掛川市と常葉大有志
マインクラフト内に高天神城を再現

 掛川市にある高天神城掛川市上土方嶺向3136 )は、かつて戦国期に徳川氏と武田氏が数度にわたる攻防戦を繰り広げ、その舞台となった山城として知られています。今回掛川市が常葉大有志メンバーの協力を得て、この山城を人気ゲーム「マインクラフト」の中に再現しました。歴史遺産がデジタルの世界にどのように再現されたのか。掛川市役所観光交流課の戸塚和美さんに話を聞きました。

「マインクラフト」内に再現された高天神城二の丸

「どうする家康」関連史跡、盛り上げの一手に

「デジタルの日」に戸塚さんが完成した高天神城をプレゼン

 戦国時代、武田氏と徳川氏が激しい争奪戦を繰り広げ、「高天神城を制す者は遠江を制す」とまで言われた山城、高天神城。2023年にはNHK大河ドラマ「どうする家康」でもその攻防戦にスポットライトが当てられました。「難攻不落であった高天神城は絶壁の山や縄張(城の全体設計)を今に残し、遠方からも歴史ファンが足を運ぶ史跡です。一方で若い世代には、あまり認知されていないことを以前から危惧しており、『どうにかできないか』と策をめぐらせていました」。

人気ソフト「マインクラフト」+静岡県提供の点群データ

 「マインクラフト」。ゲームソフト内に構築された仮想空間の中で、プレーヤーがブロックを積み上げて独自の拠点を建築したり、モンスターを倒しながら冒険したりと、自由度の高さで世界中のファンに支持されています。このバーチャルワールド内には実際の施設や街並みなど、さまざまな建築物を再現する試みが多くのファンによって行われており、大規模な建築物の再現はゲーム内でも話題となり、ファンの注目を浴びることとなります。
 その点に目を付け“高天神城+マインクラフト”のアイデアを形にしたのが、掛川市観光交流課と常葉大学造形学部の有志メンバー。ちょうど2023年度から同学内でマインクラフトを扱う授業が行われたこともあり、4名の有志メンバーらがゲーム内での高天神城建築に協力、地道で壮大な「ブロック積み」で多大な貢献をしました。
 また、約5万平方メートルにわたる高天神城の広大な地形データを再現するために大きな役割を果たしたのが、静岡県が提供している「静岡県中・西部点群データVIRTUAL SHIZUOKA」。詳細な地形データを一気に取得でき、基盤となる地形デザインが固まりました。マインクラフトで使用できる地形データに落とし込む「コンバート」作業には、地域のICTに強い団体Code for Kakegawaも協力し、データ化を実現できました。

学生たちとの制作の様子

「山城」の特性、ゲームに再現

 「山城」の魅力について戸塚さんに聞きました。「木が鬱蒼としげっている現在の高天神城跡に足を踏み入れ、子細な部分に目を向けてみれば、急峻な地形を生かした『天然の要害』と称される山城の意味を体感できます。ほとんどが斜面で構成された山城。この場所を攻める際にどんな危険が生じるか、想像してみることに価値があり、楽しさがあるのではないでしょうか」。
 「マインクラフト」内のプレーヤーも、高さのある場所から落ちればリアルと同様、ダメージを負います。切り立った崖を下から見上げ、また山城を登り切った高みから地平を見下ろす時、プレーヤーは戦国の世に思いを馳せることができるのかもしれません。

現地視察で高天神城を体感

「城下町」など派生コンテンツも視野に

完成した高天神城本丸

 完成した高天神城、「プレーヤーの皆さんがどう活用してくださるのかが楽しみ」と戸塚さんは話します。「マインクラフト」の自由度の高さは、発想次第で遊び方が無限に膨らむということ。「楽しい遊び方が見つかったらぜひ教えてほしい」とも。
 「戦国時代の高天神城には城下町はありませんでしたが、バーチャル城下町をつくって現在の掛川市の商店を再現しても面白いかもしれません」と、戸塚さんもマインクラフトに触発された遊び心を見せてくれました。

連絡先

 掛川市観光交流課
 電話番号 0537-21-1121