梅ヶ島温泉(うめがしまおんせん)は、全国屈指の麗水を育む安倍川の最上流域に位置する静岡市の秘境の温泉で、開湯1700年の歴史を持つ由緒ある温泉です。

 そして、安倍川の最上流域には、梅ヶ島温泉の他、新田(しんでん)温泉、金山(きんざん)温泉、コンヤ温泉があり、これらを総称して、「梅ヶ島温泉郷」といいます。

 そんな「梅ヶ島温泉郷」が、昨年(2017年)5月、環境省より「国民保養温泉地」に指定されましたので、ちょっとウォッチングしたいと思います。

 ところで、「国民保養温泉地」って何でしょうか?

 環境省のウェブサイトによると、国民保養温泉地とは、温泉の公共的利用増進のため、温泉利用に効果が十分期待され、かつ、健全な保養地として活用される温泉地を「温泉法」に基づき、環境大臣が指定するものだそうです。

 昭和29年から指定が始まり、今回まで全国で97か所が指定されており、ちなみに静岡県では、伊豆の国市と函南町にまたがる畑毛(はたけ)温泉に次いで2か所目だそうです。

温泉街
温泉街

 ここで、ちょっと梅ヶ島温泉の概要についてご紹介します。

 まずは歴史から。梅ヶ島温泉の発見は、諸説あるようですが、今から1700年前の仁徳天皇あるいはその一代前の応神天皇のころと言われています。

 湯治場としてよく知られるようになったのは戦国時代で、その当時、武田家の領地ということで、武田信玄の隠し湯として使われたこともあり、近くに金山があった時代もあり、「黄金の湯」と呼ばれていたそうです。

 古文書による湯治記録では、徳川家康公や秀忠公の名が見られることから、江戸時代にはかなり有名な温泉地であったことがうかがわれ、その後も、勝海舟、清水次郎長、乃木希典など、数多くの著名人が来られたようです。

 次に、温泉の泉質と効能ですが、泉質は、主に硫化ナトリウムを多量に含む単純硫黄泉です。少しぬるっと肌にまとわりつくようなお湯で、湯上りには身体の芯まであったまり、肌はつるつるすべすべになります。

 そして効能は、神経痛、リウマチ、慢性皮膚炎、慢性婦人病、創傷、糖尿病、関節痛、慢性消化器疾患、打撲、捻挫、疲労回復などに効くようです。

 まさに心身ともに癒される温泉ではないでしょうか。

現在、梅ケ島温泉街には、旅館・民宿が11軒あり、いずれも四季折々の豊かな自然を感じながら、温泉と地元のお食事でゆったりとくつろげるお宿です。また、2軒の日帰り温泉専門があり、日帰りでの観光の方でも良質なお湯を十分に堪能できると思います。さらに、食事処・売店が1軒あり、地元の食材を使った料理が楽しめます。(温泉街の地図は梅ケ島温泉散策マップをご覧下さい。)

温泉街対岸より
温泉街対岸より

 ところで、温泉街の前を流れる安倍川に赤い橋がかかっており、その橋を渡ると、「おゆのふるさと公園」という処があります。

 この公園の中に、梅ケ島温泉の「源泉洞窟」があり、現在、その源泉を静岡市が管理しており、温泉を各宿や施設に供給しているそうです。

 ちなみに、この公園には以前、市営浴場があったそうですが、平成11年に梅ケ島新田(黄金の湯)に移転新築され、公園として再整備されたそうです。公園には湯之神社や湯滝などもあり梅ケ島温泉の歴史を感じることが出来ます。

おゆのふるさと公園① 移転された市営温泉
おゆのふるさと公園①
移転された市営温泉
おゆのふるさと公園②
おゆのふるさと公園②

 さて、周辺の観光スポットといえば、まず梅ケ島七滝(藤代、宝月、赤水、安倍の大滝、温泉湯滝、三段、鯉ヶ滝(恋ヶ滝))が挙げられます。

 特に「安倍の大滝」は、「日本の滝百選」にも選ばれた素晴らしい景勝地です。また、最近では、「赤水の滝」が紅葉の頃(11月)にライトアップされ、幻想的な風景が見られます。

 また安倍川上流にかかる吊り橋も見どころの1つ。山間ならでは風情のある吊り橋を見つけたら是非渡ってみて下さい。

 さらに健脚な方は、安倍峠・八紘嶺への登山やトレッキングで大自然を満喫したり、ご家族なら「魚魚の里」でやまめ釣りを楽しんでも良いのでは。

安倍の大滝 赤水の滝ライトアップ 安倍峠
安倍の大滝
赤水の滝ライトアップ
安倍峠
出合いの吊り橋
出合いの吊り橋

 最後に個人的な意見ですが、一昔前までは、梅ケ島温泉まで行く道が非常に悪く、すれ違いも困難な箇所が多々あり、到着までの時間もすごく掛かった様に記憶しています。しかし現在は、道路が大変整備されており、時間もかなり短縮し、本当に行き易くなりました。

 お湯については、「これぞ温泉」という程の"最高"の温泉だと思いますので、今回の国民保養温泉地の指定を契機に、「秘境の温泉」という雰囲気を残しながら、さらにインフラ整備や周辺整備を行い、「静岡の湯布院」のような観光地として、もっと多くの方に訪れてもらいたいと願っております。

梅ケ島温泉散策マップ
梅ケ島温泉散策マップ(クリックで拡大)

【梅ヶ島温泉公式サイト】
http://www.umegashima.net/