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需要創造をキーワードに

伊藤 孝 県建設業協会会長

 県建設業協会が5月25日に開いた総会で、伊藤孝氏(浜松協会会長)の会長就任が正式に決まりました。併せて、副会長には渡邊康一氏(沼津協会会長)、秋山錠介氏(天竜協会会長)、宮城島光二氏(静岡協会会長)が選出され、伊藤新会長を軸にした新執行部による協会運営も2カ月が経とうとしています。そこで今回は、伊藤会長に協会活動を推進するに当たっての基本方針、地区協会との連携のあり方などについて、広報部会の石井源一委員長が聞きました。インタビューには、広報部会担当の渡邊副会長にも同席してもらいました。



石井 まず、会長就任の初心と協会活動を展開するに当たっての基本方針を、あらためてお聞かせください。
伊藤 受け身にならず、需要を創造していくということに力を入れたいと考えています。県協会にとっても会員企業にとっても、地域貢献を含めて需要を創造していくということが、これからのキーワードになるのではないでしょうか。
 振り返ると、地域に対してどんなことをしてきたのか、いま現在どんなことをしているのか、これからどんなことをしようとしているのか、これまではPRがうまくできていないところがあったように思います。これからは協会の活動をはっきりと訴えていき、地域になくてはならない協会であり、会員企業であるということを是非ともアピールしたい。そのためにも広報部会の役割は大きいですね。
 また一方で、協会員の減少傾向が続いていますが、いま話したような目的に向かっていくために、併せて会員増強にも力を入れたいと考えています。もちろん各地区協会の運営は、その地区の実情に応じた活動をしているわけですが、団体としての大きな目標は「かくあるべき」という指針を県協会で出して、一致団結してその方向に向かい、確実に一歩でも前進したいと、会長就任時に感じました。
石井 お話の中に、地域貢献やPRの重要性、会員の増強などが出てきましたが、経営環境が厳しい中で協会の役割を考えると、非常に難しいものがありますね。
伊藤 県協会には、建設産業全体を視野に入れたリーダーになることが求められているのではないでしょうか。15年度末現在で本県内の建設業許可業者は1万6653者となっており、建設業の事業所で働いている従業者数も14万人を超えています。さらに建設産業団体連合会に関連して就労している人たちのことも含めて考えれば、何十万人にもなります。
 そういったことを考えると、建設業協会の協会員だけが良くなればいいということではなくて、リーダーシップを発揮しながら、地域おこしのようなことにもつながっていけばいいと思うのです。
渡邊 建設産業について、伊藤会長が言われるような捉え方をすると、各地区には建設業に関連した就労者がたくさんいるわけですから、われわれの業界は既に地域に大きな貢献をしていることになりますよね。会長のお考えは大変意義のあることだと思います。

石井 地区協会との連携の在り方については、どのようにお考えでしょうか。
伊藤 先ほども少し触れましたが、地区協会それぞれが独立した運営体であるわけです。そういう意味では別々の体制なのですが、県協会がオピニオンリーダー的役割を果たし、地区協会がどこを目指していけばいいのかというようなことについて、提言できる機能を確立するのは必要なことだと思うのです。そういうことに勇気を持って取り組んでいけたらと考えているところです。
石井 本年度から合同委員会が設置され、そういった機能も活かしながら地区協会と連携した活動ができれば、活動内容はより充実したものになりそうですね。
伊藤 その通りです。ただ、どのようにすれば良いのかという結論は、まだ見えてきません。とはいえ、各委員会の活動を活発化させていかなければ、協会の魅力づくりにつながらないと思います。単に入会しているというステータスだけでは見切りをつけられてしまいます。協会が何をしているのか、何をしようとしているのかをはっきりと打ち出していくことが大切です。
渡邊 委員会の組織体制は従来とは変わりました。県協会の各委員会の委員長は、地区協会の副会長クラスに就任してもらっており、これは個々の委員会を充実させるという意味でも、良い方向に機能していくのではないでしょうか。
伊藤 県協会の各委員会の委員になった方々には、地区協会でも積極的にコミュニケーションを図ってほしいと思います。協会の活動を一方的に報告するだけでは意味がありません。言葉のキャッチボール、つまり会員間の対話が必要です。
 あえて言えば、これから先、協会員だから何とかなるという考えは成り立ちません。まず会員企業が、自助自立を前提とした経営態勢で臨めば、その集合体である団体も強固になります。そのことが地域貢献にもつながっていくというように相乗効果が生れればいいですね。
石井 県協会と建設業団体連合会(建産連)のような関連団体との連携については…。
伊藤 例えば、建産連との連携のあり方について言えば、元・下関係という形から入ってしまうと、対立関係の考え方が前面に出がちです。ですから、互いが小異を捨てて大同団結して問題の解決に取り組むという姿勢が必要です。公共工事量が減少していくという現実の問題を前にして、では、それ以外の需要をどのように創出していくのか、といったことも一緒になって考えなければならないと思います。

 いずれにしても難問が多く横たわっており、専門工事業界が抱えている問題は多岐にわたっていることも事実です。けれども、専門工事業が疲弊していけば、われわれ建設業は成り立ちません。
石井 そのような考え方に立てば、われわれ協会の役割は非常に大きいですね。
渡邊 全国建産連の総会に参加してみて、いろいろな声が挙がっているのが分かりました。本県としても静岡の中で何が問題になっているのか、より多くの対話が必要だと強く感じます。
伊藤 してほしいということと、できることとは違います。できることに目を向けて、それを前提条件にテーブルにつかなければ、何も解決できません。
石井 行政機関に対しては、どのような活動が必要だと思いますか。
伊藤 各委員会の活動成果や提言を基にして、行政とも話し合いの場を持っていきたいですね。まったくのセレモニーであるのなら、われわれの真の声は行政に届きません。ですから、「われわれが実施した実態調査によれば、このまま放置しておいたらこういう方向に行ってしまうけれども、行政としてはどのように方策を考えていくのか」、というような材料を基に話をすることが重要です。
 そのためには、会員に対しても委員会が何をやっているのか、どんな所でどんな話をしたのかをしっかりと伝えることは必要ですし、地道な行動が一つ一つ積み重なっていって、県協会という大きな船がどこに向かっているのか、船の軌跡を見れば分かるようにしていきたいと思っています。
渡邊 私も伊藤会長の考えを速やかに実行できるように、全力で補佐していきたいと思います。
石井 貴重なお話をありがとうございました。きょうの話をベースにして、協会運営に励んでいただけることを期待しています。
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