「子どもたちの歓喜あふれる街、熱海を取り戻したい」

(有)西海造園土木
代表取締役 西海 尊志氏

 熱海を舞台にした特撮映画「機動巨人ラインアスロック」を制作し、平成30年に第1話をYouTubeで公開するとともに防災イベント「第1回集まれ!あたみ防衛隊」を開催し、地元市民の反響を呼びました。令和元年11月には「第2回集まれ!あたみ防衛隊」を開催して第2話を公開した他、熱海建設業協会らが開催した土木の日イベントにもラインアスロックが駆け付け、子どもたちの人気を集めるなど「熱海のヒーロー」として活躍の幅を広げています。建設業を営む傍ら、映画製作やイベント開催に携わる西海造園土木の西海尊志社長にお話しを伺いました。

西海尊志社長
取材に対応してくださった西海造園土木の西海尊志社長

特撮に興味を持ったきっかけを教えてください。

 幼いころは家のテレビで鉄腕アトムや輸入アニメを楽しんでいました。昭和37年に発表されたキングコング対ゴジラを熱海東宝(現国際観光専門学校)で見て、東宝の目の前にある熱海城が両怪獣によって破壊されるシーンに衝撃を受けました。それと同時に特撮に関心を持つきっかけになりました。昭和40年代はウルトラマンシリーズが次々と放映され、当時の熱海後楽園で開催されていたウルトラマンシリーズの怪獣ショーを毎回見に行くなど特撮やアクションへの興味はますます深くなり、いつか自分で特撮映画をつくるという憧れが強くなっていきました。

大学時代には都内の大手特撮プロダクションで働いていたとか

 特撮映画に携わるという夢はありましたが、家業の土建屋を継がなくてはならないので、せめて学生時代は都内で特撮関係のアルバイトをしたいと思っていました。高校は日本大学三島高校に通い、そのまま日本大学に進学する予定でした。学部は都内にある理工学部を希望していたのですが、選択肢が福島県郡山市の工学部もしくは千葉県津田沼市にある生産工学部しかなく、これではアルバイトが難しいと考えたので一度短大に進学し、2年後に理工学部に編入して晴れて東京に出てくることができました(笑)。アルバイトでは怪獣ショーやヒーローショー、怪獣の修理などに携わることができて、すばらしく充実した日々を過ごしていましたね。

家業を継いだ後も特撮に関わっていたそうですね

 大学を卒業して熱海に帰郷しましたが、特撮業界にいたことが地元に伝わり度々ヒーローイベントを依頼され取次紹介をしていました。そして30代になったころに本格的なヒーローショーを依頼され、アマチュアのショーチームを結成しました。平成11年開催の初川納涼市にオファーをいただいてショーを開催したところ、これが大変好評で「西海の怪獣ショーがないと人は集まらない」といわれるほどでした。そこから初川納涼市が終わる平成22年まで毎年参加しておりました。その時に熱海独自のヒーローを創るため、特撮を手掛けていた友人の荒井豊さんが率いるラピッドプログレスの協力を得て「ラインアスロック」が誕生しました。しかし、そのラインアスロックも納涼市と共に活躍の場がなくなってしまいました。

そこから7年後に映像化

 荒井さんからお話しをいただき、ちょうど私が60歳の還暦を迎えたという事でその記念に映画をつくることになりました。そして平成30年10月に機動巨人ラインアスロック第1話が公開されました。評判が良く、皆様の力をお借りしながら第2話を制作し、翌令和元年11月に第2話を公開しました。

ラインアスロック第1話
https://www.youtube.com/watch?v=dUMoO-nTLO8
ラインアスロック第2話
https://www.youtube.com/watch?v=6mE9XFNP4ew&t=21s

防災イベント「あたみ防衛隊!」を開催へ

 第1話の映画製作中に併せて、「熱海の安全安心と子供たちに夢と希望を!」を標榜し、非営利任意団体で「集まれ!あたみ防衛隊」を設立しました。イベントは熱海の子どもたちがヒーローと怪獣、警察、自衛隊、建設車両などを通じて楽しみながら安全防犯意識を学んでもらうことを目的としたものです。一昨年は親水公園レインボーデッキでラインアスロックショーや白バイ・ミニ消防車乗車体験などを行い、イベントは大盛況でした。昨年も同様のイベントを計画していましたが、台風で延期になり、11月に起雲閣で行われた熱海怪獣映画祭とコラボして第2話の公開とラインアスロックショー、作中に登場する怪獣名の発表を行いました。

仕事の傍ら映画製作・イベントを続けるのは大変なのでは

 この活動を続けているのは今の熱海の繁栄を一時的な流行に終わらせたくないという強い気持ちがあります。熱海はバブル崩壊とともに勢いを失ってしまいましたが、数年前から回復の兆しを見せ、現在では観光客で賑わいを見せています。しかし、現在の繁栄は熱海に利益を求めて外部から業者や個人が群がって生じた一時的なものだと危惧しています。私が8歳のころの熱海と重ね子供視線で見た場合、ずいぶんつまらない街になってしまいました。また、そのくらいの子どもがいるファミリー層が楽しむこともできないと思っています。私は自己満足や利益のためでなく、昔のような子どもたちの歓喜あふれる街である熱海を取り戻すために今後も活動を行っていきます。

最後に、今後の展開を教えてください

 これまで通り地元の熱海に寄り添った活動をしていきますし、今後第3話の製作を進めていきます。乞うご期待ください!

熱海おさかなフェスティバル 熱海おさかなフェスティバル
昨年11月に行われた熱海おさかなフェスティバル(写真提供=熱海ネット新聞)
ラインアスロックに登場する怪獣アタギラーと記念撮影 怪獣・熱海龍アタギラーを命名した長野県佐久市の平林尚真君
ラインアスロックに登場する怪獣アタギラーと記念撮影 怪獣・熱海龍アタギラーを命名した長野県佐久市の平林尚真君