栗山社長
 

 牧之原市から2016年に廃校となった旧片浜小学校の施設を借り受け、”新たな教育・人づくりの拠点“として教育とまちづくり事業に取り組んでいる「株式会社マキノハラボ」。未来志向・共感・みんなでやろう・賢く使おう・まちづくりを経営理念とし、旧片浜小学校(牧之原市片浜1216ノ1、鉄筋コンクリート造3階建て2棟延べ2896平方メートル)改め「カタショー・ワンラボ」を拠点に、テナント・イベント運営やスマート農業事業などを実施。あらゆる世代の人が地域内外から集まり、地域と一体となって誰もが望ましい未来を創ることができる仕組みづくりに挑戦している。同社代表取締役の浅野拳史氏に、現在展開している事業などについて聞きました(聞き手:静岡県建設業協会総務・広報委員会委員長 佐野茂樹氏、同副委員長 三尾祐一氏、委員 鈴木徹氏)。

浅野社長

佐野委員長

三尾副委員長

鈴木委員

委員  会社の設立経緯など教えてください。

浅野  牧之原市がプロポーザル方式で募集した旧片浜小学校の施設利活用に応募し、提案の独立性や地域のコミュニティーづくりなどが評価され運営事業者に選定された。2018年に会社を設立、5年目になる。閉校になってまだ日が浅く、卒業生がたまに遊びにくるような地域に密着した施設となっている。社員はパート従業員も含め約20人。発起人で前代表の福代孝良氏の他、30歳~40歳代の地域の担い手4人の計5人が共同提案者で、私は1年ほど前に代表になった。少ないスタッフだが、施設と人材を生かして最大限に多角的事業を展開させてもらっている。

委員  実施している事業について、まず、テナント・イベント事業についてお聞かせください。

浅野  元々小学校なので空き教室が多数あり、現在はこれを利用したテナント事業として、テナントにシルバー人材センターやドローンの教習所など、現在11団体が利用しており、高齢者から小さな子どもまでがこの施設に集まってきている。ここでは、各テナントがそれぞれの事業を行うだけではなく、横のつながりを持って連携することで、相乗効果を生み出すよう取り組んでいる。
 イベント事業は、地域の担い手がビジネスを通してまちを元気にしていきたいという強い思いに応え、音楽フェスのミニイベントやフットサルを実施している。フットサルを始めるに当たっては、日本サッカー協会から天然芝生をいただき、中学生、高校生をはじめ地域住民約200人で植え付けを行いグラウンドを整備した。牧之原市は外国人も多く住んでおり、国際交流フットサルイベントも行っている。こうした横のつながりがまちにとっても良いことと考え、スポーツを通しての交流事業にも取り組んでいる。
 また、コロナ禍で疲弊する飲食店を支援しようと電子通貨と連携したサービスのWebサイトを構築した。オンラインで注文し、さまざまな店舗の料理のテークアウトが簡易にできるもので、Webサイトを通じて購入したお弁当・惣菜等の購入額の30%を地域通貨として還元した。最終的に30店舗の飲食関係法人などが参加した。

委員  スマート農業については。

浅野  農業にIoTを導入しようということで、茶業の低迷とともに新規就農者も減っている中、ITを利用して改善を図っていくことを考えている。農林水産省の「スマート農業実証プロジェクト」(2年事業)に取り組み、4年目に入っている。これまで、生産現場でさまざまなIT技術を試し、経営への効果を実証している。具体的には作業日誌をアプリに入力し、データを分析することで茶畑ごとの収益などの見える化をし、経営者に効率的な経営判断に寄与することができる。また、ドローンの活用による省力化など、しっかりとした管理によりブランドを確立し、さらに付加価値を付けて輸出も拡大していくことで売り上げ向上を目指す。昨年度からは、有機抹茶の輸出拡大に向けた中山間地域における「スマート農業技術の導入」による生産・加工・流通体制の構築について実証を進めている。

委員  宿泊・飲食事業については。

浅野  立ち上げ当初から宿泊・飲食事業は計画していたが、準備に時間を要し、約2年前から空き教室を宿泊施設として稼働している。大人数で楽しく泊まろう、子どもの時に学校でできなかったことをしてみようなど、全力で遊んでもらえるような特別な宿泊施設。大部屋と小部屋があり、現在、5人から50人程度の宿泊の受け入れが可能で、約6割が大学生、約3割が家族連れのグループなどと幅広い層の人に利用してもらい、残りは企業などのワーケーションの利用となっている。お客さんには飲食も大いに楽しんでもらおうと、地域の精肉店等から仕入れた食材でのバーベキューやたき火の手配をするとともに、無料で花火やドローン空撮などのサービスも提供している。他の宿泊施設で味わえない楽しい思い出が残るよう取り組んでいる。

委員  教育事業ではどのような取り組みをしてますか。

浅野  教育事業は大きく分けて二つある。一つは日本語教育で、文部科学省作成の外国人児童生徒の公立学校への円滑な受け入れに向けての日本語教育と学習支援を独自に展開している。また、成人に対しては職場で使える実用的授業を行っている。社会貢献的な事業であり、ボランティアのチームを作って、地域のコミュニティーと一体となるサポートをしている。
 もう一つは、プログラミング・情報教育。牧之原市からの委託を受けて小中学校での出張授業を行っている。簡単なプログラミングでパソコンを動かしたり、ドローンを飛ばしたりして、機械にどういう命令をすると、どう動くかなどを体験的に学んでもらっている。総務省の「地域IoT実装推進事業」(採択名・社会課題解決を通したプログラミング教育)において優良事例に選ばれ、GIGAスクール構想を背景に、ICT活用や情報教育の支援を実施している。

委員  今後も学校再編などにより廃校が増えていく傾向にあるが、こうした状況に対するお考えはありますか。

浅野  弊社は株式会社として経営をしつつも、どうしたら地域のためにもなり、会社のためにもなるか考えながら運営している。5年目になるが、現在の1校をなんとか形にして軌道に乗せ、その後、ノウハウを生かして事業を展開していきたい。地域の人たちと一緒に対話して実践することが大切であり、連携を図っていければと考えている。

教室

芝生グラウンド

遊んで泊まれる小学校 場所:静岡県牧之原市片浜1216−1
カタショー・ワンラボ

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