第41回(一社)静岡県建設業協会建設もの創り大賞 受賞作品講評

● 第41回 (一社)静岡県建設業協会建設もの創り大賞
土木部門 講評
審査委員会(土木部門) |
国土交通省中部地方整備局静岡国道事務所 所長 | 椎野 修 |
国土交通省中部地方整備局静岡河川事務所 前所長 | 阿部 聡 |
一般社団法人日本建設機械施工協会施工技術総合研究所 所長 | 真下 英人 |
一般社団法人静岡県土木施工管理技士会 会長 | 中村 嘉宏 |
一般社団法人静岡県建設業協会 協議員 | 望月 克政 |
前静岡県交通基盤部理事(土木技術担当)、 現静岡県交通基盤部長 | 髙梨 記成 |
「静岡県建設業協会建設もの創り大賞」は、地域社会の発展に貢献したと認められる優秀工事の功績を讃え、あわせて協会会員の技術力向上の基礎を築くことを目的とするもので、これまで数多くの工事が表彰されてきました。昭和59年に「静岡県建設業協会賞」として創設され、平成27年度からは一般の方々にも表彰内容が伝わり易くなるよう現在の名称になりました。
今回、応募のあった作品には、施工方法の変更による対応、ICT技術の積極的な活用、業務効率の向上等により、質の高い工事を完成させたものが多く見られました。
全部で13作品の応募があり、地区協会から選任された一次審査員の審査結果と現場担当者の発表を踏まえた審査委員会による厳正な審査の結果、最優秀賞、優秀賞、優良賞、特別賞計7件を選考しました。
建設業は、県民の生活と経済活動の基盤であるインフラ整備の担い手であるとともに、自然災害の最前線で活動する地域の安全・安心の守り手です。こうした社会的使命を果たしていくために、今後も、建設もの創り大賞の取組が当初の目的を達成していくことを祈念するとともに、土木技術の向上のため皆様のご活躍を期待しております。
※画像をクリックすると拡大画像がご覧になれます。

最優秀賞 |
石川建設株式会社(袋井) 令和4年度(国)150号橋梁改築工事(仮称新塩新田橋P1橋脚工) |
磐田市内における国道の慢性的な渋滞解消や騒音・振動等の緩和、沿道に点在する工業団地へのアクセス向上を図る橋脚の築造工事である。
設計成果が現場と合わず施工方法の大幅な変更が求められた中、仮設工法を大幅に変更し、施工ヤードの確保、鋼矢板の施工方法の変更、仮桟橋の作業スペースの確保を行うことで、安全対策を実現した上に、工期の短縮と工費の削減にもつなげ、課題に対する工夫とその効果をはっきりと現れており、他の工事に対しても模範となりうる工事として大いに評価できる。

優秀賞 |
加和太建設株式会社(三島) 令和5年度 狩野川河川整備工事 |
1級河川狩野川の河道掘削工事及び狩野川の支川である1級河川黄瀬川の河床の洗堀防止を目的とした護岸工事である。
デジタルツイン上での現場運営により作業効率を大幅に向上する他、クローラー台車の活用により作業負担の軽減を図るなど、様々な新技術や生産性向上への工夫に積極的にチャレンジしており、3Kの課題について対策を取っていたことが評価できる。
優秀賞 |
須山建設株式会社(浜松) 令和4年度市単独土木施設災害復旧事業緑恵台地区応急対策工事 |
台風の影響により発生した法面の崩落と土砂の流出に伴う二次崩落の防止を目的とした応急対策工事である。
災害復旧のため早急な対応が求められる中、UAV測量による土量の把握や大型土嚢での堤防築造による早期の避難指示区域の解除、解体工事の請負による工期の短縮など現場での工夫等を凝らしながらの対応が大いに評価できる。

優良賞 |
臼幸産業株式会社(沼津) 令和2年度 町道2416号線他1路線橋梁整備工事 |
高速道路のスマートインターチェンジ周辺での複合観光施設開発計画に合わせ地域活性化を担う事業として行う主要幹線道路に接続する町道整備工事である。
他業者との作業動線の混在や施工箇所の高低差などの厳しい施工条件、他で発生した落橋事故等を受け、施工方法や仮設計画の見直しを行い、安全性や施工効率の向上を図ったことが評価できる。
優良賞 |
鈴与建設株式会社(清水) 令和3年度 二級河川巴川(麻機遊水地)総合治水対策工事(加藤島-豊地エリア連通管工) |
二級河川巴川流域での森林や田畑の減少などの都市化による洪水発生リスク増大に伴う治水事業の一環として実施する麻機遊水地の豊地エリアと加藤島エリアを連通させるために函渠を施工する工事である。
仮設の設計が現地条件に対応していない、施工時間及び空間に制限があるという条件の中で、覆工板の設置による作業の効率化、上部障害クリア工法による架空線対応、擦り付け舗装の施工などの工夫が成されていた。
優良賞 |
大河原建設株式会社(島田) 令和3年度[第33-D7337-01号](主)島田吉田線橋梁耐震対策工事(島田大橋耐震補強工) |
県道の島田大橋における、P2、P3橋脚の耐震補強工事であり、橋脚の鋼鈑巻立て補強と、大井川河川内仮設(橋脚部の水位低下作業含む)を行う工事である。
施工期間の制約や施工条件の厳しい河川内での施工である中、施工範囲や工法の変更により施工日数の短縮を実現した。また、3次元点群データを有効に活用し、作業効率と施工精度を高めた点も評価できる。

特別賞 |
土屋建設株式会社(三島) 令和5年度 狩野川水系流木整備工事 |
一級河川狩野川水系における、土石流および土砂とともに流出する流木等による土砂災害の防止を目的とした整備工事である。
3地区に工区が分かれている点在工事となっており、業務時間や移動時間の短縮といった課題を解決にする必要があった中、社内で現場の施工管理資料の一部を担う建設ディレクターを専門部署として設け、現場の労働時間を短縮した。建設業界における働き方改革の推進として労働時間の短縮を進めることが求められている中で、社内において仕組み作りが成されている点は他企業の模範になりうるとして、特別賞を授与することとした。
「土木部門 その他の応募作品」
土屋建設株式会社(三島) 令和4年度 大場川塚本護岸復旧工事 |
 |
山本建設株式会社(三島) 令和4年度 沼津河川国道橋梁補修工事(橋梁補修) |
 |
株式会社中村組(浜松) 令和4年度道路維持修繕国交付金事業(防災・安全交)(主)浜松環状線舗装修繕工事(坪井工区) |
 |
● 第41回(一社)静岡県建設業協会建設もの創り大賞
建築部門 講評
審査委員名 |
前国土交通省中部地方整備局静岡営繕事務所長 | 亀井 隆 |
前静岡県交通基盤部建築管理局長 | 勝又 宏幸 |
(一社)静岡県建設業協会副会長 | 河津 市元 |
(一社)静岡県建設業協会理事 | 加藤 修一 |
(一社)静岡県建設業協会協議員 | 杉浦 政紀 |
(一社)静岡県建築士事務所協会相談役 | 井上 泉 |
第41回の建築部門は県下10件の作品を応募いただき、誠にありがとうございました。
建設業界が今まさに直面している課題は、ベテラン技術者の引退や若手人材不足、多様な人材を受け入れるための労働環境の整備など多岐にわたっています。
これらの課題の解決には、ICTやデジタルツールの導入による生産性向上、若手・女性・外国人を含めた幅広い人材の育成が重要です。
特に、デジタル技術を最大限に活用した業務効率化を実現するために、建設DXの段階的な推進が業界全体の競争力を高める鍵となります。
現地でお話を伺う中でも、実際の現場ではすでに導入しながら、様々な試行錯誤をされていることを伺い知ることが出来ます。
そんな大変貴重な時間の中で、毎年果敢にエントリーされるいわゆる常連となる皆様には、本賞の趣旨を十分にご理解いただき、会社を挙げて現場の活性化を促す機会に活用されている姿勢に改めて感服いたします。
毎日の業務に追われる中で現場担当者が工事内容を振り返り、創意工夫した点を第三者に伝える為に作成する応募書類に費やす手間や労力を考えると、積極的に現場サイドから手を挙げるには更なる会社からの『価値観の共有』に対する働きかけに期待するものであります。
自分達の取り組んだ努力が評価され認められ、働き甲斐に繋がる一助に本賞を大いに利用していただければ幸甚であります。
地区協会選出の委員による一次審査、その後に審査委員会による書類審査を厳正にさせていただき、結果7作品を現地審査対象とし、令和7年2月12日・2月18日の両日に其々の現場担当者や、ご使用される施主とお会いしながら、各50分という短い時間の中ではありましたが、竣工された建物を拝見しながら丁寧なご説明をいただきました。
訪問先では業務をしながらのお忙しい中で、審査にご協力いただき感謝申し上げます。
審査の結果、下記の作品を選出し、賞を授与することとしました。
※画像をクリックすると拡大画像がご覧になれます。

最優秀賞 |
中村組・塚本特定建設工事共同企業体(浜松) 令和5年度 月見の里学遊館うさぎホール天井等改修工事(建築) |
本工事は天井の耐震補強工事を目的に行われたものであるが、利用施設が音楽会や演劇を開催するための物であるため、客席天井は音響効果が考慮された舞台装置、照明装置があり、全てを撤去して一から工事をすることは出来ない特殊な物であった。
天井内の新たな鉄骨補強材を現場で取り付けるために、躯体鉄骨への荷重負荷が掛からないように構造計算チェックをしながら行い、張り巡らされた舞台装置のワイヤーを搔い潜りながらの工事であった。
元通りに工事できて当たり前ではあるが、結果表面に出ない部分の努力は計り知れなかっただろうと推測できる。さらに音響効果が測定結果として向上した話を伺うと、自分事のように喜びを感じた。
まさにチームワークが光る良い仕事ができた現場と評価した。

優秀賞(A部門) |
木内・角丸・山田特定建設工事共同企業体(静岡) 藤枝総合運動公園サッカー場バックスタンド改修その他工事 |
傾斜地に観客席や特殊な屋根を新設しており、施工難易度が高いと評価できる。
サッカーの試合をしながらの工事期間であり、物流や騒音・振動の制約があったことを容易に理解できる。
特筆すべきは、屋根鉄骨が4本の方杖毎ユニット化(地組)をし、大型クレーンで施工するなど作業効率化と精度確保を両立する工夫といえる。
優秀賞(A部門) |
石川建設株式会社(袋井) 磐田商工会議所会館新築工事 |
歩行者の多い歩道や旧会館への第三者通路が工事エリアに近接する、安全な仮設計画が重要な現場となる。
このような狭小敷地での工程計画、仮設計画、搬出入・揚重計画が評価できる。
6Mのはね出し部を仮柱を設けて施工された工夫も素晴らしい。

優良賞(A部門) |
平井工業株式会社(静岡) 福田西病院増築工事 |
揚重計画から薄肉ラーメン構造の計画見直しを提案し、機能性やデザイン性を担保している。
丁寧な施工で設計コンセプトを上手く表現している。
優良賞(A部門) |
大河原建設・小桜特定建設工事共同企業体(島田) 令和4年度 島田第一小学校校舎等改築工事(建築工事) |
道路が狭い状況で通学路と工事車両動線の区別化や、安全誘導の徹底で工事期間中の子供の安全確保を最優先事項として捉えている。
コンクリート、特殊型枠検討会を重ねて施工品質の向上に工事関係者全員で取り組んでいることが評価できる。
優良賞(A部門) |
須山建設株式会社(浜松) ブライトタウン松城新築工事 |
高層マンションで繰り返しの作業を効率的に行い、工期の短縮に繋げている。仕上げ材において、多くのオプションを間違いなく施工するとともに、将来のメンテナンスも考慮して、独自のBIMを作成し、QRコード活用を進めるなど、ICT技術を導入しているところが評価できる。

優良賞(B部門) |
臼幸産業株式会社(沼津) S様邸新築工事 |
想定外の埋設物撤去に係った期間を、目隠し塀同時施工やユニット鉄筋の採用等の工夫により契約工期内に完成させている。
丁寧な施工により、精度よく出来映えの良好さも評価できる。
「建築部門 その他の応募作品」
山本建設株式会社(三島) 令和5年度 認定こども園整備事業(仮称)長岡こども園整備工事 |
 |
●審査を終えて
第41回“建設もの造り大賞(建築部門)”の審査が無事に終了し、まずはホッと安堵しております。受賞された皆様は誠におめでとうございます。
其々の現場でのご苦労や、良いものを創りだす為の膨大な検討時間を知ると、安易に甲乙付け難いものであることがわかり、その結果が素晴らしい仕事として施主(発注者)に満足して頂けていることを改めて審査させて頂き認識をしました。
今後とも知恵と技術の結集した現場で、素晴らしい建築物を誕生されることを期待しております。
●審査風景