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 最近、観光業界で注目されているのが「ニューツーリズム」だ。「ニューツーリズム」とは、これまでの物見遊山的な観光旅行とは異なり、自然や特産品、伝統などの地域特性を活用した、交流や体験に重点を置いた旅行形態である。全国各地でも、農山漁村での自然交流などの「グリーンツーリズム」、自然環境・歴史文化など地域固有の魅力を体験する「エコツーリズム」、「フードツーリズム」など、地域の特色に沿ったバリエーションに富んだ取り組みがなされている。
 大井川流域の特色である緑茶、奥大井の自然、SL…。様々な魅力の中でも、緑茶をはじめとする「農業」にスポットを当て、「飲む・食べる・買う・体験する」体験型フードパーク「KADODE OOIGAWA」が、2020年秋に、地域の玄関口の新東名島田金谷IC周辺に開業する。事業は、大井川農業協同組合・島田市・大井川鐵道(株)・中日本高速道路(株)の4者が連携して運営する。
 農業と観光を活用した地域交流により、新たなランドマーク施設を目指す「KADODE OOIGAWA(株)」代表取締役の小林正二氏に、施設建設の経緯や概要、今後の展望について聞いた。
(聞き手:静岡県建設業協会総務・広報委員会 佐野茂樹委員長、三尾祐一副委員長、梶山基委員、島田建設業協会広報委員会 古川賢吾副委員長、山本利彦委員、川本幸男事務局)

外岡達朗所長

委員 施設建設の経緯を教えてください。

外岡 当初は、国道473号の拡幅事業と島田市の賑わい拠点整備事業が計画される中で、JAの施設の移転を絡めた事業の検討会などを経て、18年6月、島田市や大井川鐵道、中日本高速道路の4者が、地域のこれからの在り方について考え、基礎となる契約を結びました。大井川流域の農業振興や地域の活性化に向け、かつ、観光のハブ施設として、観光客を受け入れる玄関先となる役目を果たすことを期待しています。

委員 行政や民間との連携について。

外岡 農協が、行政や民間と一緒になって会社を立ち上げることは、全国的に見ても珍しいケースです。農協が進める自己改革の中の新しいスタイルとして、またはモデルケースとして、農協の進む一つの方針として示されればと思っています。

インタビュー風景
小林社長

委員 施設の整備スケジュールは。

外岡 20年秋の開業を予定し、19年10月に着工しました。順調に進めば、20年9月の完成引き渡し、11月のオープンを目指しています。敷地面積は約1万4825平方㍍、サッカーコート2面程の広さで、施設全体の延べ面積は約5130平方㍍です。「マルシェ」と呼ばれるファーマーズマーケットを中心に、レストラン、カフェから観光案内所を含めた複合施設として整備を進めています。駐車場は現段階で約550台分を用意する予定です。

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マルシェ棟 カフェ棟

委員 施設のコンセプトは何ですか。

外岡 農業振興、地域振興です。静岡県の中間部で、交通の結節点である立地を踏まえ、農業と地域交流の新たなランドマークにしていきたいです。上質な地域の魅力を発信、体験する出会いの場であるとともに、「緑茶と農業と観光の体験型フードパーク」をテーマに、訪れる方々や農産物の新たな「門出」となる施設を目指します。ハブ施設として運営していくためには、地域の皆さんとの繋がりが生命線になってくると思います。

委員 お茶はどのように提供する予定ですか。

外岡 試飲は一切せず、飲みたい人に購入して飲んでもらおうと思っています。味には絶対の自信もありますし、「お金を払ってでも飲んでみたい」と思ってもらえるような仕掛けを考えていきます。

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お茶の提供方法イメージ

委員 観光客、地域住民に対してそれぞれ意図することは。

外岡 観光客の方々には、「農業を体験していただく」「農業する場を見ていただく」「農産物を食べていただく」「農家の方とコミュニケーションをとっていただく」ことで、地域を知っていただこうと思っています。地域の方々には、「ここに帰ってきたくなるような、ふるさとの良さ」に気付いてもらえる施設にしたいです。農家・地域住民・観光客の3者が主役となり、毎日行きたいと思ってもらえる、新しい情報が得られる要素を取り入れたいです。

委員 来場者数の目標は。

外岡 近隣では、焼津さかなセンターが約150万人、道の駅掛川が約83万人が年間訪れています。これらを考慮し、リサーチを重ねた結果、年間来場者数の目標は100万人に設定しています。富士山静岡空港では、訪日中国人の増加もあって、利用者は約71万人まで増えています。見学者数も約109万人いると聞いています。その人たちが次に立ち寄りたい施設として、PR活動をしていきたいです。

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レストラン・観光拠点棟とSL

委員 新東名高速道路からの一時退出・再進入について、道の駅「もっくる新城」のようなETC2.O導入の検討はしましたか。

外岡 ETC2.0を導入するためには、現在は明確な方向はありませんが、導入するとなれば、近隣住民と協議をしていかなければならない部分があります。当然、サービスエリア・パーキングエリア化という形になるので、閉店後でも24時間利用できるトイレを設置する必要があります。近隣住民の方々にとっては最適な場所であるように仕立てて行くように、現在は検討段階で、すぐにできるような状態ではありません。今後進展するようならば、住民の方々に向けて再度説明会を開き、承諾していただく、という段階を踏む必要があります。

地震防災センター
小林社長(左)と広報担当の鳴海麗氏(右)

委員 農業の振興という面で、施設をどのように活用していきたいですか。

外岡 持続可能な農業の未来を次世代に繋ぐための施設にしていきたいです。農業は高齢化、担い手不足が問題で、「農業は儲からない」といった話を耳にします。農業の魅力を若い人たちにどのように伝えていくかを考えています。KADODE OOIGAWAでは、農家の方が消費者の顔が見える場面を増やし、消費者のニーズをリサーチできる、レスポンスの良さなど、生産者と消費者のつながりを、販売面で生かしていきたいです。 JA大井川組合員の期待に応えられるような施設を作ります。

インタビュー風景 インタビュー風景
佐野委員長 三尾副委員長
地震防災センター
左から梶山委員、島田協会・古川副委員長、川本事務局長、山本委員

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