2019年(令和元年)9月14日に東名高速道路の静岡ICと清水ICの間に日本平久能山スマートインターチェンジ(SIC)が供用開始されてから3年が経過しました。このSICの現状について、中日本高速道路株式会社静岡保全・サービスセンターの谷野知伸所長にお話をお聞きしました。

SIC全景 ※1SIC入口
位置図 ※2平面図 ※3

 まず、このSICの概要について調べてみました。設置場所は、静岡ICから約3kmの大谷川放水路東側で、都市計画道路広野大谷線に接続されています。
 運用形態としては、東名高速道路本線へ直接接続する自動料金収受システム(ETC)専用のICで、上り・下りとも入口・出口があり、バスや大型トラックなど全車種通行可能な24時間運用「フルインター形式」です。
 特に、入口・出口共に2レーンの運用となっており、これは全国のSICでも数少ないとのことでした。また2レーンあることで、事故等によりETC機器の1台に故障があっても通行止めにすることなく運用できるメリットもあるようです。

月別交通量 ※4

 次に3年間の利用状況を見てみましょう。右表は月別の一日あたりの交通量ですが、供用開始以降、徐々に交通量が増えてきていることがわかります。これは新型コロナウイルス感染拡大による行動制限が緩和された影響もありますが、このSICが少しずつ周知されてきている表れでもあると思われます。なおこの交通量は、スマートインターチェンジの中では全国でもトップクラスの利用台数を誇っているようです。

曜日別交通量 ※5
車種別交通量・目的地 ※6

 曜日別日交通量を見てみますと、平日の交通量が多く、土日は少ないのがわかります。
 また方向別では東京方面、名古屋方面がほぼ半々であり、県内を目的地にしている利用者が約9割、県外は1割と少ない状況です(ちなみに県内の目的地で多いのは東京方面では沼津IC、名古屋方面では焼津IC)。

 これらのことから、このSICは日常生活での移動や業務での利用が多く、観光目的の利用が少ないのではないかと予想されます。
 そもそもこのSICの名称を「日本平久能山」に名付けたのは、当該地域周辺にある観光地をPRし、地域活性化につなげていく目的がありました。コロナ禍でやむを得ない部分もありますが、如何に静岡県外から観光客を呼び込むかが今後の大きな課題になっています。

 ちなみに、「日本平」は日本書紀や古事記に登場する有度山山頂の地域名称で、国の名勝地に指定されている静岡市を代表する観光スポットで、「久能山」は有度山南麓にある山で、2010年に国宝指定された久能山東照宮を有する静岡市有数の観光地です。

日本平山頂日本平夢テラス
久能山東照宮日本平と久能山を結ぶ日本平ロープウェイ
大谷・小鹿地区まちづくりエリア分け ※7

 ところで、このSIC周辺地区は、静岡市に残された数少ない非都市的平坦地で、平成25年3月に「静岡市大谷・小鹿地区まちづくりグランドデザイン」が策定されています。
 「活発に交流し、価値を創り合う創造型産業のまち」を目指すべきまちの姿とし、全体地区面積約125haを、交流施設エリア約20ha、居住エリア約18ha、工業・物流エリア約28ha、農業エリア約14ha(各エリア面積は公共用地面積を含まない)に分け、このSICの利用促進と共に、世界に存在感を示すまちづくりを推進しています。
 また事業の進め方は地区を分割して段階的に整備を進める形式をとっており、現在は、先行整備候補エリアの恩田原・片山地区及び宮川・水上地区において、土地区画整理事業として事業が開始しております(詳細はこちらをご覧ください)。

 最後に、谷野所長より「日本平久能山スマートインターチェンジは2019年9月に開通し、年々ご利用の台数は増加しています。物流や通勤などの目的以外にも、久能山東照宮や日本平ホテルなどの観光の窓口として、今後もより多くの皆さまにご利用いただけることを期待しております。」とのコメントを頂きましたが、今回の取材を通して、このSICが周辺地域のみならず静岡市のまちづくりにつながる役割は大きいものがあると実感しました。

整備事業が進む恩田原・片山地区

◆写真※1=提供:三井住建道路(株)、写真及び図表※2~6=NEXCO中日本東京支社静岡保全・サービスセンター提供
◆図※7=静岡市ホームページより提供