栗山社長
 

山口課長

 浜松市新清掃工場及び新破砕処理センター施設整備運営事業が令和5年度末の完成を目指し、順調に工事が進められている。浜松市天竜区に新たな清掃工場及び破砕処理センターを建設することで、将来にわたり安定したごみ処理を実現。また、処理の段階で発生する温水を利用した付加価値事業にも注目が集まっている。そこで、同事業を推進する浜松市環境部廃棄物処理課新清掃工場建設担当課長の山口佳伯氏、設計・建設を担当する日鉄エンジニアリング㈱でプロジェクトマネージャー兼所長を務める吉田一氏、付加価値事業を行う金子コード(株)事業統括本部食品事業部事業部長の中村秀憲氏に話を聞いた。


【聞き手】
 天竜建設業協会 広報委員会
  清水 充 委員長
  飯島 雄一 副委員長
  道林 尚人 委員

委員  事業の全体概要を教えてください

山口課長

山口  新清掃工場及び新破砕処理センター施設整備運営事業は、民間企業の知見などを活かしていただくためPFI事業で進めており、特別目的会社の株式会社浜松クリーンシステムに発注しています。そのうち工場本体については、日鉄エンジニアリング株式会社が施工しており、一日に399トンのもえるごみ処理が可能な焼却炉を備える新清掃工場と、一日64トンの処理が可能な新破砕処理センターを備えた施設を建設しています。清掃工場の炉内の最高温度は1800度にも上り、運転のサイクルで止めたり動かしたりすることで、熱により膨張収縮を繰り返すため機器へのストレスが大きい施設になります。そのため清掃工場は30年ほどで建て替えが必要になるので、敷地内には建て替え用の土地も用意しています。建て替えが必要になるまではその土地と温水を利用して付加価値事業を行っていただく予定です。

敷地南東より全景

南西側より全景

委員  施設の特徴をお聞かせください

吉田所長

中村部長

山口  新破砕処理センターでは、生活に伴い発生するごみを破砕処理、選別処理し、再利用される形にします。選別処理は機械に頼ることが難しく多くの人手が必要になりますが、社会福祉法人天竜厚生会に協力企業として入っていただいており、常時18人が従事する予定です。また働き手に関しては、運営開始から10年ほどをかけて技術継承していき、完全に地元のスタッフで運営することを目指しています。2つ目の大きな特徴として、資源物を除いたごみはもえるごみとともに高温溶融処理によって、スラグとメタルに生まれ変わります。スラグは肥料やコンクリート二次製品、舗装用骨材等の土木資材として、メタルは重機のカウンターウェイトなどの材料として活用されます。これにより、最終処分場で埋め立て処分される灰の量を施設に搬入されるごみ総量の3%に抑えることができます。

委員  工事の進捗状況は

吉田  工場の竣工は2024年3月末ですが、23年8月には電気が入り機器の試運転を開始する予定です。10月末にはごみ溶融炉に火を入れる予定で、11月からはパッカー車にてごみを搬入し、本格試運転を始めるため、10月末までにはある程度の形にできるよう、500~600人の作業員が懸命に働いています。一時はコロナウイルスや半導体不足などの問題がありましたが、予定通り進められています。

委員  付加価値事業について教えてください

中村  約1.6ヘクタールの土地を浜松市からお借りして、現在も天竜区春野町で行っているチョウザメの養殖と、スラグや温水を活かしたトロピカルフルーツや野菜の農業を同時に行う予定です。土地の引き渡しが24年4月になりますので、それから工事を行い、24年下期から順次稼働させる見通しです。今回のチョウザメ養殖の特徴は、廃水ゼロエミッションで行うことです。チョウザメの水槽から排水されるエサや排泄物を含んだ水を、植物の栽培で栄養として使用して水を浄化し、水槽の水として閉鎖的に循環させる予定です。これによって、チョウザメの養殖を行うことで施設から排出される汚れた水をゼロにすることができます。

委員  新しい施設にどのようなことを期待しますか

山口  ただごみを処理するためだけの施設でなく、処理の中で生まれるエネルギーや資源を最大限再利用し、埋め立て処分される灰を最小限に抑えることを目指しています。ごみを燃焼溶融する際に発生する熱を利用しボイラーで蒸気を作り発電する、発電に利用したあとの蒸気には80度ほどの熱エネルギーが残っているため、それを温室や養殖などの付加価値事業に利用する、処理によって出たスラグやメタルなどもまた利用するというように、エネルギー系と廃棄物系すべてをリサイクルする施設になります。また、見学者用のルートや付加価値事業地までの歩道を用意していますので、地域児童の環境学習を行える施設でもあります。ごみが搬入され、処理して発電するシステムやそれらの仕組みの展示、ごみから生まれたエネルギーや資源で育てられる植物や生物の見学まで一貫して行うことができるようになりますので、ぜひたくさんの人に足を運んでいただきたいです。

■事業会社:(株)浜松クリーンシステム
■建設場所:浜松市天竜区青谷地内

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