として、橋梁やトンネルなど構造物の点検・修理などの事業は新設工事以上の事業量の拡大が見込まれています。さらに集中豪雨や地震など大規模な災害が多発する時代となり発災時の緊急調査の必要性が高まっています。①ICT土工におけるUAV測量、出来形調査②社会インフラ、特に橋梁などの構造物の点検・修理業務③大規模災害の発災時における緊急調査業務―の3分野で建設業向けUAV技能者の訓練育成ニーズが増加すると想定しており、現在は建設業向けUAV技能者教育に必要な技能の範囲や水準を調査するため定期的に勉強会を開催しています。
同センターでは、2016年6月~8月までに東京都内で「UAV技能教育に係る勉強会」を開催。現在も月1回程度のペースで建設業界のニーズ、発注者の意向などの調査を目的に勉強会を開催しています。
▲最新UAV機器の操作を体験する佐野委員長と三尾副委員長 |
■朝霧経営塾を4年ぶりに開催
10月3~4日には「朝霧経営塾2016」を4年ぶりに開催。これまでの勉強会の成果を発表するとともに、i―Construction推進の第一人者である立命館大学の建山和由教授、UAVによる震災復旧を実践するトライポッドワークの佐々木賢一社長、橋梁やトンネルの点検用ドローンの研究開発に取り組むNECの西沢俊広パブリックSC統括本部新事業推進部マネージャーらによる講演と意見交換会、シンポジウム、最新機器のデモンストレーションが行われた。当日は多数の建設企業経営者が来場し、精力的に情報収集に当たっていたという。
▲今後の展望を語る菅井専務理事 |
■若い世代を中心にUAVの普及進める
2015年9月12日に開催された政府の未来投資会議で、石井敬一国土交通大臣が年までに建設現場の生産性を2割向上させる目標を打ち出しました。建設システム全体の生産性を向上させるICTを普及させていくために今後どのような取り組みを行っていきますか
測量など調査・設計段階施工、維持管理に至るまですべてのプロセスで3次元データを扱うICTを推進していくには、川上段階にある測量でUAVを使いこなすことができる技能者の養成など、業界を挙げた教育訓練が不可欠です。また、UAVやICTを活用する建設現場の映像は、若い世代を中心に建設業のイメージアップにつながります。今後も、引き続き業界のニーズを調査していき、また多くの方に関心をいただけるようなシンポジウムなどのイベントを開催していきます。2016年度内には建設業向けUAV技能者訓練育成基本教育を行い、2017年度からは一人ひとりに合わせたオーダーメードの応用教育を実施していきます。
■4月に新施設が開校
建て替えを進めていた富士教育訓練センターの共用棟と新宿泊棟が2016年12月に竣工し、今年4月にいよいよ開校する。これまでに同センターは約16万人の卒業生を輩出するなど建設産業の担い手の育成を支えてきた。2016年10月には石井啓一国土交通大臣が訪れ、中国からも不動産、新建材、セメントの各業界団体で構成される浙江省建設産業視察団が訪問するなど国内外を問わず広く注目されている。建設産業界の技能者や技術者を育成する国内最大拠点として、今後益々役割が大きくなっていくだろう。
▲一日体験入校中のおかずクラブの二人 |
■国土交通省が吉本興業グループとコラボ
国土交通省と吉本興業グループが建設業の女性活躍を応援するキャンペーンの推進役として2016年8月に結成した「おうちクラブ」。メーンキャラクターを務める女性芸人「おかずクラブ」(よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属)が10月3日にセンターを訪れ、一日体験入校をして建設機械運転や鉄筋、左官などの技能体験、研修中の女子研修生との懇談を行った。