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時評  
沈まないために
 不況、不況といわれ続けて,何年がたったのでしょう。四十代の私は、社会
に出てはや二十年。社会人としての半分近くをこの不況と言う“異常な時代”
の中ですごしました。
変化
 バブルの残り香の有った頃は、社会的身分も低く(新入社員等)その恩恵を享
受出来たとは思えず、ただ、もうすぐ順番は廻ってくるぞと思いながら働く毎
日。私の家系は建築の仕事にたずさわり四代目になります。会社組織にしたの
は私の父、その前は、職人を抱える大工であり、いわゆる棟梁の家系でした。
長男であった私は、この業界の多くの二代目同様いくつかの衝突は有ったにせ
よ自然と家業を継ぐこととなり、先代も、この家業を継がせることに誇りを持
っていたでしょう。“外の飯を食う”意味で東京に就職をして先ほどの、“バ
ブルの残り香”を味わったわけです。新聞には、“戦後最大の○○景気をしの
ぎました”の文字を覚えています。ある意味この景気がずっと続くと信じなが
ら、「きっと何処かでツケがくるのだろうな。」と、漠然と感じていました。
バブルは当の昔に消え、“異常な時代”・不況は、実は何の異常でも無くそれ
を受け入れなくては何も出来ない“日常”になり会社単位のリストラ、会社運
営の見直し、とにかくこの何年かはこの業界に限らず、色々な事をやったはず
です。この建設業界も行政との関わりの中システムの変更、見直し等を行政に
働きかけお互いの利益のため試行錯誤の日々だったと思います。しかし、中々
良い方向に動いているようには思えません。ダンピングによる低価格の受注が
当たり前の中、先代たちの常識は、現在の非常識になり、マスコミによる報道
では、ダンピングは市場原理によるもので、“この結果、○○億円節税できま
した。”との記事が報道され、先代たちの“知恵”は、“犯罪集団の行い”と
して市民に伝えられました。
 先日、神奈川県横須賀市で入札制度の変更が記事として、新聞に出ていたの
をご存知の方も多いと思いますが、私は少なからず期待しています。この制度
がうまく作動すれば、少なくとも極一部の企業によるダンピング受注には効果
があるのではないでしょうか。建設業は、その成り立ちからして、行政との関
わりは深く発注者側の制度は、そのまま、我々建設業者に影響をおよぼしま
す。先にもふれましたが、“行政・建設業双方の利益”の為の制度・システム
作りは、今後も続けなければいけないと思います。
 職業は、“衣・食・住”に関連していれば、少なからず、安全だと思ってお
りました。確かに、職業として無くなる事は有りませんでした。しかし、その
様変わりはどの業界も凄まじい物を感じます。“ユニクロ・吉野家・回転す
し・そして住宅産業”など薄利多売・大量生産・大量消費を柱とする方向。
“ブランド品・高級食材・高級住宅・高級マンション”付加価値が付き高いと
判っていても欲しいもの。この二極化がこの時代の中で進んではいませんか?
気が付いた時に私達はどちら側にいるのでしょう。もしかしたら、もう、居場
所が無いのでは?
 この大きな時代の流れの中で、建設業界、まして、自分の出来る事はあまり
に小さく、弱い、しかし、この時代の流れの中、何時までも沈む事無く、“次
の世代にこの仕事の素晴らしさ、この仕事の必要さ”を伝えなければ。 バブ
ルも、不況も紛れもない現実であり、その時代に生きる為には、変わって行く
のが当たり前で、変われない物が沈んでいく。百年前の曽祖父が今を見たらど
うだろう、先代の常識はもはや非常識。今の私の常識は、何時まで常識でいる
ことが出来るやら。さて、“沈まない為にもまだまだ変わらなくては。”と思
う今日この頃です。
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