今年4月、伊豆半島は国際教育文化機関(ユネスコ)によって地質学的遺産が国際的価値を有するとして、「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されました。認定が保留となった平成27年9月から約2年半越しの悲願達成で地元からは喜びの声が上がっています。関係自治体や事業者は、普及啓発の推進やイベントの開催、工夫を凝らした事業やビジネスを展開するなど、世界認定を弾みに新たな観光需要の創出や地域活性化に大きな期待をかけています。今回は伊豆半島ジオパーク推進協議会事務局の高橋誠事務局長補佐に伊豆半島ジオパークの魅力についてお話を伺いつつ、認定を機に来場者数が大幅に増加した伊豆半島ジオパークミュージアム「ジオリア」を紹介していただきました。
(聞き手:静岡県建設業協会総務・広報委員会 佐野茂樹委員長、三尾祐一副委員長)
インタビューに応じてくださった高橋事務局長補佐 |
4月17日にとうとう伊豆半島ジオパークが世界認定されましたね。認定を知った当時はどのようなお気持ちでしたか?
今回は手ごたえがあったのでいけると思っていましたが、認定が決まってとりあえずほっとしました。決定の瞬間は、私はいち早く決定の情報を受け、事務局長からジオリアで待っている関係者の皆さんに世界認定されたことを伝えてもらうという準備をしていたのですが、日本ジオパーク委員会の超速報で会場にいた方に決定情報が同時に伝わってしまい、「やられた」といった感じでした(笑)
フライングされたというわけですね(笑)
インタビューする三尾副委員長(左)と佐野委員長(右) |
伊豆半島の地質の価値というのはどのようなところにあるのでしょうか?
本州で唯一、フィリピン海プレートにのっている伊豆半島は、かつて南洋にあった火山島や海底火山の集まりでした。プレートの北上に伴い火山活動を繰り返しながら陸域が拡大し、本州に衝突して半島化しました。
フィリピン海プレートは、現在も本州がのっているユーラシアプレートの下に沈み込んでいます。それらのプレートの複合的な影響があって、伊豆半島は二つの活動的火山弧が集中する世界で唯一の場所になっています。プレートの動きは現在も伊豆の大地を本州に押し込み続けていて、地震などの地殻変動によりさまざまな大地の変化が起こります。こうした二重三重の地質学的特異性が、多くの美しい景観や温泉を有する現在の伊豆半島を形成しています。
伊豆半島の成り立ち(写真提供=伊豆半島ジオパーク推進協議会) |
高橋さんは伊豆半島ジオパーク推進協議会の立ち上げから携わっていたそうですね。
はい。静岡県観光政策課から派遣され、何もないところから事務局をつくるところから始まり、当時は鈴木雄介専任研研究員と事務局があった伊東市役所の職員1人のわずか3人が中心となり、ロゴマークの作成、ウェブサイトの立ち上げなど多岐にわたる業務を行っていました。そこからいったん県に戻り、平成28年度に再び派遣されてきたときには事務局が伊豆市修善寺総合会館に移転し、人数は11人の組織となっていました。その中で事務局長補佐を担当し、そこでは仕事の割り振りや自治体との調整役や、全国大会の運営、ユネスコへの認定申請にも携わりました。
世界認定の影響でジオリアの来場者数が増えているそうですね。ジオリアの魅力を教えてください。
ジオリアは平成28年4月に開館した施設で、開館2年(平成30年8月現在)で3万人以上の方にご来場いただいています。特に世界認定を受けてからは一日の来場者数が2倍から2.5倍程度になりました。
ジオリアには伊豆の姿や成り立ちが学べるシアターやプロジェクションマッピングがあります。シアターは伊豆半島の成り立ちを約7分で学べます。2000万年におよぶ壮大な大地の物語を知ると伊豆の風景を見る目が変わります。プロジェクションマッピングは、伊豆半島の立体模型の上に地質や見どころ、温泉分布など伊豆各地の魅力や特徴を映し出します。ほかにも子供たちの人気を集める顕微鏡コーナーや、川の流れによる地形の変化を探る水理模型のコーナーなどがあります。
プロジェクションマッピング | 水理模型 |
最後に今後の展望についてお聞かせください。
世界認定されて終わりではなく、ジオパークがどういうもので何のために地域がやるのかを皆さんに理解してもらう必要があるし、それぞれに考えてもらう必要があります。またインバウンド対策や広報にも力を入れるとともに、子ども向けの教育活動を長くやっていける体制をいかに作っていくかも大切です。
ユネスコからも改善点などを指摘されており、それに対応しながら次の認定や今後もジオパークであり続けられるような体制の整備を進めていきたいと考えています。
今後について語る高橋さん |
ジオリアでは伊豆半島の成り立ちや噴火・侵食など伊豆の大地から、地球の動きの一端を見ることができ、河川の仕組みの観察や、直接標本に触れるコーナーなど家族連れでも楽しめるミュージアムになっています。これを機に一度足を運んでみてはいかがでしょうか。