INDEX >> ズームアップインタビュー | ||||||||||||
|
||||||||||||
遠藤 「飛込競技」をやるようになったきっかけは、どんなことだったんでしょうか。 樋口 小学校3年生くらいまでマット運動やトランポリン、水泳などをやっていて、そういうスポーツ教室に通っていました。そこの教室の先生のお子さんが、たまたま「飛込」をやっていまして、見学に行ったときに見たこともない競技だったので、楽しそうだなというのが最初の印象でした。
遠藤 内藤コーチに伺います。河合楽器の水泳部が廃部になって、富士水泳場に来るようになったのは、どういう経緯があったのですか。 内藤 まず言えるのは、この2人が強い。ですから、選手をやめてしまうのはもったいないという県の水連側の強い要望があったんです。もうひとつ、今年は本県で「NEWわかふじ国体」が開催されますよね。このプールで優勝してほしいという各方面の強い期待もありました。夢とか目標とかをかなえたい。そのことだけをまず考えて、生活面は二の次だったかな…。これまでの練習や試合でも、コーチひとりに選手2人というような組み合わせで競技生活を送ってきました。 遠藤 「飛込競技」は一般にあまり知られていない競技なので、どういう種目があるのか説明してください。 内藤 まず、この競技を単に「高飛込」という人が多いのですが、「飛込競技」の中には、「高飛込」と「飛板飛込」があります。「飛板飛込」に関しては、1メートルと3メートルがあります。そして、「高飛込」は、5メートル、7.5メートル、10メートルとあって、競技によっては、飛ぶ高さの制限があるのです。例えば、「飛板飛込」では国体の場合は3メートルのみとなっていますが、「高飛込」については、どの高さを選んでもよいことになっています。 遠藤 そうすると、例えば6回の試技がある中で、飛び込む高さを変えてもよいのですか。 内藤 それも可能です。国体ではそれが可能なのですが、ただ、日本選手権クラスになると「高飛込」については、10メートルに限定されます。 遠藤 樋口さんと山本さんは現在、静岡県富士水泳場の職員になっていますが、一日の練習スケジュールはどのようになっているのでしょうか。 山本 職員としての勤務時間が朝8時から夕方5時30分まであります。その後、30分から1時間程度ウォーミングアップをして、6時半ごろから9時くらいまで水に入ります。その後、筋力トレーニングをやり、大体10時くらいに終了します。それが平日です。また、合宿時は練習が朝9時から始まって、夕方5時から6時ぐらいに終わります。 遠藤 選手として、食事などで心掛けていることはありますか。 山本 特に気を使って食事をしているということはありませんね。 |
||||||||||||
山本 なんて言ったらいいのかなー。飛び込み台の上って、ほんとうはすごく怖いんですよ。でも、競技に集中できてくると、その怖さが消えていくんです。言い換えると、10メートルの高さに立って集中すれば、もう怖くない、といったほうがいいですね。もし、「怖い」って感じるときがあったら、調子が悪いときです。集中するっていうことがいかに大切か、この競技をやっているとつくづく感じますね。 遠藤 樋口選手にお聞きしますが、鼻や耳に水が入るとか、着水時の衝撃などはどんな感じですか。 樋口 水に入る瞬間までは目を開けています。耳や鼻は平気なんです。ところが手にかかる衝撃というのは非常に強いです。 遠藤 プールの底に対する恐怖感というのは。 山本 上手に着水できないと深くまで入れないのです。選手にとっては空中だけが競技ではなくて、垂直にまっすぐ入らなければいけないのですが、空中でちょっと失敗した動作を水の中で修正するのです。実際には3メートルぐらいの深さまで入るのだと思います。 内藤 この2人くらいのレベルになると、水の中に入ってからのテクニックの方が非常に大事なんですよ。一般の人は空中の状態しか見ませんが、試合のときには水面下で、どれくらい自分のイメージしている演技の意識ができたかによって、内容が変わってしまいます。 遠藤 これまでに、飛込に失敗しておなかを打ってしまったというような経験がありますか。 山本 あります。顔を打って鼻血が出たとか、助けてもらったとかいうようなこともあります。と言うのも衝撃によって運動神経がマヒしてしまって、体が動かなくなって助けてもらったことがありました。 樋口 私は、そこまで強烈な衝撃を受けたことはないですね。 山本 つまり、失敗して体にダメージを受けるというのは、一瞬にして起こることなんです。 内藤 初心者のころは、飛び込んだあとで気がついたら痛いというように、どこのところが失敗だったのかわからないわけなんです。だんだんとレベルが高くなると、ある程度の防御はするのですが、自分が思っていた以上の失敗のときに防ぎきれなくて、ダメージが残ってしまうんです。この2人については、一日中見ていても危ない落ち方というのは、まずありません。
樋口 全身ですね。 内藤 樋口選手の場合は、全体的なバランスに重点を置いたトレーニングを意図的に入れていきたいと考えています。彼女は、腹筋が強いかと聞かれれば強いですし、背筋が強いかと聞かれれば強いんです。それをうまく効率よく使えるようにトレーニングを進めているところです。 遠藤 山本選手の場合は。 内藤 彼の場合、筋力は天性のすばらしいものを持っています。特に瞬発的なものについては、いろいろなスポーツのプロ選手を含めた一流選手の中でも上位にいくのではないかと思います。すでから、このように恵まれた筋力を、飛込競技で柔軟に使うことなんだと思います。 |
||||||||||||
遠藤 ところで、集中力を高めるためには練習だけではなくで、余暇などを含めた気分転換も大事ではないかと思うのですが。 山本 僕の場合は、「飛込」のことを忘れるようにしますね。基本的には、練習が終わったら、とりあえず忘れて好きなことをやるというのが気分転換になるんで。精神的にもハードなスポーツですので、気持ちの切り替えをしないと持ちません。けれども、調子が悪いときに限って、練習のことを引きずってしまいますね。好きなことはいろいろありますが、買い物や映画、ドライブなど、みんなとあまり変わらないと思います。 樋口 私は、人とおしゃべりすることによって、また、次の飛込もがんばろうというような気持ちになります。この職場には、同じような年代の人がいるのでよく話をします。
だから飛込の場合は、メンタルトレ−ニングに選手も興味を持ちますし、そういった講習などもかなり取り入れています。そういうトレーニングを積極的に取り入れていかないと、これからは勝てないのではないかと思います。 遠藤 練習中は観客がいませんが、観客がいるのといないのとでは気持ちが違いますか。 山本 観客はいた方がいいですね。やはり、飛込をやっている選手というのは、少なからず目立ちたいという気持ちもあると思うので、人がいた方がやり甲斐を感じるのではないでしょうか。こんな大舞台で、一瞬ひとりだけというのは、スキーのジャンプか飛込くらいのものですから。 遠藤 一瞬の間で、1回1回がうまくいったかどうか本人も分かるのでしょうか。 樋口 7割か8割は分かりますね。しかし、もっと強くなるのには、それ以上分からなければいけないと思います。ですからコーチのアドバイスがすごく大切です。 |
||||||||||||
遠藤 「NEWわかふじ国体」に向けて、いよいよ予選が始まりますし、これからどのようなスケジュールになっていますか。また、国体を迎えるに当たっての抱負も。 山本 6月後半から試合が重なってきまして、まず関西方面に遠征して、それから関東の試合に出て、そして、国体予選も兼ねた東海大会があります。これらの競技で試合勘というか勝負の場面を経験しておいて、8月には日本選手権があるので、この試合に勝つことを当面の目標にしています。 樋口 「高飛込」と「飛板飛込」の両方の出場を目指します。 内藤 こちらに来て、2人とも競技に対する意気込みがぜんぜん違いますね。勝ち負け以前に心が育っているというか、うまく言えないけれども、闘志のようなものが感じられるようになりました。また、2人とも選手生活を離れるときが、いつの日か来ると思いますが、今は分からなくとも、今の経験、苦しみ、やり遂げようという闘志が、競技を離れた人生でもプラスになると思います。 遠藤 ぜひ、「NEWわかふじ国体」では優勝するようにがんばってください。一所懸命、応援します。 (6月5日インタビュー) |
||||||||||||
|
《プロフィール》 樋口まゆみ(ひぐち・まゆみ)選手 石川県出身。小松市立高校、日本体育大学、河合楽器製作所を経て、14年5月から静岡県富士水泳場勤務。日本選手権−飛板飛込3回優勝、高飛込4回優勝、3mシンクロ3回優勝、国民体育大会−飛板飛込2回優勝、高飛込8回優勝、2002年釜山アジア大会日本代表など。 山本敬樹(やまもと・けいじゅ)選手 静岡県出身。興誠高校、日本大学、河合楽器製作所を経て、14年5月から静岡県富士水泳場勤務。室内選抜−高飛込優勝(12年度)、日本選手権−3m板飛込8位(14年度)、高飛込4位(同)、国民体育大会−3m板飛込4位(同)、高飛込4位(同)など。 内藤英樹(ないとう・ひでき)コーチ 静岡県出身。川口市立高校、日本大学、河合楽器製作所を経て、14年8月から富士市総務部国体事務局勤務。室内選抜−板飛込優勝など。世界水泳大会日本代表コーチ(13年)、アジア大会強化コーチ(14年)など。 |
|||||||||||
▲TOP | ||||||||||||
←前へ戻る | INDEX | 次へ進む→ |