新々富士川橋の完成イメージ

新々富士川橋の完成イメージ(木島地区から望む)

 (仮称)新々富士川橋整備事業が令和5年度の完成を目指し、工事が順調に進められています。同橋の建設により交通渋滞の緩和や地域交流の活性化が期待でき、地域住民や観光客など多くの方が完成を待ちわびています。そこで、事業を推進する静岡県富士土木事務所の青木直己所長に進捗状況や期待される効果、今後の工事などについて話を伺いました。
(聞き手:静岡県建設業協会総務・広報委員会委員長 佐野茂樹氏、同副委員長 三尾祐一氏)

NPOタクシーの車両

富士土木事務所 青木直己所長

委員 新々富士川橋はどのような経緯で建設することになったのですか

青木 富士市の平野部において、一級河川富士川にかかる一般道路の橋梁は、県道富士由比線富士川橋と国道1号新富士川橋の2橋で、富士川橋では上下線で2万6千台/日(H27センサス)もの交通量があり、通勤時間帯を中心に朝夕で慢性的な交通渋滞が発生しています。特に富士川橋西交差点では調査時に最大1460メートルの渋滞長となっていました。こうした渋滞の解消などを目的に富士川に新しい橋を建設することとなり、平成4年度から調査を開始し、平成11年に基本ルートが決定、平成14年3月に都市計画決定されました。平成14年度に事業化し、地元関係者との調整を重ねながら測量設計を進め、平成27年度から工事に着手しております。

委員 建設する橋梁の特徴と工事の進捗状況を教えてください

青木 橋梁・道路延長は全体で約1400メートルあり、うち橋梁部は741.5メートルです。橋は経済性、構造性、施工性、危機管理、景観性、周辺環境への影響等を考慮し、鋼7径間連続鋼床版箱桁橋を採用しました。下部工はニューマチックケーソン工法によるP3~P6橋脚の施工など、令和2年度までに全て完了しております。上部工については、河川内で箱桁を組み立て、ベントクレーン工法により最大750トン吊りの巨大クレーンを用いて架設しております。令和3年の5月末で東側半分(406.5メートル)の桁の架設が完了しており、現在、残りの西側半分(335メートル)の架設に向けた作業に入っています。事業の進捗率としては令和3年度末で約80%となる予定です。また、同橋につながる都市計画道路五味島岩本線については富士市が施工しており、静岡県と富士市が一体となって令和5年度の完成を目指して事業を進めております。

取材する佐野委員長(右)と三尾副委員長

計画の概要

委員 下部工の掘削深度は橋脚によって異なるようですがどのようにして決めるのですか

青木 日本三大急流河川の一つである富士川に架橋するため、設計する際に、現況の地形を反映した形で橋脚の模型をつくり、想定される水量を通水するとどの様な影響があるのかを確認する実験を行いました。その結果、富士川の流水にできるだけ逆らわないようにするため、橋脚の向きや深度が異なる設計となりました。

下部工工事の流れ

委員 橋の整備により、どのような効果が期待できますか

青木 まず一つが富士川東西の交流促進です。富士川の東西が行き来しやすくなることで富士川スマートインターチェンジを中心とした観光や産業の活性化が期待されます。山梨県との交流促進も期待されております。南部町・身延町と富士・富士宮間の交流は昔から盛んであり、通勤・通学されている方も多くいらっしゃいますので両県民の方にとっても利便性が高まります。また、新橋の整備により現在の富士川橋を通る車の台数が現在の3分の2になると予想されることから、交通渋滞も緩和されます。加えて災害時に自衛隊や消防などの緊急車両や食料を積んだトラックなど多くの車両を受け入れる緊急輸送路となるなど防災面での効果も期待できます。

委員 昨年の11月に橋の名前を公募していましたね。いつごろ決まりそうですか。この他にも現場見学会を頻繁に開催されていますし、PRにも注力されているとお見受けしました。

青木 橋名についでは多数の応募をいただきました。名称検討委員会を経て決定し、今月中には発表できると思います。新々富士川橋はコロナ対策を実施した上で大勢の方に見ていただきたいと考えており、インフラの必要性を知っていただく機会や、また新たな担い手を創出する機会にしてもらいたいと思い、現場見学会を開催する他、研修の場としても提供しております。

富士川の運行の歴史

委員 富士川の渡河はさまざまな歴史があるようですね

青木 はい。富士川の流れは今と昔で大きく変化しており、人々が暮らす街や街道、川を渡る手段も変わっています。歴史上、富士川の名前が登場するのは835年の平安時代です。渡河の場所は当時岩本山の麓から南は氾濫原であったことから、北を通行していたと考えられています。江戸時代には洪水対策として雁堤(かりがねづつみ)が整備され、富士市の平野が氾濫に脅かされない安全で安定した地域になり、渡河する場所は南下しました。上中下のそれぞれの往還に3カ所の渡船場があり、季節によって変わる川の水量に応じて渡船の場所が異なっていたと思われます。明治~平成時代での土木技術の発展により鉄道や新幹線、高速道路が整備され富士川の橋が相次いで架けられました。新々富士川橋はこのような歴史的な背景がある中で、令和で初めて架かる橋となります。この地域に橋が架けられることの意義や土木遺産の素晴らしさを伝えていきたいですね。

委員 地元の建設業界にはどのようなことを期待していますか

インタビューの最後に現場を視察しました

青木 行政と建設業界が連携して地域の方にインフラの必要性や効果を示し、それによって新たな担い手の創出につなげていきたいですね。また、激甚化する災害や社会インフラの老朽化など安全・安心への備えが大切です。その中で地域の守り手としての役割を持つ建設産業がますます重要となっておりますので皆さまのご活躍を大いに期待しております。

委員 ありがとうございました。工事はまだまだ続くようですので、改めて意気込みをお聞かせください

青木 平成の初めから皆さまの期待を受けて事業を進めております。令和5年度の完成を目指し、建設に携わっていただいている建設業の皆さま、地元の皆さまのご理解とご協力をいただきながら、着実に事業を進めてまいります。

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