ちょっと紹介特別編

「伝承太鼓に魅せられて
~駒越太鼓保存会~」

株式会社古川組静岡支店

執行役員/総務部長 古川勝

執行役員/総務部長 古川勝
▲執行役員/総務部長 古川勝

神社の境内。
パチパチと、かがり火の燃える音。
月明かりを頼りに・・・、
歩みを進めてみましょう。
きっと、聞こえてくるはずです。

「トーンガ トンタカタッタ」
「ドンドコ ドンドコ」
「コンコンキツネ コンキツネ」

今回は、太鼓の醸し出す伝統と幽玄の世界へ、誘(いざな)いたいと思います。

「駒越太鼓保存会の活動」

▲十月十六日の「お日待ち」には加茂神社(静岡市清水区)で太鼓を打ちます。
▲十月十六日の「お日待ち」には加茂神社
(静岡市清水区)で太鼓を打ちます。

私の所属する「駒越太鼓保存会」は、現在11名で、主に清水みなと祭りや神社のお日待ちなどで太鼓を打っています。

所有する太鼓は、大4台、中3台、締2台。大太鼓は直径60センチほどあり、重さは30キロにもなります。

年間行事として、さまざまな活動をしています。

1月初日の出(駒越の浜)、宝円山
5月蛇塚まつり
7月清水みなと祭り・地区前夜祭(忠霊塔前広場)
8月清水みなと祭り・総踊り2日間(さつき通り・港橋)
10月神社お日待ち(加茂神社、駒越神社、増・蛇塚地区)
駒越まつり(忠霊塔前広場)

そのほかにも、駒越地区文化祭、太鼓連絡会、花見など依頼のあった都度、打ちに行きます。

「トーンガ トンタカタッタ」
「ドンドコ ドンドコ」
「コンコンキツネ コンキツネ」

太鼓の打ち方を言葉で表すと、このようになります。太鼓は打ち方を見て、耳と目と手で覚えていくのです。会では、新しい会員への演奏指導のほか、「駒越小学校太鼓クラブ」の演奏補助や、太鼓運搬なども行います。

「活動の中心~清水みなと祭り」

丸い太鼓を介して、いろいろな出会いが生まれます。

会のメンバーとの出会いはもちろんのこと、2010年には、インドネシアの女性4人が会員となりました。地元メーカー企業の研修生だったのですが、一緒に清水みなと祭りで太鼓を打ちながら、太鼓もグローバルになったものだと・・・。

残念ながら彼女たちは、研修期間が終わり、帰国。「駒越太鼓保存会インドネシア支部」として、海の向こうで太鼓を打つと約束してくれたことも、良い思い出です。

▲背中に「駒」の字、腰に波頭の紺の法被が渋くて良いんです。
▲背中に「駒」の字、腰に波頭の紺の法被が渋くて良いんです。

清水みなと祭りでのエピソードは、枚挙にいとまがないほどです。

祭りと太鼓。切っても切れない縁で繋がっています。太鼓を打つ時は、半被、ドンブリ、ぱっち・・・などを身につけますが、これらは、みなと祭りの影響です。

自ずと身が引き締まる衣装を身につけ、総踊りを盛り上げるために、太鼓を担ぎ、港橋へと繰り出します。

そこでは、清水区内の太鼓連との交流、総踊りの踊り連や地元の人との交流などが生まれます。

そして、太鼓の気合いが踊りに伝わるのでしょう。曲が終わると、互いに拍手を送りあいます。

「太鼓の魅力」 

▲この日はお社も扉を開き、大勢の人がお参りに訪れます。
▲この日はお社も扉を開き、大勢の人がお参りに訪れます。

2013年の清水みなと祭りには、フラメンコ調の曲も新たに加わります。今から練習を重ねていきますので、ぜひ、8月にはさつき通りへお越しくだ さい。港橋周辺で、私たちの雄姿をご披露したいものです。

とは、言いますものの、やはり長年続けていますと、時には失敗もご愛敬。演奏の最初の曲間違えは、ベテランのメンバーでも度々あります。曲のリー ダーが最初に独奏しますが、緊張のせいか、予定曲とは違った曲を打ってしまいます。

しかし、ここからが太鼓の良いところです。フレキシブルで、臨機応変。

「トーンガ トンタカタッタ」
「ドンドコ ドンドコ」
「コンコンキツネ コンキツネ」

これらの組み合わせで曲ができているので、上手に軌道修正ができるのです。軌道修正がうまくいくと、メンバーの輪・和が強まる瞬間でもあります。

単純なリズムでも、強弱やテンポ、息の合わせ方や気持ちの乗せ方で、曲の仕上がりが違ってきます。そこに、場の雰囲気が加わり、全く同じ仕上がり・演奏はないと言っていいと思います。太鼓の難しさであり、面白さ、醍醐味だと思います。

良い演奏ができた時には、仲間同士思わず笑顔になります。

「伝承太鼓への望み」

私が太鼓を始めたのは、22~23年ほど前。自宅のある地区の盆踊りの余興演奏を見たのがきっかけでした。

太鼓と打ち手、打ち手同士、観客と打ち手―その場の調和、雰囲気がなんとも心地よく、太鼓に惹かれた瞬間でした。

今では、保存会として参加する行事のほかに、地元町内の盆踊り太鼓も打ちます。私の打ち姿を見て、太鼓を始めるきっかけとしてくれる人が、一人でも多く生まれてほしいものです。

そして、今後は、伝承太鼓の継承をライフワークに、次代会員の確保と育成にお役に立てたらと願っています。そのためにも、地元町内の太鼓振興にも、積極的に関わっていきたいと考えています。

太鼓を始めた当時に比べ、愛好者の数や団体が増え、清水の太鼓はますます盛んになってきていると感じています。とても、喜ばしいことです。やはり、「祭りには太鼓」――無くてはならない、ポジションを占めていると思います。

▲一台の太鼓を二人が違うリズムで打つこともあります。
▲一台の太鼓を二人が違うリズムで打つこともあります。

その一方で、新しい曲が増え、昔からの伝承曲が残り続けていけるのか、少し心配な面もあります。駒越太鼓保存会は、その名の通り、伝承曲を大切にしてきました。今後も、先人の思いをつなげていきたいと思います。

「トーンガ トンタカタッタ」
「ドンドコ ドンドコ」
「コンコンキツネ コンキツネ」

あなたも、バチを手に、太鼓を打ってみたくなりませんか。