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浜松市のユニバーサルデザインへの取り組み
浜松市ユニバーサルデザインのまちづくり

 今回のわが街ウオッチングは、平成15年4月に全国に先駆け『ユニバーサルデザイン条例』を施行し、全庁的にユニバーサルデザインに取り組んでいる浜松市を訪問してきました。浜松市では、「快適な暮らしやすいまち・浜松」の実現を目指し、ユニバーサルデザインを市政の柱としてとらえ、ユニバーサルデザインのまちづくりに市民とともに取り組んでいます。
 条例制定の経緯、理念、また、市民・事業者・行政それぞれの役割と連携、これからの展開をユニバーサルデザイン室の高林輝久室長にお聞きしてきました。

高林室長 中村氏 杉浦氏
高林室長 中村氏 杉浦氏

● ユニバーサルデザインのまちづくりとは何ですか。また、浜松市の目指しているものについてお聞かせください。

 全国的に進む高齢化は浜松市においても例外ではなく、急激な高齢化に対応するものとして、ユニバーサルデザインの考え方に基づく政策の展開が必要となってきました。
  また、浜松市は外国人市民の多い都市でもあり、浜松に暮らす外国人市民は約3万2千人(うち6割がブラジル人)で浜松市人口の約3.9%を占めています。
 このような中で、従来はあまり目立たなかった様々な問題が表れてきました。
 例えば、公共施設や乗り物が足腰や目、耳の不自由なお年よりが利用しにくかったり、難しい利用方法であったり、言語や習慣の違いにより、意思の疎通が上手くいかなかったりすることです。
 以前は、バリアフリーの考えのもと、特別な設備や方法で対処してきましたが、一方で、他の人にとってはそれが不便になったり、使い勝手が悪いために想定していた利用者にも使われないなどの問題も起きていました。
 こうした問題を解決していくためには、特定の人のためだけでなく、そうでない人も利用しやすいように考えなくてはなりません。年齢、性別、身体能力、国籍等に関係なく、すべての人が自立でき、安心して暮らすことができる社会こそが市民の求めるものであると考え、ユニバーサルデザインのまちづくりに取り組むこととなりました。


● 浜松市は、全国に先駆け条例を制定するとともに専門の部所を設置し、積極的に事業を進めているとお聞きしていますが、その経緯などについてお聞かせください。

 浜松市では、思いやりの心が結ぶ優しいまちの実現を目指し、平成12年度、都市計画課内にユニバーサルデザイン室を設置しました。これは、まず市民にわかりやすいユニバーサルデザインの推進には、まちづくりを主眼として進めることが良いのではないかという狙いがあったからです。
 その後、ユニバーサルデザイン計画の策定、条例施行も含め、ユニバーサルデザインを総合的・計画的に進めるために、平成15年度に横断的な調整を行う企画課にユニバーサルデザイン室を移管し、全庁的な推進を図ることとしました。


● 計画の位置付けや推進体制、また条例制定などについてお聞かせください。

 市の施策や事業にユニバーサルデザインの理念を取り入れ、総合的・計画的に推進していくために、平成13年度に「浜松市ユニバーサルデザイン計画」(U・優プラン)を策定するとともに、市民、事業者、市が協働でユニバーサルデザインによるまちづくりを進めるため、平成15年度に全国に先駆け「浜松市ユニバーサルデザイン条例」を施行しました。
  そして、ユニバーサルデザイン計画を確実に推進するためには、まず、推進体制を整えることが必要と考え、庁内に市長を本部長とするユニバーサルデザイン推進本部と各部の代表課長による幹事会を設置しました。
 さらに、全庁各課の課長補佐クラスをユニバーサルデザイン推進員として任命し、各課の取り組みにユニバーサルデザインを取り入れることとしました。
 また、条例に基づく外部機関として、公募市民、市民団体代表、学識経験者、事業者等で構成するユニバーサルデザイン審議会を設置し、ユニバーサルデザインの推進に関して、調査・審議していただいています。


● 今までの取り組みなどについてお聞かせください。

★ユニバーサルデザインフェア
 平成15年度から、広く市民にユニバーサルデザインを理解してもらうためのイベントとして、市民と協働でユニバーサルデザインフェアを毎年開催しています。平成18年度は、小・中学生や専門学校などのユニバーサルデザイン学習発表、市民団体や企業でのユニバーサルデザインの取り組み発表、ユニバーサルデザインファッションショーなどを行いました。

ユニバーサルデザインフェア

★浜松市ユニバーサルデザインシンボルマークの制定
 平成17年度には、ユニバーサルデザインの統一的な啓発を図るため、浜松市のユニバーサルデザインをイメージしたシンボルマークを公募にて制定しました。現在はこのマークを活用して普及・啓発を進めており、その結果、旧浜松市においてはユニバーサルデザインの認知度が41.8%となっています。

シンボルマーク

★浜松市公共建築物ユニバーサルデザイン指針
 浜松市では、平成17年3月に「浜松市公共建築物ユニバーサルデザイン指針」を策定し、公共建築物の新築・改築や改修の計画・設計の際に、だれもが利用しやすい環境を整えるための指針として活用しています。
 この指針では、ハード面とソフト面の両方から必要とされるユニバーサルデザインの配慮について示すことにより、市民へのサービスの向上をはかることを目的としています。
 さらに民間事業者や市民の方にとっても、ユニバーサルデザインに配慮した施設の建築や改修を行う際の参考となることも期待しています。
 この指針に沿って整備された建物をいくつかご紹介します。


デザイン指針
浜松市役所
市役所メインエントランス

市役所メインエントランス
広くてゆるやかなスロープ(勾配は約1/25)に2段手すりや点字、誘導ブロックが設置してあります。




思いやり駐車場

思いやり駐車場
身体障害者用駐車場の他に高齢の方や妊婦さん、ベビーカーをお使いの方の優先駐車場として「思いやり駐車場」があります。


総合案内板

総合案内板
館内の案内を見やすい色使いをつかって表示をしています。また、英語とポルトガル語でも併記しています。



UDブロック
段差のないUDブロック

段差のないUDブロック
歩車道の境に段差なしのUDブロックを使用しています。
また、UDブロックには、視覚障害のある方が歩車道の境が分かるよう、ブロックに細いスリットを入れ、白杖が引っかかり認識できる工夫がしてあります。




地下道案内サイン
地下道の案内サイン

地下道の案内サイン
方向がわかりにくい地下道をまよわないよう案内します。また、見やすい色使いとし、英語とポルトガル語でも併記しています。





フラワーパークメインエントランス
フラワーパークメインエントランス

フラワーパークメインエントランス
スロープやゆるやかな階段、2段手すりが設置してあります。




クリスタルパレス
クリスタルパレス

クリスタルパレス
誰もが鑑賞しやすいよう、施設内は段差のない園路が整備されています。




南区役所案内板
区役所(南区役所)

区役所(南区役所)
UD指針に基づき、玄関・階段・廊下などの移動空間は、使いやすい幅と高さとするとともに、手すりを設置するなど、安全に配慮したものとしています。
また、案内表示については、色使いや大きさ等に配慮し誰もがわかりやすい案内サインとしています。また、英語とポルトガル語でも併記しています。
トイレについては、ユニバーサルデザインの観点から、各階に多目的トイレを設置し、1階はオストメイト対応、2階は子供連れ対応、3階には片麻痺の方への対応等、多様な利用者に配慮したものとなっています。
外構関係では、身障者用駐車場3台分に加え、思いやり駐車場を3台分設置し、身障者用駐車場から玄関までの動線については、屋根付きの通路を設置します。


● 今後の発展的な取り組みについてお聞かせください。 

 今後は、先に述べた浜松市公共建築物ユニバーサルデザイン指針に続き、土木や公園の分野においてもユニバーサルデザインに関する指針の策定を行う予定です。
また、平成19年4月の政令指定都市移行に合わせてユニバーサルデザイン室はユニバーサルデザイン課となり、さらなる横断的なユニバーサルデザインの推進が可能になると考えています。これまでの経験を活かし、個性豊かな地域に合ったユニバーサルデザインによるまちづくりを進めていきます。


● 最後に一言お聞かせください。

 浜松市のユニバーサルデザインの基本理念である「思いやりの心が結ぶ優しいまち」の実現を目指し、後世に引き継いでいくため、将来を担う子供たちへの啓発に力を入れるため、小学校4年生を対象に『ユニバーサルデザインすごろく』を作成し、一人ひとりの思いやりの心、気持ちが、暮らしやすいまちをつくることを知ってもらい、中学校1年生では総合学習を通して学んでいます。
ユニバーサルデザインは、行政だけでは実現できません。幅広い市民の理解と、自主的な参加が必要です。市民や事業者との連携により、多くの人達の知恵と力を集め、誰もが安全で快適に暮らせる社会づくりを進めて生きたいと考えています。

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