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  特 別 企 画
座談会/静岡県の環境施策
環境問題とまちづくりへの視点

出 席 者

・山田  好徳 静岡県環境森林部環境総室長

・静岡県建設業協会広報部会委員、環境・災害対策委員会委員長
山田 好徳環境総室長 広報部会と環境・災害対策部会委員長

委員 21世紀は「環境の世紀」と言われています。「環境」は、これからの時代のキーワードだということはまちがいありません。建設産業界も当然、さまざまなかたちで環境問題とかかわっています。そのなかでも、地域や街や都市を「人間が住みやすい環境にしていく」、というところが、わたしたち建設業界が貢献できる分野ではないでしょうか。そういったことを中心にこの座談会を進めていきたいと思います。その前に、県でも多くの環境施策が展開されていますので、山田総室長から静岡県の環境政策、施策はどのようになっているのか、お話をお聞かせください。

『環境快適空間「しずおか」の創造』を基本目標に策定された新しい静岡県の環境基本計画(写真はその概要版表紙)

山田 県は本年4月に、平成9年に策定した環境基本計画を見直して、新しい「静岡県環境基本計画」を策定しました。最近の環境問題は、単なる保護や保全ということだけでなく、8月26日から9月4日にかけてヨハネスブルグで「環境開発サミット」が開催されましたが、地球温暖化の問題、ダイオキシンなど有害な化学物質の問題など、環境そのものが複雑・多岐になってきました。そういうことに的確に対応しようというのが新しい環境基本計画です。平成14年から22年までの9年間を計画期間にしています。
 この計画は、『快適環境空間「しずおか」の創造』を基本目標にして、この目標を達成するために、五つの将来像を描き、それを実現するための施策の展開として21の基本方向を示し(別表参照)、さらに具体的な370本程度の施策を掲げました。そして、それぞれの将来像を数値として示すこととし、目安となる代表的な環境指標をそれぞれ二つずつ取り上げて、平成22年度の目標数値として設定してあります。
 これらのうち建設産業界に関係する分野の例をあげてみますと、『循環型社会「しずおか」』におきましては、省エネルギーに配慮した都市環境の整備促進として、建築に携わる方の指針としての「しずおかエコロジー建築設計指針」による環境負荷の少ない建築物づくりの普及をお願いしています。ゼロエミッションの推進ですと、「リユース・リサイクルの推進」として建設廃棄物のリサイクルの促進、また、自然共生型の社会を将来の世代に継承していこうという『自然と仲良し、うるおい「しずおか」』では、多自然型の川づくりや海浜地域の保全と復元、親水空間の創造、都市公園などの整備や屋上緑化の促進などをかかげています。
 以上が、新しい環境基本計画の全体像で、今年が初年度です。22年度を目指して、さまざまな施策を展開してまいりますが、この計画を実効性のあるものにするには、県民のみなさまをはじめ、事業所、家庭、行政などいろいろな場面での環境への配慮が重要です。だれもが環境を大切にする、環境保全のために行動する―といったことをぜひ実践してほしいですね。

新しいエネルギー

委員 建設にも関係するところがたくさんあるということですね。具体的な課題でいくつかお聞きします。新しいエネルギーの問題ですが、風力とか太陽光発電はどうなっているんでしょうか。
山田 環境基本計画の中で、化石燃料に変わる新しいエネルギー源の導入につきましては、県も力を入れています。「しずおか新エネルギー等導入ビジョン21」(平成8年3月策定)により進めていますが、より戦略的に展開していくため、現在新たなプランを策定中です。太陽光、風力発電、燃料電池、水素エネルギー、バイオマスエネルギー、こういうものを新しいエネルギーとして考えています。
委員 公共施設などにそういったものを導入していこうというお考えはあるのでしょうか。
山田 施設の種類や構造によっても違うとは思いますし、どういう目的で(新エネルギー源を)付けるかということもあります。つまり、その建物に最も効率的なエネルギーを使っていくということですし、全体的なエネルギー消費量で一番適切なエネルギーを選択していくのが基本になります。そういうなかで、市町村の公共施設や県の施設への積極的な導入に努めてまいります。

屋上緑化

委員 東京都では屋上緑化をさかんにやっています。静岡県の場合はどうでしょうか。
山田 都市の緑化の促進として、計画の中で当然取り上げています。県ではすでに下水道の浄化センターの上部で取り入れたり、浜松文化芸術大学にも屋上緑化をほどこしましたし、積極的に導入していくこととしています。東京都の場合は、都市緑化ということもありますが、ヒートアイランドの問題、それがかなりの状況になっていますから積極的なんですね。静岡県の場合は、東京都ほどではありませんが、都市緑化や温暖化対策を含めて、快適な生活環境をつくるため、これからも力を入れていきます。

中水道

委員 資源を循環的に利用しようということで水道水をそのまま使うんじゃなくて、中水を利用しよう考え方があります。
山田 物を循環的に使う、水もそうしましょうということで、新たに建設される県の施設における雨水の利用施設や処理水の再利用施設を、積極的に導入していきます。また、水だけでなく、環境基本計画では、一番最初に「ゼロエミッションの推進」を持ってきました。これからの社会は循環型でなくては立ち行かなくなるでしょう。廃棄物のゼロエミッション、ゴミを出さない、再利用・再使用する、燃料化する、これらを基本にすえてやっていかなくてはならないでしようね。

環境に配慮した道路

委員 県がつくった西天城高原道路は、「自然にやさしい、動物にやさしい道路」という思想でした。交通渋滞による排ガス問題も含めて環境に配慮した道路についてはどうでしょうか。
山田 前半は自然との共生ですね。自然にやさしい土木施設の整備をめざし、道路については「富士の国 夢ロード(静岡県道路環境計画)」により、平成6年から取り組んでおり、西天城高原線については、県としてはじめて本格的な自然環境共生型の道路として、平成10年度に建設しました。道路だけではなく、自然共生型の社会資本整備、多自然型の河川整備とか人工海浜など、道路、河川、砂防、海岸でさまざまなかたちで進めています。排ガス問題と道路ですが、これは交通量の総量をどうしたら抑制できるか、コントロールできるかということです。もうひとつは、低公害車の利用です。全般的な交通対策と低公害車の導入、こういうことをあわせて、排ガス対策としていきます。環境森林部でも、道路沿いの排気ガスがどういう状況になっているのか、観測点を設けて常時監視しています。

建設廃棄物のリサイクル

委員 発注者側も苦慮していると思いますが、建設リサイクルの問題はどうでしょうか。現状は、コンクリートにしてもアスファルトにしても再生したものを発注者の使用量が少なく、活用率が低い。行政がもっと積極的に使っていかないと、いつまでたってもこの問題は促進されません。
山田 アスファルトやコンクリートは再生利用が比較的進んでいますが、木質系廃棄物のリサイクルがなかなか進んでいません。いまは40%くらい。そこで県の環境森林部と都市住宅部でなんとかリサイクルのシステムを構築していこう、15年度くらいまでにはこのシステムを立ち上げたいと、検討を進めています。
委員 産廃の80%、90%は再利用しなさい、行政がそのくらいの強制でもしていかないと、循環型といってもなかなか理想に終ってしまいます。私たち民間企業もいろいろな知恵を出し工夫してリサイクル製品の開発や利活用を進めています。そういった民間の知恵や技術を利用してもらったり、逆にこういう方法はないかとテーマを出してほしいですね。
山田 法律的にはリサイクル法にのっとってやっていきます。しかし、いまやっているシステムのなかでうまいものが考えられればいいんですが……。県もその部分がなかなか進まないのは分かっていますので、知恵を出しあって進めていければと思います。

電線地中化

委員 わたしたちは、景観ということも環境の大事な要素だと考えています。例えば都市景観でいつも問題になるのは電柱です。建築を景観の一つの要素として見た場合、電線が建物を横切っているかいないかで全然見映えが違ってきます。遠景もきれいに見えます。そういう意味で、環境の一環として県でも今以上に電線の地中化事業、共同溝整備を進めていただきたいですね。
山田 電線の地中化、これにつきましては電力・通信事業者のみなさまのご協力をいただきすすめています。景観の話が出ましたが、景観となにかをミックスさせてといいますか、そういう方法も考えられます。例えば環境森林部が地球温暖化対策の一つとして、富士地区をモデルに煙突を少なくしようと考えました。これは、電気から天然ガスのコジェネレーションに振り替え、エネルギーを転換して、地球温暖化対策に取り組みながら、結果的に景観への配慮にもなり、さらに地震防災にも役立てよう、というものです。こういった方法での事業の進め方もこれからは考えてもいいのではないでしょうか。
委員 すべての社会・経済活動、生活のなかに「環境」と言葉が入ってきた時代だと再認識しましたし、もっと関心を寄せ、保護や保全といった面だけではなく、新しい環境づくりに建設業が貢献できるようにしていきたいと思います。ありがとうございました。

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