開設50周年の記念すべき節目を迎えた浜松市の「浜松医療センター」。その新棟が完成し2024年1月に稼働した。既存施設の老朽化に伴い2020年から新棟の建設工事を進めていたもので、世界最高クラスの高精度放射線治療システムや充実した救急医療室などを擁し、地域の中核病院としての役割はもちろん、災害拠点病院としても大きな期待が寄せられる。
今回、(一社)浜松建設業協会総務・情報委員会の京極恒弘委員長と須山雄造副委員長が施設概要や特徴、次の50年に向けて(公財)浜松市医療公社の鈴木達夫理事長に話を伺った。
新棟南側 背後の施設は左から3号館、2号館、1号館 |
医療機器を除いた新棟建設の事業費は約228億円、規模はSRC造7階建てPH2階延べ約39,350m2です。病床数は420床で、そのうち24床が救急病床となっています。今後は既存の3号館と渡り廊下棟を改修して継続使用し、1・2号館を解体して外来駐車場の混雑緩和、職員用駐車場の借地解消のため立体駐車場として整備します。全ての工事が完了するのは2028年3月を予定しています。
施設は実施設計の段階から施工者と技術協力を結び、施工面での工夫や特殊技術など、施工者のノウハウを実施設計に反映するECI方式を採用。正面玄関をはじめ建物内部は地場産材の天竜杉を多用し、清潔で温かみあふれる空間とした他、自然光が差し込む大きな窓を採用し明るい空間になるよう工夫されています。4階にある小児病棟からは空中庭園に出ることができ、患者と職員がリラックスできる環境を整えました。
また、コスト削減と省エネを図るため、エネルギーサービス(ES)事業を採用しました。これは契約した事業者(㈱シーエナジー)が、浜松市に代わってエネルギー供給についての資金調達から設計・施工・運転・維持管理を行うもので、契約期間中(15年間を予定)は事業者が設備を所有し、契約満了後に市に無償譲渡されるものです。
2階エントランスルーム | 正面玄関 |
空中庭園 | ヘリポート |
血液内科病棟 | 新棟と3号館を結ぶ連絡通路 |
特記すべきこととして、同じ場所で診断と治療ができるハイブリッドERやハイブリッドOR、世界最高レベルの高精度放射線治療装置、手術支援ロボットを有しており、血液内科病棟に無菌室を増設するなど、高度医療、救急医療、がん診療に威力を発揮します。また、屋上にはヘリポートを設けており、山間部や遠方から1分1秒を争う救急患者さんを受け入れます。そして災害時も地域医療の中心となって医療を継続する責務を担い続けます。
ハイブリッドER 救急患者に対してCT、血管造影やX線撮影、手術が可能で、 搬送されてきた救急患者を効率的に治療できる施設 | ハイブリッドOR 手術台と心・血管造影っ装置を備えた手術室。 高度な心臓血管外科手術や脳外科手術、整形外科手術が可能 |
リニアック(放射線治療機器) | 手術室廊下 |
地域医療を支える病院づくり | 多くの「思いやり駐車場」を確保 |
さらなる安全・安心な医療の提供を基本に、次の50年に向けたキャッチコピーを職員に募ったところ「健やかな未来に向かって」が選ばれました。新病院の構想段階から10年以上が経過しており、多くの人々の「思い」がこの病院には詰まっています。建物や設備は整いましたが、これまで以上に医療、看護の質を高めるとともにサービスをより充実させ、皆さまから愛され、そして期待に応えるよう、今後も職員一丸となって努力して参ります。
鈴木達夫理事長(右端)に話を伺う京極恒弘委員長(中央)と須山雄造副委員長 |
〇工 事 名 | 浜松医療センター新病院整備工事 | |
〇施 工 者 | 清水・須山・中村組特定建設工事共同企業体 | |
〇設計・監理 | 久米・竹下設計等特定共同企業体 | |
〇工 期 | 2020年9月28日~2024年2月22日 | |
〇所 在 地 | 浜松市中央区富塚町328 電話053(453)7111(代)/ FAX053(452)9217 | |
URL https://www.hmedc.or.jp/ |