「ピアノの詩人ショパンが浜松にいます!アクトシティ『ショパンの丘』」

神無月の中ごろ、三保松原は幽玄の世界に誘われます。駿河湾の大海原、伊豆の山々、富士山までもを借景に、羽衣の松を鏡板にした舞台。

松林を揺らす秋の風、薄暮の中で「三保羽衣薪能」が始まります。

羽衣まつり運営委員会  
▲写真提供/羽衣まつり運営委員会

「三保羽衣薪能」は、羽衣伝説発祥の地・世界文化遺産の構成資産「三保松原」に特設能舞台を施し、能「羽衣」などを演じます。

美しい日本の情景と伝統文化に憧れ、フランス・パリで能「羽衣」の公演に力を注ぎ、三保の地を訪れることなく夭折したエレーヌ・ジュグラリス夫人に捧げるものです。

◇「薪能(たきぎのう)」とは
「薪の宴の能」の意。 主に、夏場の夜間、能楽堂もしくは野外に臨時に設置した能舞台の周囲にかがり火を焚き、その中で選ばれた演目を演じる能楽。
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▲写真提供/羽衣まつり運営委員会

「羽衣」上演に生涯を捧げた舞姫

薪能の舞台を設置する三保松原
▲薪能の舞台を設置する三保松原

エレーヌは、1916年4月23日、フランス・ブルターニュ地方キャンペールで生まれました。父親が現代舞踊の母と呼ばれるイサドラ・ダンカンの主治医だったことから、エレーヌも幼少のころから舞踊の手ほどきを受けました。

彼女は、舞台芸術の極致として日本の能、中でもヨーロッパの人々にも分かりやすい「羽衣」に心ひかれ、その上演に情熱を傾けていきます。

1949年3月、ギメ美術館のホールでの初演が大成功をおさめたこともあり、彼女はさらなる情熱を各地での上演に注いでいきます。

しかし、1949年6月のアトリエ劇場での公演中、「羽衣」の衣装をまとったまま彼女は舞台で倒れ、病院に運ばれました。天女が天に舞い帰る場面だったそうです。

2年後の1951年7月11日、舞台に戻ることなく彼女は35歳という若さで亡くなります。最後まで憧れを抱き続けていたのは、能「羽衣」の舞台、三保松原でした。


遺志を果たす夫 〜記念碑の完成〜

「私の代わりに、三保を訪ねてください」
1951年(昭和26年)エレーヌの遺志を果たすため、夫のマルセル・ジュグラリスは遺髪と手作りの能装束を携え、三保を訪れます。
マルセルは、国際ジャーナリストとして、のちに日本でのフランス映画の紹介や日本映画のカンヌ国際映画祭への出品など日仏文化交流で大きな功績を残しています。

フランスで、日本の伝統芸能・能「羽衣」の上演に生涯を捧げた舞踊家の存在。

エレーヌの「羽衣」と三保を愛する心。

エレーヌの存在と、その想いが、地元・三保の人々の気持ちを動かし、彼女の功績の顕彰と日仏文化交流の記念に、記念碑の建立の気運が高まります。

募金活動など多くの人の協力のもと碑は完成。1952年(昭和27年)10月22日、エレーヌの遺髪を碑の下に納め、11月1日には「羽衣の碑」(エレーヌの碑)建立除幕式が開かれました。

三保松原にある「羽衣の碑」(エレーヌの碑)
▲三保松原にある「羽衣の碑」(エレーヌの碑)

「羽衣まつり」

その後、旧清水市は、1984年(昭和59年)に、市政60周年・清水港開港85年・ストックトン姉妹都市提携25年を記念し、「国際海洋文化都市・マリンピア清水21」の都市ビジョンを掲げ、「イベント清水」事業を展開します。

「羽衣まつり」も「イベント清水」事業の一つであり、2014年で第31回を数えます。「三保羽衣薪能」のほかにも、「エレーヌ夫人顕彰式」「伯良行列」「三保こども能楽」などが、今年は10月11日(土)に開催されます。

(参考資料:羽衣まつり三十周年記念誌)
羽衣まつり運営委員会
▲写真提供/羽衣まつり運営委員会

私と「羽衣まつり」
清水建設業協会 薩川諭会長

1993年、「第10回フランスフェア羽衣まつり」実行委員会から参加しており、ひとえに“まちのため”という想いで、二十年あまりが経ちました。
 この間、第12〜14回(1995〜1997年)、第16〜17回(1999〜2000年)の延べ5回は、実行委員長を皆様のご協力のもと務めさせていただき、今現在も運営委員会委員として末席をよごしております。

野外公演は、反射音・照明・気象など、能楽堂で演じる場合と比べ条件的に厳しいものがあります。
特に、天候には左右されます。鼓は張地が革製のため雨では音が鳴らず、演者の衣装も絹のため、水には弱いからです。
雨天用の会館は準備しておりますが、お客様には「三保の地で、幽玄の世界を堪能していただきたい」という関係者全員の強い願いがあり、会場の判定会議では胃が痛くなることもありました。

「羽衣まつり」は、清水区三保地区の皆様のご尽力によって、成り立ってきました。今後も脈々と受け継がれ、羽衣伝説にふさわしい情景の地が、ますます隆盛されることを願ってやみません。


第31回羽衣まつり

第31回羽衣まつり 第31回羽衣まつり
●三保羽衣薪能
主催:羽衣まつり運営委員会
日時:10月11日(土)16時30分から(開場15時45分)
場所:静岡市清水区三保 「羽衣の松」前特設能舞台
 雨天・静岡市清水文化会館マリナート(清水区島崎町)
演目:能 「清経」 シテ 観世銕之丞
       ワキ 福王和幸
狂言「口真似」シテ 山本則俊
能 「羽衣・彩色之伝」 シテ 山本順之
問合せ先:電話054(221)1044

●伯良行列
日時:10月11日(土)13時から14時20分(雨天中止)
場所:伯良神社〜羽車神社
薪能の種火を伯良神社で採火し、伯良が羽車神社へ送ります。

●三保こども能楽
日時: 10月11日(土)13時30分から14時(雨天中止)
場所: 羽衣の松前特設能舞台
日本の伝統文化を学んでいる静岡市立清水第五中学校の生徒が日々の稽古の成果を発表します。

●エレーヌ夫人顕彰式
日時:10月11日(土)14時30分から15時20分(雨天中止)
場所:羽衣の松前特設能舞台〜エレーヌの碑前
エレーヌ・ジュグラリス夫人を顕彰し、「羽衣の舞」の奉納、献花などが行われます。
写真提供/羽衣まつり運営委員会
▲写真提供/羽衣まつり運営委員会