栗山社長

栗山社長

 静岡市の東の玄関口である蒲原に今年7月、「蒲原トライアルパーク」がオープンします。道の駅整備事業に向けた暫定的な用地の活用として、市民や企業、行政が連携し、静岡を盛り上げるトライアル(試行)を重ねて進化していくコンセプトを持つという全国的にも例を見ない事業を展開する計画です。運営事業者には駿河重機建設株式会社(静岡市清水区)を中心とする5社で構成するスルガスマイル(2022年2月17日法人化)に決まった。「世界に輝く静岡」を掲げ、運営に携わる駿河重機建設株式会社の栗山勝訓社長にトライアルパークの今後や道の駅への道筋を聞きました。
(聞き手:静岡県建設業協会総務・広報委員会・佐野茂樹委員長、三尾祐一副委員長、奥山和弘委員)

委員 このプロジェクトに関する経緯を聞かせてください

栗山 もともとは5年前、静岡県が旧県立庵原高等学校のグラウンド用地約8600坪を売りに出し、その用地を弊社が砂利採取を目的に入札で取得いたしました。4年間かけて砂利採取を終わらせ、その後の用地活用として、この土地を静岡市に寄付し、その敷地に道の駅整備事業が立ち上がったことがきっかけです。

委員 用地を寄付した

栗山 われわれは、蒲原の需要な教育機関の一つである庵原高校の閉鎖は地域にとって大きな損失と捉えています。ただ座して待つのではなく、蒲原の将来を考え、用地を有効に活用するための地域の勉強会を立ち上げました。現役の大学生から銀行員などさまざまな人に参加いただいた勉強会により浮上した道の駅設置案を受け、連合自治会が静岡市長に設置の要望を出してくれたという流れです。
 道の駅構想の実現は困難でした。当社としては、砂利が計画量採取できたことで結果的には事業採算がとれ、この事業で得た利益は地域に還元するべきと考えました。そこで、全体のうちの約3000坪を静岡市に寄付し、構想の実現と進捗を図りました。寄付は昨年の8月付で完了しています。

委員 どのような経緯でトライアルパークに

栗山 順調に道の駅構想は進んでいましたが、2年前の新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、当初計画していた事業がとん挫してしまいました。
 ここで、コンサルタントに入ってもらっていた公共R不動産(東京都)から「コロナ禍だからこそできる事業を進めるべき。コロナを逆手にとり、趣向を凝らした公園をつくることで寄付部分だけでも生かしましょう」との提言をいただき、屋外での事業を主体とするトライアルパーク構想が立ち上がった訳です。
 パークは、トライアルサウンディングで実施します。社会実験と市場調査を掛けた造語ですが、テストマーケティングの場として知られる静岡らしく全国でも初めての例として実施することになりました。

トライアルパーク イメージ図

委員 トライアルパークの内容は

栗山 まず、企業に短期・長期でスペースを貸す出店エリア。ここでは展示会や販売会などを開催し、プロモーション拠点とします。となりの広場は通常時は休憩施設として、また事業者が短期で利用できる興行イベント広場としても活用します。その他、移動販売やマーケティング用のフードトライアルエリア、レンタサイクルや関連イベントを行うサイクルハブ、静岡・蒲原の魅力を伝える商品を受託販売するトライアルショーケースなどを設ける計画です。その他、臨時駐車場は、屋外映画館や展示スペースなどとして活用する予定です。トイレなどのサニタリー棟やオープンスペースになるカフェ、間をつなぐ屋根付き広場を設置する予定ですが、建築物はほぼ何もありません。その他は発想によっていろいろなイベントを実施して盛り上げていく構想です。
 新しい人の流れをつくり、4年後の道の駅構想に昇華させていきたいと考えています。蒲原には古民家や歴史的建造物、桜の名所など多くの見所があります。このトライアルパークで色々な仕掛けを打つことで、人を呼び寄せ、道の駅が実現して町の再興の契機とつながれば考えています。

委員 道の駅の構想とは

栗山 計画地は、富士山、伊豆半島、三保半島といった270度のパノラマ景色が望めます。道の駅が実現すれば、地元の材料を使ったお酒や農産物と海産物、地域色のあるイベントを実施して盛り上げていきたいですね。
 道の駅は、静岡市が運営するトライアルパーク、県の埋蔵文化センター、国の道の駅・国道があり、国・県・市がすべてに携わることになります。さらに、近隣の飛行場では自衛隊が訓練を実施しており、緊急時には輸送物資がここに集まることが期待できます。町のBCPとして、また災害時の拠点として活用できるよう計画を練っています。

インタビュー風景
(中央が佐野茂樹委員長、右が三尾祐一副委員長、左が奥山和弘委員)

委員 清水港フェリーとの連携は

栗山 自転車を趣味で乗っている方の適正な走行距離は50~100キロ前後と伺っています。清水港から土肥にフェリーで渡り、帰りの道を自転車で帰ってきてもらうことを想定しています。丁度、海岸沿いの堤防が長く自転車が走ることができるようになっており、その中継地点としてトライアルパークに立ち寄ってもらいたい。ここは、富士山の絶景から伊豆半島と三保半島を並んで眺めることができる数少ない絶景スポットです。車、船、自転車を網羅し、静岡県東部から中部で回遊性を持たせ、県全体に波及させていければ多いに盛り上がる可能性を秘めています。

委員 蒲原への大きな愛情が感じられる

栗山 当社は「蒲原から世界へ」というスローガンを掲げています。静岡市の入り口である蒲原という町を豊かにし、人を集め、発信していきたいと考えています。青年会議所でも多くのことを学び、仲間も増えました。国内でも先進事例となるこのトライアルパークが、世界に輝く静岡につながる原動力となり、変貌していく一助になるよう努力していきます。

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