白輪園長

インタビューに答える白輪剛史園長

 2012年に日本最大級の爬虫類・両生類の動物園「体感型動物園iZoo」をオープンし、その後もカエル専門の動物園「KawaZoo」や野生のニホンザルと触れ合える施設「波勝崎モンキーベイ」などを次々に賀茂地域内に展開した白輪剛史氏。動物商を始めたきっかけや動物園の運営に携わる経緯などを交えつつ、その人となりや今後の展望などについて話を聞いた。

【聞き手】
下田建設業協会・広報委員会
 田中章委員長(下田市、丸三工業)
 和泉茂己委員(河津町、さくら建設)
 北村誠事務局長

委員  幼少期から動物はお好きだったのでしょうか。

山口  物心のつく頃から動物が大好きで、家にあった図鑑も「どうぶつ」の巻だけがボロボロになるほど読み込んでいました。反対に「乗り物」や「電車」といった普通の子どもが好きな分野は全く興味が無かったです。音楽も同様で、車を運転する時はいつも無音なため同乗した人には驚かれます(笑)。小学生の頃は通学路にカナヘビのいる秘密の場所を知っていて、学校帰りはいつもそこで観察していましたね。

イグアナの飼育風景

ニシキヘビの生態を解説している様子

園の敷地内はカメなどが自由に歩いている

イリエワニの大きさに驚く委員たち

県内の建設業者と協力して
『爬虫類と暮らす家』も提唱している

コモドドラゴンの来園に向けてインドネシア政府と交渉中

取材日に来園していた園長ファンの親子との一枚

白輪園長の貴重な話に耳を傾ける委員たち

委員  iZooの開園に至るまで様々なご苦労も有ったかと思いますが、振り返ってみていかがでしょうか。

山口  私の仕事は趣味が高じて現在に結びついているので、正直に言うとこれまで苦労したと思ったことはありません。皆さんも趣味を持っていると思いますが、その中で大変なことがあったとしても、それも一つの楽しみになりますよね。従ってこれまでやってきたことで苦労・悩みを抱えたことは有りません。

委員  10代で動物商を始められたと聞いています。

山口  県立静岡農業高等学校(静岡市葵区)に通っていた時代から動物のブリーダー・ブローカー業を営んでいました。同校がアルバイト禁止だったので自営業なら良いだろうと(笑)。その後ロッカーの中で動物を飼育していることが判明して、2年生に進級する時には担任の先生の許しを得て飼育用に空き教室を1部屋用意して頂いたこともあります。iZooを開園した際にはその先生の依頼でエミューを引き取って、その子どもが今園内で元気に暮らしています。また、当時教育実習生だった先生が同校の校長先生になった縁で、開校110周年記念式典での講演も依頼されています。その先生は私のことを「学校の中でニシキヘビを触らされたことなど強く記憶に残っている」という風に仰っていました(笑)。

委員  人との縁が今の白輪園長に繋がっていらっしゃるんですね。

山口  本当に人との縁でこれまでが有ると思っています。申し訳ないことに自分はなかなか人の顔と名前を覚えられないのですが、逆に相手に自分を覚えていただくことで繋がる縁もあるので、そこを今後も大切にしていきたいと考えています。

委員  高校を卒業されてすぐに、本格的な動物商を始められたのでしょうか。

山口  当時は日本平動物園の飼育員になりたくて、公務員試験を受験しました。筆記試験は文句なしの出来で面接に臨んだのですが、服装自由という規定にも関わらず周囲の受験生はみんなスーツで普段着は私一人。そんな状況に違和感を感じ、面接を中座してそのまま帰ってしまいました。今考えてもそれが正解だったと思いますね。

委員  前身のアンディーランドからiZooにリニューアルオープンして瞬く間に入場者数が増えましたが、どのようなアイデアを打たれたのでしょうか。

山口  施設を購入した当初は雑草が生い茂って建屋も見えず、最終年は年間入場者数が2万人を切るような状態でした。そこでまず職員総出で草刈りを行いつつ、8月の閉園に向けて「さよならアンディーランド」というお別れ企画を打ち出しました。4月の引継ぎ初日の入場者は7人で、一瞬不安な思いが頭をよぎりましたが、ゴールデンウイークに入ると日に2~300人がやって来るようになり「ここは大丈夫だ」と確信しました。それから企画終了までの約4カ月間に2万人、iZooを開園してからは年間で10万人以上の入場者数を記録することができました。

委員  有名アーティストのヒャダインさんが作曲したCMソングも話題になりましたね。

山口  富士サファリパークの様にPRにはキャッチ―な音楽が必要だと思い、真っ先にテーマソングを作ろうと思い立ちました。作詞・作曲・ボーカルまで担当していただいたヒャダインさんは、以前出演したNHKの番組ディレクターさんにFacebookを通じて紹介してもらいました。曲の冒頭15秒は最初の打合せでできました。「ライオンいません。キリンもいません。ヘビヘビワニワニカメカメカメカメ」というフレーズが印象的なテーマソング『iZooはいずこだ 伊豆!? iZoo!!』は、全国のJOYSOUNDでカラオケ配信もしています。

委員  コモドドラゴンの来園と飼育繁殖を計画されていると伺いましたが、状況はいかがでしょうか。

山口  インドネシアと日本の国交樹立60周年に合わせて7年前から計画を進めていますが、コモドドラゴンはインドネシアの国獣に指定されているため検疫や環境大臣の承認などのクリアする条件が多く、コロナ禍も有って未だに実現できていません。今年は国交樹立65周年でインドネシア大使が県内でセレモニーを行う予定なので、そこに合わせて交渉を重ね、来園を実現させたいと思っています。繁殖に関しては、場所と環境を整えてあげれば絶滅危惧種も可能で、それはコモドドラゴンも同様だと考えています。iZooの存在意義として、希少な爬虫類の繁殖は続けていかなければならないと思っています。

委員  東伊豆町に動物園予備校と、iZoo園内に病院も運営していらっしゃいますね。

山口  『動物園予備校アニマルキーパーズカレッジ』(東伊豆町白田)は校内に120種類以上の動物がいて、2年間の専門教育で動物飼育スタッフやブリーダーなど動物を扱う様々な職業に対応できるプロフェッショナルの育成を目標にしています。卒業生は全国各地の動物園やペットショップなどでスタッフとして活躍中です。進路として、警視庁の生き物専門捜査官を目指して公務員試験を受験する学生もいますよ。病院では爬虫類・両生類に特化した診療を行っており、獣医による専門的な医療を提供しています。またiZoo園内では野生動物を精肉として加工販売する『Wild Meat Center』も営業しています。

委員  脱走した動物の捕獲依頼は現在も多いのでしょうか。

山口  現在も週に2件ほど依頼が来ています。電話などを使ってリモートでの相談も行っていますが、生命や財産を脅かす危険のある案件は現地に赴いて対応しています。

委員  そのような案件が増えているのも、爬虫類の人気が高まっている証拠なのでしょうね。

山口  以前は一部のマニアのみが楽しんでいた爬虫類の飼育も、社会の多様性尊重に伴いSNSで飼育風景をアップする人が出てくるほどに普遍化していると感じますね。

委員  本日は貴重なお話を聞かせていただき誠にありがとうございました。白輪園長様の今後の更なるご活躍を期待しております。

【iZooデータ】賀茂郡河津町浜406-2

iZooの外観

 日本最大級の爬虫類・両生類の動物園。従来の動物園や水族館ではできなかった飼育体験や見学の仕方を提案する体感型動物園として2012年にオープンし、年間入場者は10万人を超える県内屈指の人気スポット。園内では一部の外国産の爬虫類を屋外で飼育展示することで、年間を通して野生の姿を日本にいながら観察でき、野生本来の色彩を発色できる環境を再現している。その他にも爬虫類への餌やりや記念撮影などを行っており、「見て!触れて!驚く!」特別な体験ができる。
 入場料金は大人(中学生以上)2,500円、小人(小学生)1,500円、幼児(未就学児)無料。営業時間は午前9時~午後5時(年中無休)。無料駐車場あり。

■iZooホームページ 日本初!体感型動物園iZoo【イズー】

▲TOP