転車台

 静岡県の西部地域、掛川駅(掛川市)から天竜二俣駅(浜松市天竜区)を経て新所原駅(湖西市)までをつなぐ天竜浜名湖鉄道。単線・ワンマン運転で、昭和の記憶を止めながらのんびりゆったりと走る様子に魅力を感じるファンは少なくありません。しかし、そのレトロ的魅力とは異なる角度で、いま天竜二俣駅周辺がなにやら賑やかさを増しているとのこと。駅に掲げられている「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」のポスターがそのヒントのようですが…。

 「2021年3月に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の中で、天竜二俣駅の転車台や鉄道歴史館の一部が“第3村”の風景の一部として使用されました。2017年に初めて庵野秀明監督やスタッフさんがロケハンに来られて以来、複数回取材をされていたのですが、本当に使用されると知ったのは映画公開日直前でした」(天竜浜名湖鉄道(株)担当:岡山良太氏)

ポスター 使用シーン
見学ツアー
担当:岡山氏

 「映画の該当シーンにはっきり天竜二俣駅と表示されている訳では無いのですが、エンドクレジットに天竜浜名湖鉄道の社名を入れてくださったので。エヴァンゲリオンファンの皆さんが“(映画内に登場する)第3村のモデル地は天竜二俣駅”と気づいてくださり、公開日の翌々日くらいから明らかに人出が増えました。転車台見学ツアーはすぐに平常時の4倍以上の利用者数となり、週末は約200人が見学に集まる事態となりまして、エヴァンゲリオン人気の高さに大変驚きました」

 「すぐに天竜二俣駅構内に『エヴァストア』を設置。1カ月限定ではありますが、キーホルダーや手ぬぐいなどを委託販売の形で提供する対応をしたところ、2日間で完売。ファンの皆さんの熱量に改めて驚かされました。グッズはすぐに再入荷の手配をし、期間限定ショップも再度開設を計画したところです」

 それにしてもなぜ、天竜二俣駅がフィーチャーされたのでしょうか。そこには、天竜浜名湖鉄道が大切にしてきたものが正当に評価された経緯があったようです。

 「天竜二俣駅の駅舎やプラットホーム、転車台や扇形車庫などは、国の登録有形文化財に登録されています。旧国鉄二俣線から数えて80周年を超えていますので当然のように各所が老朽化しているのですが、往時の風景をそのまま残すことを魅力と感じていただけることも多いので、風景や施設の雰囲気を壊すことのないよう、古い建材を流用して劣化した箇所を補強するなど、修繕の仕方にも細心の注意を払っています。

 ロケハンに来ていただいた庵野監督も、幼少の頃から鉄道がお好きだったと聞きました。小さい頃に見た鉄道がある風景の記憶と、天竜二俣駅の風景を重ねていただいたのであれば、大変光栄なことだと思います」

 天竜浜名湖鉄道は、エヴァンゲリオン以外にもアニメ「ゆるキャン△」とのコラボ企画や、キャタラーやスズキなどの企業ラッピング列車を走らせるなど、さまざまな企画に積極的に取り組んでいます。

 「コラボで天竜浜名湖鉄道の知名度も高まるので、お話をいただけることはとてもありがたい。天竜浜名湖鉄道として恩返しになるような展開も考えている。これからもローカル線ならではの宝物と言えるような事柄がまだまだ見つけられるような気がして、毎日が楽しみにあふれています」

天竜二俣駅 ラッピングトレイン
天竜浜名湖鉄道
https://www.tenhama.co.jp