最近における日本経済は、一部に持ち直しに向けた動きも見られるとの分析もあるが、不安定な政局と相俟って全体として厳しい状況に変わりはなく、むしろ先行き不透明感は増している。
政府の平成22年度当初予算では、政権交代による政策転換により公共事業費は前年度比マイナス18.3%の大幅な削減となり、平成21年度の大型補正予算で一息ついた感があったものの、円高による景気低迷も加わり、建設業界は昨年夏以降一段と厳しい環境に追い込まれている。平成23年度予算案でも公共事業費の減少に歯止めがかからず、前年度比マイナス5.1%となっているのみならず、予算成立が危惧されるなど今後ますます厳しい状況が続くことが予想される。
また、国内の22年度建設投資見通しでも、名目が前年度比6.9%減の39兆2,500億円と40兆円を割り込むとの厳しい見通しをしている。
このような中、当協会で平成22年10月に実施した会員の「業況アンケート調査」結果では、公共・土木の施工高が前年より減少したと答えた会員企業は88.9%(22年1月調査78.8%)、公共・建築にあっても78.6%(同73.9%)が減少、また収益状況では79.1%(同78.1%)が悪化したと答えており、工事量の減少に比例して厳しい経営環境が伺える。
さらに、建設業許可業者数を見ると、平成22年3月末時点で、全国では513,196業者(前年比4,022増)、本県においても16,222業者(同270増)となっており、建設投資額が大幅に減少している中、過剰供給構造は変わりなく、過当競争に一層の拍車がかかってきている状況にある。
また、当協会参加会員数が減少傾向にあり、22年度も11社の退会等により、現在562社となっていることも憂慮すべき事態である。
一方、平成22年度は、宮崎県における口蹄疫、9月の小山町はじめ全国各地に大きな被害をもたらした局地的集中豪雨、そして記録的大雪による人的物的被害、さらには蔓延する鳥インフルエンザなど地域経済に大きな被害を与える様々な事態が発生した。こうした災害を通じて建設業の果たす役割、必要性が少なからず認識されたところであるが、併せて建設業の存在しない災害対応空白地域への対応が問題視されている。
こうした中、静岡県は、建設業協会が長年要望してきた「静岡県建設業審議会」の再開を決定し、本年2月3日に第1回の会合が開かれたところである。審議会には、建設産業界からの代表委員として、伊藤会長、小野副会長が参加し、この秋には「建設産業の活性化を図るための方策」について取りまとめ、知事に答申する予定となっている。経営環境の悪化等厳しい状況に直面している静岡県建設業が進むべき具体的な方向性と支援策が示されることを大いに期待するところである。
また、これまで長年に亘り建設産業の現場を含め労働条件などの改善を推進することを目的に独立行政法人雇用・能力開発機構の助成金制度を最大限に活用し、協会事業を展開してきたところである。しかしながら、国の事業見直しに関連し、改編される予定の当機構の組織や事業活動が未だ明確にされていない。地方中小・中堅建設業者の労働条件の改善や雇用対策は、引き続き実施すべき重要な事業であると考えているので、当機構を継承する組織からの助成を含め、事業収入の確保に努めつつ、厳しい現状を打破し、事業の継続を図っていく。
以上のような現状を踏まえつつ、『技術と経営に優れた企業の集団であるともに地域に密着した建設業協会』を目標として、次の項目を重点事業として実施する。
なお、事業執行に当っては、全国建設業協会が制定した「建設企業(団体)行動憲章」に基づく法令遵守の徹底と企業(団体)の社会的責任(CSR)への対応についても適正かつ厳正に取組む。
1. 会議等
(1) 総会・理事会
(2) 監事会
(3) 正副会長会議
(4) 常任理事会
(5) 全国建設業協会関係会議
(6) 東海4県ブロック会議等
(7) その他の会議
2. 委員会
(1) 総務・広報委員会
(2) 労務委員会
(3) 環境・災害対策委員会
(4) 特別委員会
3. 公益法人移行事務の推進
平成21年度第2回総会(予算総会)において「本協会は、平成25年11月30日までの間に一般社団法人への移行認可申請事務を進める」との承認を得て定款の改正等の作業を進めているが、平成23年度中の認可を目指すよう引き続き公益法人制度改革検討委員会での検討並びに申請書類の作成等を行う。
4. その他
(1) 土木・建築関係
(2) 建設論文事業の実施
高校生等を対象の「第31回建設論文」事業を、今後の人材確保推進事業の一環として昭和会の協力を得ながら実施する。
(3) 関連機関、諸団体との連絡協調、防犯意識の高揚、交通安全意識の推進、しずおか男女共同参画推進、福祉事業等県協会の目的達成のための諸事業への参加等を積極的に実施する。