タイトル画像

 浜松市天竜区佐久間町。浜松市北部の中山間地に暮らす人々に寄り添い、日々の生活をより良いものにしながら地域の自然環境や伝統文化を次代に繋げていく役割を担っているのが、NPO(特定非営利活動法人)がんばらまいか佐久間だ。2005年の設立以降、「日本で最初の過疎地有償運送事業NPOタクシー運行」など地域活性化につながるさまざまな事業に挑み、その取り組みは2019年に「第9回地域再生大賞優秀賞」を受賞するなど高く評価されている。「夢プロジェクトさくま」への協力など新たな取り組みも含め、河村秀昭事務局長に話を聞いた。
(聞き手:静岡県建設業協会総務・広報委員会 清水充担当委員)

NPOタクシーの車両

NPOタクシーの車両

アワビ養殖用水槽

アワビ養殖用水槽

アワビ養殖用水槽

養殖中のアワビ

河村事務局長

取材風景

委員 NPOがんばらまいか佐久間の事業内容を教えてください。

岩井 NPO設立時からの事業であり代名詞とも言える取り組みが過疎地有償運送事業、通称「NPOタクシー」です。NPO設立の数年前に地元のタクシー業者が廃業し、その代わりとなり地域の「足」を担う事業を立ち上げたのです。車両2台をNPOが保有し、年会費を納めていただいている約1000人の市民が利用できる体制としています。高齢化の進行に伴って、自動車免許を返納して「NPOタクシー」を利用する人も増え、地域を支える機能として定着してきています。
 2020年9月から12月の期間で、浜松市の新交通サービス(MaaS事業)の実証実験に伴い、「NPOタクシー」の乗車無料キャンペーンを実施しました。より多くの方に「NPOタクシー」の便利さを知ってもらうため、NPO非会員の方にもご利用いただきました。今後の利用促進につながればと考えています。

委員 アワビの養殖事業も注目されていますね。

岩井 そうですね。「佐久間アワビプロジェクト」は佐久間地区に新たな産業をもたらす取り組みとして2015年に着手したものです。旧学校給食センターを養殖施設に利用し、水槽を導入。2~3cm大のアワビの稚貝を養殖し、約8cmの大きさにまで育てて出荷を目指します。この5年間で養殖のノウハウを蓄積するべく、水温の管理方法やコストダウン方法などを検討してきました。今年8月には5t級のろ過施設付き水槽を導入し、2500~3000匹の養殖が可能な体制を整備しました。
 それでも事業化に向けては課題が多いのも事実です。アワビのみでは収益化が困難かと考え、アワビが生息する水槽の上部を他の魚などの養殖環境として利用できないかなど、より効率的な運営につながる養殖方法も検討しています。事業化・収益化のめどを立てつつ、経営力を持つ民間事業者に引き継いでいければと考えています。

委員 「夢プロジェクトさくま」という新たな取り組みについても教えてください。

岩井 これは佐久間地域の木質バイオマス資源を活用した発電事業となります。再生可能エネルギーの地産地消を佐久間で実現し、供給の安定化と低炭素エネルギーの循環を促進します。
 原料は間伐材や流木チップ、コーヒーかすなど。これを佐久間中学校跡地のバイオマス発電で200kw程度の電力に変換し、電気は佐久間病院や協働センター、さくまの里などで使用。発生した熱はエコファームや温浴施設で利用するという計画です。複数の企業が参画し、田宮紳也担当部長が事業化に向け協議体の幹事役を務めています。
 NPOとしてこのプロジェクトを支援し、アワビに次ぐ佐久間の新産業として期待をかけているところです。

委員 今後の展望はありますか。

岩井 なんといっても高齢化の進行は止められず、活動会員も少ない中で事業の継続性は不透明ではあります。できる領域は限られていますが、事業を集約し、より良い地域づくりに直結する活動を推進していきたいと考えます。  将来を案じる立場として、一人でも多く若い世代の人が佐久間に魅力を感じ、この地で暮らすことを選びやすくする。この点に寄与するために、NPOに求められる機能は何か。今後のその役割を見つめ続け、常に新しい形のNPOを創造していきたいと思います。

▲TOP