栗山社長
 

 浜松市北区引佐町で建設業と東海地方最大の鍾乳洞「竜ヶ岩洞」を経営する(株)戸田建設。県西部地域で人気のパワースポットのひとつだが、オープンまでには多くの苦難があり、一時は計画の中止も考えたようだ。また、奥浜名湖観光協会の会長も務める戸田達也社長に地域の活性化に向けたインフラ整備の重要などについて話を聞いた。


【聞き手】
 静岡県建設業協会総務・広報委員会
  佐野 茂樹 委員長
  三尾 祐一 副委員長
  川和田 篤 事務局長
 浜松建設業協会総務・情報委員会
  京極 恒弘 委員長
  須山 雄造 副委員長
  鳥井 信育行 副委員長

取材風景

黄金の大滝

水神様

佐野委員長と三尾副委員長

委員  建設会社と観光事業である竜ヶ岩洞の多角経営をされていますが、その歴史についてお聞かせ下さい。

戸田  株式会社戸田建設は、祖父戸田貞雄が電動鋸1台で昭和21年に戸田製材を開業したのが始まりです。昭和23年に戦後復興による木材需要に対応すべく奥山木材株式会社を設立しました。奥山村初の株式会社となりました。昭和36年には木材を無駄なく使うため製材業に加えて建築業を展開するため父戸田昭朗が株式会社戸田建設を設立しました。建築業の傍ら耕地整備事業の土木工事受注に成功し、土木建設主体の体制になり現在に至っています。観光業の竜ヶ岩洞は石灰石砕石場跡地に発見した鍾乳洞です。貞雄が閉山して荒れていく石灰石砕石場跡地を地元のために活用できないかと考えていた時、知人の紹介で昭和52年に名古屋大学の地質学塩崎教授を訪ね、現地調査に来てほしいとお願いし翌年調査に来ていただき「ここは石灰石地層だし地形的にも鍾乳洞が形成されている確率が高そうですね」との報告を受け、貞雄の中に「鍾乳洞はある」になってしまいました。その後、洞窟探検家との出会いと協力により「黄金の大滝」を発見し鍾乳洞として開発整備が始まり、昭和58年8月8日プレオープン、同年10月8日グランドオープンとなりました。詳しいことは、「竜ヶ岩洞物語」をお読みください。竜ヶ岩洞売店にて、一冊500円で販売してます。

委員  ご苦労も多かったと思いますが。

戸田  洞窟は土砂で埋まっていましたので、それをまず取り除く作業から始まりました。機械力は使えませんので、ツルハシでほぐしスコップですくい一輪車で運び出す。この作業の繰り返しです。さらに洞窟内は、暗くジメジメし足元はぬかるみ歩くだけでも苦労しました。作業員も泥まみれになるので長続きせず、30m掘り出すのに約4か月もかかりました。そんな状況でしたので家族の説得や協力を得るのに苦労しました。また、旧引佐町役場や金融機関に資金協力をお願いしましたが、貞雄個人の道楽で、あるとも分からない鍾乳洞開発整備に資金協力はありませんでしたので、戸田建設単独事業となり苦しい資金調達となり、経営を圧迫し存続危機に陥りました。黄金の大滝の発見と戸田貞雄の熱意が伝わり、何とか遠州信用金庫引佐支店長の決断で融資が決まり、開発整備の継続が出来ました。今年、オープンして40年を迎えます。方広寺と龍潭寺と並んで引佐町の観光名所として認知されるようになりました。

委員  奥浜名湖観光協会についてお聞かせ下さい。

戸田  浜松市との合併前は引佐町、細江町、三ヶ日町それぞれに観光協会があり、さらに奥浜名湖観光連絡協議会が存在していました。合併を機に奥浜名湖地域の情報発信と誘客促進の機運が高まり、協議の末4団体を統合した奥浜名湖観光協会が誕生し、龍潭寺住職武藤全裕氏が初代会長となり「のんびり、ゆったりの奥浜名湖」をキャッチフレーズでスタートました。私は、大河ドラマ「女城主 直虎」放送決定後、2代目会長に任命されました。大河ドラマ館には78万人の来館者が訪れていただきました。「おらが町に大河ドラマが来た」を合言葉に誘客に努め、奥浜名湖地域の知名度向上に努めました。今回の大河ドラマ「どうする家康」においても奥浜名湖地域に訪れていただくように情報発信を行い、地域活性化に貢献していきたいです。併せて、浜松市は全国の市町村面積で2番目の広さです。浜松市に住んでいても奥浜名湖地域に行ったことのない市民もいますので、その人たちに向けても情報発信して小さな地域間交流を促したいです。さらに、外国人観光客に向けて奥浜名湖地域の魅力を情報発信し訪れてもらうように努力していきたいと思います。これからも「のんびり、ゆったりの奥浜名湖」を合言葉に、行政や奥浜名湖商工会など各種団体等と連携して、会員と共に観光協会を運営していきたいです。詳しい情報は奥浜名湖観光協会ホームページをご覧ください。

委員  西部地区は国道1号、新東名、三遠南信道整備、浜松湖西豊橋道路整備など道路網に恵まれて羨ましいと思うところがある。建設業と観光協会という立場から感じることは。

戸田  奥浜名湖地域は、年間を通して東名・新東名高速道路、三遠南信道路など使って多くの観光客に訪れていただいていますので、交通アクセスがよいことの強みを感じています。道路は生活や近隣地域との繋がりにおいてとても重要なインフラです。その道路が未整備であったり管理が行き届いていなくて使いづらさや通りづらさを感じると地域を離れたり通るのを避けたりしてその道路周辺が衰退していきます。道路はしっかりと整備、管理されていないといけません。気持ちよく使える道路は住民や通る人皆がありがたいと思うし、よそのからくる人から見れば羨ましく思うし、「この地域の行政はしっかりしていると」感じてもらえ、また行こうとなります。建設業者は、行政と連携をとって、道路などの公共インフラの整備、管理することで地域を支えていくことが使命だと思っています。

委員  社内に建設部門と観光部門がありますが、相乗効果を感じることや心掛けいているいることは。

戸田  物づくりの建設業と人を迎え入れる観光業は全く別業種ですので、実務は分かれています。お互いの知識と経験を生かす事ができること、なにより多くの人と関わることで、色々な考え方、思いを知ることは仕事をするなかで非常に大切なことです。良い物づくりや良い施設を用意しても、些細なことで悪い評価を受けてしまう事があります。それを打ち消す事は中々難しいことですので、日々対応方法を考え実践できるように心掛けています。戸田建設・竜ヶ岩洞が、地元になくてはならない会社だと思われるよう一生懸命やっていきたいです。

委員  道路を含めたインフラ整備が観光につながり、そして地域の活性化につながっていくことをあらためて感じました。人が回遊する持続可能な街づくりへ向け、今後のご活躍を期待しております。

【竜ヶ岩洞DATA】浜松市北区引佐町田幡193
 2億5000万年前の石灰岩地帯に形成された総延長1000mを越える観光鍾乳洞(一般公開は400m)。洞内は年間平均気温18℃、夏は涼しく冬は暖かく感じるため、季節を通じて神秘的な地底探検を快適に楽しめる。見どころは落差30mの黄金の大滝や、鍾乳石のシャンデリアが広がる鳳凰の間、ブルーライトの演出が美しい水神様エリアなど多数。
 見学料金は大人・高校生1000円(一般団体700円、学校団体500円)、中学生600円(一般団体500円、学校団体400円)、小学生600円(一般団体500円、学校団体300円)。見学所要時間約30分(混雑時約45分)、営業時間は午前9時~午後5時(年中無休)、無料駐車場は乗用車500台・バス25台、新東名高速道路いなさICから車で約10分。

竜ヶ岩洞ホームページ

▲TOP