| 映画だけでなく、いま昭和30年代のリバイバルがあちこちでみられる。「復 |
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| 刻堂」のレトロなパッケージデザインのコーヒーやジュースといった商品類は |
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| もとより、アミューズメントの分野でも「台場一丁目商店街」などの昔の町並 |
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| みを再現した施設が各地にできている。今年3月に浜松市にオープンした食の |
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| テーマパーク「浜松べんがら横丁」は祇園のお茶屋街を意識したつくりで、時 |
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| 代は昭和30年代ではないがものの古き良き日本情緒が感じられる。 |
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| 我々の建築業界をみても和風デザインの人気が再浮上し、塗り壁や無垢板な |
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| ど天然素材の良さも見直されており、元帰りの傾向が見られている。 |
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| 時代を超えてもいいデザインや本物は残っていくものだが、このレトロブー |
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| ムや元帰り傾向は今の日本人心境を反映しているように思う。映画の中の夢や |
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| 希望が満ち溢れていた時代の躍動感に心躍らせ、人と人のつながりに心を熱く |
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| したからこそ、ここまでの大ヒットにいたったのではないだろうか。 |
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| 映画のラストシーン、夕焼けに染まる東京タワーを見て少年が「明日も50年 |
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| 後も夕日の美しさは変わらない」と叫ぶ。しかし、50年もしないうちに高度経 |
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| 済成長は成し遂げたが、その引き換えに大切なものを失ってきた。 |
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| このブームを表面的なものに終わらせないで、先行きの見えない不透明な時 |
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| 代の今こそ、温故知新の精神で原点に立ち返り失いかけたかけた大事なものを |
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| 取り戻したい。 |