「安倍川橋 建設100周年」
-大正から現在へ受け継がれる技術と思い-

竣工年月を記した橋名板(弥勒側)
丸子側からの安倍川橋 

 旧東海道の府中宿と丸子宿をへだてる安倍川に架かる安倍川橋(別名 弥勒橋)は、1923年(大正12年)7月に来たる車社会に対応すべく建設され、今年7月に建設100周年の節目を迎えました。

安倍川橋の歴史と概要

二代目安水橋

 安倍川橋の始まりは、1874年(明治7年)に地元の実業家である宮崎総五氏が私財を投じて架けた木製の「安水橋」です。この橋は、静岡県内の4大河川(富士川、安倍川、大井川、天竜川)に架かる最初の橋として完成しました。橋の建設には失業した川越人夫に対する雇用対策の側面のあったようです。そして、1903年(明治36年)には、初代の橋より約40m上流に、木鉄混合製の二代目「安水橋」が架け替えられました。

 三代目となる現在の安倍川橋は、橋の長さ、桁の数で日本有数のボーストリングトラス橋(鋼橋)として1923年(大正12年)7月に完成しました。当時の鋼材接合にはリベット接合が用いられ、高温に熱したリベットを取り扱うため、職人の素早い作業が求められていました。

 その後、1968年(昭和43年)には、自動車交通の急増に伴い、自動車と歩行者がそれぞれ安全に通行できるよう、歩道が設置されました。また1990年(平成2年)には、渋滞対策として丸子側の2連のトラスを撤去し、右折車線を含む3車線分の幅を持つアーチ橋に架け替えられました。その後も塗り替え工事や地震対策工事が行われるなど、より利便性や安全性を高める改良が進められ、現在に至っています。

上部リベット打ち(写真提供:三井住友建設(株))歩道設置工事

100周年記念プロジェクト

 静岡市では、建設100周年の節目を迎えるにあたり、安倍川橋の歴史を振り返るとともに、次世代へつなぐための取り組みを実施しています。

記念事業1
 まず地元の小学校3校(長田北小、田町小、駒形小)と協力して「安倍川橋散策マップ」が作成されました。マップは安倍川橋をはさんで「にし編」「ひがし編」の2種類作成され、安倍川橋の歴史やヒミツ、地元小学生が調べた安倍川橋周辺の魅力を紹介しています。またマップに掲載したQRコードを読むと、子どもたちが調べてまとめたスライドや活動の様子をご覧いただけます。

 
安倍川橋散策マップ ひがし編 安倍川橋散策マップ にし編
※ダウンロードは 静岡市HP

橋名額に復元された「安倍川橋」の切り文字
竹灯籠でライトアップされた安倍川橋

記念事業2
 安倍川橋の建設当時、橋名額には「安倍川橋」の切り文字が掲げられていましたが、いつのまにか無くなっていました。無くなった経緯や行方を調査しましたが、資料が少なく詳細は分からないようです。今回、100周年の記念として「安倍川橋」の文字が復元されました。


記念事業3
 地元小学生が自ら電動ドリルを使って竹筒に穴を開けて竹灯籠を作り、この竹灯籠を使って安倍川橋のライトアップが行われています。
 使われた竹は、「竹林活用研究会アルケミスト(代表 滝井元博氏)」の協力のもと、長田北学区の向敷地の竹林から調達したそうです。
 4月29日に点灯式が行われ、約350個の竹灯籠に明かりがともると、周辺は幻想的な雰囲気に包まれました。ライトアップは、8月6日までの期間、午後7時から11時まで点灯されていますので、是非一度ご覧下さい。

今夏、登録有形文化財に新規登録

 大正から現在までの技術を融合させながら、我々の生活を支えてきた安倍川橋は、今年夏頃、登録有形文化財に新規登録されます。正に100周年をお祝いするこの登録により、多くの方々が、改めて安倍川橋の歴史を学び、地域の魅力を再認識する機会になるとともに、末永くこの安倍川橋が大切に使われ続けていくことを願っています。

安倍川花火大会安倍川もち

■所在地:静岡市葵区手越