込山町長

  静岡県の北東、山梨県と神奈川県に接する小山町は、新東名の開通、東京オリンピック開催の「2020年に向けて猪突猛進、アクセルを踏み込んで」いるところです。「富士のふもとに、『三来(みらい)拠点』」と銘打って、さまざまな開発計画に取り組む同町の込山正秀町長にインタビューをしました。(聞き手は、臼井良太理事、原廣太郎総務・広報委員長、林則夫委員、鈴木博昭沼津建協広報青年委員会委員)

沼津建協からは鈴木博昭広報青年委員会委員と佐藤仁事務局長も同行しました
▲沼津建協からは鈴木博昭広報青年委員会委員と佐藤仁事務局長も同行しました

委員―内陸フロンティアの取り組みについてお話しください。


「富士のふもとに、『三来拠点』 3つの未来がはじまるまち‐おやま」というキャッチフレーズで進めています。湯船原地区、新東名の大御神パーキングエリア周辺、足柄の現東名のサービスエリア周辺の3地区を開発していこうということです。

総合特区の指定書
▲総合特区の指定書

 湯船原と新東名PA周辺の2カ所は、内閣府の地域活性化総合特別地区(総合特区)の指定を受けました。また、もう1カ所追加ということで、足柄SA周辺も、特区にはなりませんでしたが、静岡県版の特区が始まったということで、先の2カ所と合わせた3カ所を静岡県に申請しました。(注・インタビュー後の6月3日、静岡県から内陸フロンティア推進区域として指定を受けています)
 町としては機構改革で、この4月から「未来拠点課」という担当課を作りました。この課には国土交通省、静岡県から職員が来ていただいて、一緒に取り組んでいます。

内陸フロンティア 1枚目(表紙)
▲小山町『内陸のフロンティア』を拓く取組~ 静岡県駿東郡小山町
内陸フロンティア 2枚目(将来土地利用)
▲将来土地利用構想図

委員―では、「三来拠点」の計画を説明していただけますか。


まず湯船原地区です。

内陸フロンティア 4枚目(湯船原地区)
▲湯船原地区(将来土地利用構想図)

 静岡県企業局が平成26年度から4年間で、約30ヘクタールの工業団地を造ります。予定としては、26年度に造成設計を上げて、土地の買収を始める準備をしています。
 今回の開発手法は、進出企業が決まってから行うオーダーメード方式ではなく、先に工業団地を造って誘致するレディーメード方式を採用しています。町としては企業誘致に動いています。一つ引き合いがあり、まず、それを決めようかというところです。
 ここは「木質バイオマス発電を中心とした産業拠点整備事業推進区域」ということで、木質バイオマス発電所を造ります。災害時にも電気を供給できるようにする。それととともに、森林整備にも力を入れている中で、残材をなくすなど「森の循環」をしよう、資源循環型林業の構築をしようということです。
 近くには昨年11月に開業した製材所があります。これは年間約2万立方メートルの木材が引ける県で一番の工場です。そこにどんどん間伐材を集め、またそこから出た端材をバイオマス発電に使う。この4月には、木材の集積センターもできました。これは大きなもので、仕分け処理機械が入れてあり、3次元で仕分けします。
 また、新東名の近くに「次世代施設園芸導入加速化支援事業」ということで、大規模施設園芸団地を整備します。約4ヘクタールの施設ができます。事業費は13億5000万円を見込んでいます。既にアメーラーのトマトの進出が決まりました。平成26年度、27年度の2カ年で進めます。
 これは農林水産省の事業で、全国で6カ所(小山町の他は、北海道苫小牧市、富山県富山市、兵庫県加西市、高知県四万十町、宮崎県国富町)が決まりました。農林水産大臣がオランダに視察に行き、施設園芸団地を見て、日本でもやろうということで予算が付いたのです。忙しい話だったのですが、小山町に呼ぶことができました。

内陸フロンティア 3枚目(小山PA周辺地区)
▲小山PA周辺地区(将来土地利用構想図)

委員―次の小山PA周辺については。


 「小山パーキングエリア・スマートインターを活用した地域産業集積事業推進区域」ということで、整備を進めます。富士スピードウェイのすぐ隣なのです。ここにはフルセットの大型トレーナーが通れるスマートインターができます。この上を開発していこうということです。五叉路になるため、ラウンドアバウトの交差点も整備します。
 ここは、土地区画整理事業で進めようということで、もうB調査も終わって、細かい設計まで発注してしまいます。モータースポーツ関連の産業エリアをつくろうと考えています。また、観光物産のエリアなども考えていこうとしています。

内陸フロンティア 5枚目(足柄PA周辺地区)
▲足柄PA周辺地区(将来土地利用構想)

「家・庭一体の住まいづくり」の舞台となる南藤曲団地
▲「家・庭一体の住まいづくり」の舞台となる南藤曲団地

委員―そうした開発計画の一方で、雇用ということではいかがでしょうか。

 今、人がいないのですよ。いなくて困っている。だから、隣接する山北、松田、山中湖村から人を集める計画をしています。
 それと同時に定住政策にも力を入れます。静岡県の「家・庭一体の住まいづくり」第2号を町で進めます。

 ことし3月に宅地造成特別会計を作りました。南藤曲という宅地がありますが、ここを活用します。既に大きな浄化槽も、調整地もできています。民間の力を借りていこうと、設計と施工を一緒にしてプロポーザルで進めます。事業費を当初予算で計上していましたので、7月中旬にプロポーザルで業者を決め、7月末にも契約する予定です。

委員―昨年世界文化遺産に登録された富士山も重要な資源ですね。


 都市計画法第34条の2項(開発許可の特例)によって、観光地の調整区域にホテルなどの施設ができることになりました。富士山の眺望がいい所、特に須走地区などが候補地でしょう。6月補正で予算を計上したので、34条の2項の調査を実施したいと考えています。

委員―いろいろな計画をお話しいただきましたが、今後それらを進めていく上でどのような課題があるのでしょうか。

課題は資金ですよ。財源ですね。いろいろ知恵を出してやっていこうと思っています。どこまでできるかというところですが、町としても100年に1度のめぐり合わせの事業です。100年の計ということですから、「お金がないからできない」では進みません。だから、どんどんやっているのです。
 とはいえ、このために他のことが滞ってはいけませんから、ある程度バランスを保たなければならない。
 内陸フロンティアだけは4年でめどをつけたい。区画整理にしてもその間に事業を進め、後のことは若干遅れても仕方がありません。今でなくてはできない。静岡県の内陸フロンティアに乗ってやるしかありません。

込山 正秀(こみやま・まさひで)氏

 昭和62年に小山町議会議員、平成 7年 静岡県議会議員当選し4期を務め、平成23年 に小山町長に。町のホームページに「らしんばん」というエッセイを掲載。職員の勉強会鉞創塾(えつそうじゅく)を設けるなど積極的な施策を展開し、「わが町で生まれ育った金太郎の名に恥じない『金太郎のような元気な町』」づくりに取り組む。金太郎つながりで、エジプト出身の大相撲力士、大砂嵐金太郎を町を挙げて応援している。

▲TOP