HOME >> 協会からのお知らせ >>第40回(一社)静岡県建設業協会建設もの創り大賞に寄せて
土木部門審査委員長 酒井 浩行
(前静岡県交通基盤部理事(土木技術担当)、
現静岡県危機管理部長兼危機管理監代理)
審査委員会(土木部門) | |
国土交通省中部地方整備局静岡国道事務所 所長 | 柳野 和也 |
国土交通省中部地方整備局静岡河川事務所 所長 | 阿部 聡 |
一般社団法人日本建設機械施工協会施工技術総合研究所 所長 | 真下 英人 |
一般社団法人静岡県土木施工管理技士会 会長 | 中村 嘉宏 |
一般社団法人静岡県建設業協会 協議員 | 望月 克政 |
前静岡県交通基盤部理事(土木技術担当)、 現静岡県危機管理部長兼危機管理監代理 | 酒井 浩行 |
「静岡県建設業協会建設もの創り大賞」は、地域社会の発展に貢献したと認められる優秀工事の功績を讃え、あわせて協会会員の技術力向上の基礎を築くことを目的とするもので、これまで数多くの工事が表彰されてきました。昭和59年に「静岡県建設業協会賞」として創設され、平成27年度からは一般の方々にも表彰内容が伝わり易くなるよう現在の名称になりました。
今回、応募のあった作品には、ICT技術の積極的な活用の他、現場担当者の創意工夫により厳しい施工工程や施工条件を克服し、質の高い工事を完成させたものが多く見られました。
全部で15作品の応募があり、地区協会から選任された一次審査員の審査結果と現場担当者の発表を踏まえた審査委員会による厳正な審査の結果、最優秀賞、優秀賞、優良賞計6件を選考しました。
建設業は、県民の生活と経済活動の基盤であるインフラ整備の担い手であるとともに、自然災害の最前線で活動する地域の安全・安心の守り手です。こうした社会的使命を果たしていくために、今後も、建設もの創り大賞の取組が当初の目的を達成していくことを祈念するとともに、土木技術の向上のため皆様のご活躍を期待しております。
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最優秀賞 | 加和太建設株式会社(三島) 令和4年度 黄瀬川大岡護岸工事 |
狩野川水系流域治水プロジェクトとして、防災減災を目的とした国土強靭化対策の護岸工事である。
残土処理の変更に伴い、施工延長が当初設計から大幅に変更となり、護岸線形の変更を行うなど、施工困難への対応など工夫が見られた他、施工者希望型によるICT施工の実施やシステム開発企業との意見交換やデモンストレーションの実施などDX技術の普及に向けた取り組みを積極的に行っていた。
また、小学生対象の体験型イベント、高校生の現場見学及び施工管理体験、大学生のインターンシップ受入れなど、将来にわたる担い手確保につながる取り組みを積極的に行われており、現場固有の課題と対策とともに、建設業界の将来に向けた活動がバランス良く行われていた。
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優秀賞 | 大河原建設株式会社(島田) 令和3年度[第33-D7048-01号](主)島田吉田線橋梁補修工事(谷口橋補修工) |
主要幹線道路に架かる橋梁の橋脚及び径間の補修工事である。
交通量が多く車幅も狭い橋脚の桁下で、通常は不可視となる厳しい施工環境の中、3Dデータを作成し、机上で施工箇所の可視化を図り安全管理を確保したことは評価できる。
また、削孔機及びダイアモンドコアビットの性能向上を受け、削孔径をφ20mmからφ10mmへ変更することで、施工性の向上やコスト削減を実現した。
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優秀賞 | 石川建設株式会社(袋井) 令和4年度福田漁港水産生産基盤整備工事(-3m陸揚用岸壁改良工) |
漁港内における陸揚用岸壁の耐震補強工事である。
しらす漁の禁漁期間である65日間という短期間での施工が求められる中、ひさしとの接触防止のためにピンクリボンを吊らしての注意喚起、施工機足場の地盤改良、漁師等との事故防止のための木製スロープによる安全通路の製作など、安全管理に様々な工夫が施され、漁港利用者にも配慮した点は特に評価できる。
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優良賞 | 臼幸産業株式会社(沼津) 令和2年度障害防止(治山治水)東富士地区海苔川堰堤工1工事 |
富士山東側の標高約1,350mに位置する海苔川における砂防堰堤の構築工事である。
高地での施工による、材料の確保や管理、冬季期間中の現場閉鎖による厳しい工期という条件において、品質確保に努めた。
特に、外部保護材の精度確認、内部材の施工管理については、施工期間中の精度確認を細かに行うことで、長期間にわたる管理を達成し、大いに評価できる。
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優良賞 | 鈴与建設株式会社(清水) 令和4年度[第33-W6651-01号]清水港緑地等施設整備工事(新興津暗渠工) |
清水港新興津地区における地盤改良及びボックスカルバート据付工事である。
地盤改良工事について、当初の設計ではパワーブレンダー工法での施工となっていたが、その後のバックホウ掘削が困難となる可能性があることを考慮し、部分改良が可能なWILL工法に変更することでスムーズな施工を実現した。
また、ICT工法の活用や3Dプリンターによるボックスカルバート模型の製作など、現場を見える化する工夫が成されていた点も評価できる。
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優良賞 | 株式会社橋本組(島田) 令和4年度大井川阪本護岸整備工事 |
一級河川大井川の緊急的な治水安全向上のために大井川水系河川整備計画に位置付けられた護岸整備工事である。
盛土材の採取場所が台風の影響による浸食の影響で下流部へ変更となり運搬計画を見直す必要に迫られた中、AIシミュレーションを活用しダンプカーの滞留や掘削・積込機械の使用などの最適な施工サイクルを選定し施工計画の管理に努めた。
また、コンクリート均し用トンボへの振動機能の付加やパワードスーツの使用により作業員の負荷軽減についても工夫と配慮が成されていた。
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「土木部門 その他の応募作品」
小野建設株式会社(三島) 令和4年度 狩野川水系流木整備工事 |
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小野建設株式会社(三島) 令和4年度小山地区(奥の沢川15外)直轄治山工事 |
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株式会社グロージオ(島田) 令和3年度静岡空港空港整備事業工事(工事用進入路工) |
建築部門審査委員長 井上 泉
一般社団法人静岡県建築士事務所協会相談役
審査委員会(建築部門) | |
前国土交通省中部地方整備局静岡営繕事務所長 | 松島 祥郎 |
前静岡県交通基盤部建築管理局長 | 水野 和彦 |
一般社団法人静岡県建設業協会副会長 | 河津 市元 |
一般社団法人静岡県建設業協会理事 | 加藤 修一 |
一般社団法人静岡県建設業協会協議員 | 杉浦 政紀 |
一般社団法人静岡県建築士事務所協会相談役 | 井上 泉 |
今回の建築部門には、県下14件の作品のご応募を頂き、誠にありがとうございました。
其々の作品には発注者の建物設置・活用の目的があり、規模や工事費の大小にかかわらず、いかにその思いを限られた工期の中で、現場の創意工夫と高い技術力で創り上げる強い熱意を感じ取る応募作品ばかりでありました。
主旨をまとめたA3版の応募添付資料を拝見すると、実直に現場で活躍する担当者の姿も想像され、本年40回を迎える「建設もの創り大賞」にふさわしい素晴らしい高作品が出揃ったと感服をいたしました。
協会委員会による一次審査、その後に審査委員会による書類審査を厳正にさせて頂き、結果6作品を現地審査対象とし、令和6年2月5日・2月16日の両日に其々の現場担当者や、ご使用される施主とお会いしながら、各50分という短い時間の中ではありましたが、竣工された建物を拝見しながら丁寧なご説明を頂きました。
訪問先では業務をしながらのお忙しい中で、審査にご協力頂き感謝申し上げます。
審査の結果下記の作品を選出し、賞を授与することといたしました。
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最優秀賞 | 鈴与建設株式会社(清水) 静岡理工科大学 土木工学科棟新築工事及び周辺整備工事 |
外内面のコンクリート打放しと屋根面のPC構造など、意匠と構造美に力を入れたこだわりのある設計に対し、難易度の高い工法に挑み、随所において丁寧な施工の上に工夫をこらし、非常に高い出来映えに仕上がっている。また工程・品質管理等も優れており、現場の運営体制も高く評価できる。
特筆すべきは、コンクリート打放しのモックアップ作製により仕上げ面・パネル割り・色味具合の検討を繰り返した点、更にPC配筋検討や同屋根面を支える支保工の検討により生み出した仮設梁・柱の設置である。
これにより結果的にコスト縮減や工期短縮を図ることが出来た。
1m以上の壁厚マスコンクリートや、補修なしの美しいピン角の打放し壁は、建物としての見ごたえを十分感じさせることができ、建物の価値を高めたことも大きく評価した。
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優秀賞(A部門) | 小野建設株式会社(三島) (仮称)大嶽コンサルティンググループ本社ビル新築工事 |
設計者からの難しい納まり要求に応えながら、DX利用を積極的に現場に取り入れている点が評価できる。
設計意図をより理解するために、鉄骨納まりや内装取り合いにVRを活用するなど積極的な姿勢がある。
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優秀賞(A部門) | 石川建設株式会社(袋井) 令和3年度磐田南高等学校校舎棟新築外工事(建築) |
敷地出入口が1ヵ所しかない狭い敷地内で、学校施設を通常使用しながらの建替え現場である。
鉄骨建方の校区分けの工夫や効率的な資材搬入計画、仕上げ材の変更提案などにより工期短縮も行っている。
学校行事や騒音・振動に配慮した施工、ドローン撮影を活用した学校側への説明などが評価できる。
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優秀賞(B部門) 特別賞 |
臼幸産業株式会社(沼津) 令和3年度(仮称)富士山須走インフォメーションセンター建設工事 |
小規模建築であるが、日本が世界に誇る富士山5合目に建設するという過酷な気象条件と限定施工期を、創意工夫された確実な施工方法により見事に克服し完成させたことを評価した。
工事用電気や水が現地にはなく、施工時期も夏場に限定される中でコンクリート打設を繰り返し進めていく綿密な打設時間管理や、2000mを超える高地での現場作業員の健康・安全管理など平地では考えられない相当な苦労があったと容易に想像できる。
環境の厳しい現場において、現場改善への工夫と確実な施工・安全管理の徹底を評価し“施工管理の創意工夫”として特別賞も獲得した。
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優良賞(A部門) | 大河原建設株式会社(島田) ヤマミ水産株式会社 本社工場新築工事 |
生鮮品冷凍庫を附属した工場である。-50°Cの庫内では的確な断熱性能が重要となり、躯体コンクリートの温度差によるひび割れを最初から想定した特別な施工方法も評価できる。
建設業界での女性活躍が著しい中、中規模現場を見事に仕切られた女性工事監督者の姿を頼もしく思った。
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優良賞(A部門) | 須山建設株式会社(浜松) 大河ドラマ館等設計設置保守撤去業務 |
建設地が埋蔵文化埋蔵地域内にあり、仮設建築物ではあるが慎重に施工を実施する必要がある。
掘削できない場所には土木シートを使い他場所と明確化する工夫や、東京オリンピック会場で使用された木材を、レガシー材として通路材に活用するなど、イベント用施設として限定的な期間の使用であったが、施工では通常工事同等以上に各所に工夫がなされており評価できる。
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「建築部門 その他の応募作品」
臼幸産業株式会社(沼津) <H>home 新築工事 |
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林工・鈴木特定建設工事共同企業体(浜松) 令和2年度 浜松市小型自動車競走場メインスタンド棟改築工事(建築工事) |
第40回“建設もの創り大賞(建築部門)”の審査が無事に終了し、まずはホッと安堵しております。受賞された皆様は誠におめでとうございます。
其々の現場でのご苦労や、良いものを創りだす為の膨大な検討時間を知ると、安易に甲乙付け難いものであることがわかり、その結果が素晴らしい仕事として施主(発注者)に満足して頂けていることを改めて審査させて頂き認識をしました。
世界の歴史をたどって分かることに、現在目にできる人がつくる建造物にはそれを『創る目的』が必ずあり、特に「これを使ってここで行うこと」の場所として設けた建築物には、その目的をよりイメージさせ、設置者のメッセージまでも伝える大切な役割があります。
最優秀賞に選ばれた“静岡理工科大学 土木工学科棟”は一見して土木の橋梁基礎や、水力発電ダムを連想させる強固な分厚いコンクリートの塊を見事に表現させることに成功した作品でした。当然優れた設計者の意匠や構造の指示がなければ誕生しない建物ではありますが、おそらく期待通り それ以上の施工表現がなければ実現出来なかったと思います。
まさに本作品は建物の前に立てば「これから土木を学ぶ者の聖地」を意識させる学び舎としてのメッセージが私達に伝わるものでした。
次回は第41回の“建設もの創り大賞(建築部門)”が予定されています。
会員の皆様には奮って応募くださるようお待ちしております。